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パラサイト

リハーサル2

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「どういう事ですか?私はこの段取り聞いてなくて…。」
秋吉は驚いて長山に聞いた。
音無とは、秋吉が主役のアニメ『シルク』の作者、音無 不比等の事だ。
長山の話によると、緊急参戦してきたらしい。

音無は、主にWeb小説で活躍中だが、彼のホラーはネットでも都市伝説化するほどなんだそうだ。

秋吉の声がひきつりながら、そんな事を叫んでいる。
仕方がない。秋吉は、『シルク』の声優のオーディションで、作者である音無に、随分と酷いイタズラをされたようで、いまだに苦手意識が消えないようだ。

そんな秋吉の事が気にかかってモニターに近づいた。
「すいません、急な申し出だったので、連絡が遅くなりまして。
でも、音無先生は、ネットで国内外で人気がありますから、番宣にはもってこいですよ。」
長山が、秋吉の気持ちを上げるように抑揚を上げて話す。
「ば…番宣ですか。」
番組宣伝の言葉に、秋吉が折れる。
「そうです、途中、『シルク』の動画が10秒流れます。秋吉さんのコメントも1分いれますから。」
と、長山が秋吉を畳み込む。

秋吉が落ち着くのを確認してから、私は作業に戻る。
雅苗の残した資料を調べ、整理をし、そして、スカラベのミイラを探さなければいけないのだ。


私が、彼女の…
若葉わかば雅苗かなえの立場ならどうするだろう?

私は、想像するのが難しい事柄を前にして、少し強めのコーヒーを口にする。
週刊紙を信用するなら、雅苗は、失踪前に溶生に浮気をされて、関係も冷えきっていたらしい。
恋をしなかった分けではないが、相手に浮気をされたり、好き勝手をされてまで、その人物に執着する性格ではない私は彼女の思考を他のモデルで想像するしかない。

何年でも、その事の為に頑張れると言うなら、私の場合、研究だ。

好きな課題の研究のためなら、
入れ込んだら、きっと、金とか、時間とか、みんなつぎ込むかもしれない…。
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