上 下
33 / 208
パラサイト

ボディーアーマー

しおりを挟む
  絹……蚕の繭から作られる光沢のある繊維である。
  かつては、その美しさに人は魅了され金と同等の価値をもつとされた。

  絹製造技術は、中国を発祥としている。
  チンギスハーンが率いるモンゴル兵は、戦着に絹を用い、その身を守ったと伝え聞いた事がある。

  絹は、昔から装飾品としてだけではなく、ボディーアーマーとしての役割も果たしてきたのだ。
  
  銃の登場で一時、その場を鋼の鎧に明け渡したが、19世紀、ギャングなどの街中での銃撃の犠牲が増えると、新たな試みがなされる。
  1898年シカゴの聖職者セグレンによって発明された防弾チョッキに絹が使用される。

  ここからは、武器の発達と共に、防弾具も進化を遂げて行くが、高価な絹は、第二次世界大戦から、安価で丈夫なナイロンなどの化学繊維にとって変わられ現代に至る。

  第一次世界大戦終戦後の1920年~30年代は、そんな試行錯誤の時代だったのかもしれない。

  絹を使うような高価な防弾具は、一般兵士に行き渡るはずもなく、新たな試行錯誤が繰り返されたのは想像できる。

  この頃、アメリカでは、木綿を使った安価な防弾チョッキが使われるようになる。
  強度が落ちても、当時、街中でのギャングなどの銃撃戦では、命を守るには役に立ったからだ。

  20世紀初頭には、日本は生糸の生産、世界一と呼べるほどになる。
  当時の外貨の稼ぎ頭だった絹に続く何かを作ろうとしていたとしても不思議ではないと、私は、秋吉の話を興味深く拝聴していた。

  「新たな繊維の研究のために、軍は世界中の生物の調査を行います。
  第一次大戦後占領地となったマリアナ諸島などの太平洋の熱帯地方等からも昆虫などの採取、研究をはじめるわけです。」
秋吉はそこで一度言葉を区切った。

  随分と難しい内容の番組だな…

  私は、ネットの番組と聞いて、もっと、バラエティ感のあるものを想像していたので驚いた。
しおりを挟む

処理中です...