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しおりを挟む面倒くさい展開になってきたわ。
私は頭を抱える。
不安定に完結した話の多岐に渡る謎の解説。
今回は『トミノの地獄編』で、『切り裂きジャック編』ではない。
これに手をつけると…もう、終われない気がする。
「どうしたんです?押し黙っちゃって…」
本の妖精が話しかけてくる。
「いま、運命の分かれ道に立ってるのよ。」
私はウンザリしながら言った。
ああ、これは3万字程度の短編で、今ごろ続編を書いている予定だったのに…「運命の分岐点ですか、ロマンチックですね。」
妖精の笑い顔を見て、渋い顔になる。
「ロマンチックじゃないわよ…」
そう、ロマンなんて無い。長いみかんの沼なんて。
「まあまあ、ワインでもいかがですか?」
本の妖精は笑う。
「いらないわ。それより、何とかしないと。」
私はため息をつく。停滞は悪手だ。何にしても更新しなければ…みかんはエターナルになってしまう。
「そうですね。で、運命の分岐をどちらに進むんでしょう?」
本の妖精は笑う。
「進むなら、八十ミステリーの最短コース。でも、ここに来て、他の問題が絡んできたから、難しくなってきたわ。」
そう、『パラサイト』には沢山の未回収の謎をおいている。
Y氏の本の精霊は、書き直す前の聖徳太子のミステリーに関わるし、
切り裂きジャックを掘り返せば、止めている『魔法の呪文』の謎に…マイヤーリンク事件を引き込んでしまう。
気を付けないと、別ダンジョンに飛ばされちゃうのだ。
「まあ、仕方ありませんよ。何しろ、一人の頭で考えた事。どこかで繋がるのは必然ですぜ。」
妖精は気楽でいい。
ため息が出てくる。
「だとしても…完結をしたいのよ。一つづつ。
ここで、ルドルフ ヘスを…ヒトラーを引っ張り出したら、長くなりそうな気がするの。」
私はぼやいた。
本来なら、『魔法の呪文』は鉄板のラブコメだった。
結末は知れている。
幼馴染みの2人が結ばれるハッピーエンド。
なのに…オーストリアがぁ…大変な事になってるんだから(T-T)
ここで、ヒトラーの出生がオーストリアだと言う事実、1889年に誕生している事がチラチラと引っ掛かるのだ。
1888年から、1889年にかけて、オーストリアの王家では不幸が続く。
しかも、小説張りの不可解な不幸が。
確かに、小説家には盛り放題な時代ではある。
オカルトあり、陰謀ありの時代なんだから。
そして、それは、その100年年後にもかかってくるのだ。
1889年…ヒトラーがこの世に生まれる少し前、映画にもなった事件がおこる。
ルドルフ皇太子が年の離れた男爵令嬢と亡くなっているのが発見されたのだ。 いわゆる『マイヤーリンク事件』である。
この話は、90年以上過ぎたある日、再び脚光を浴びるのだ。
1983年亡命中のオーストリア皇妃ツィタがルドルフ皇太子の暗殺の可能性について証言したからだ。
その4年後の1987年、ルドルフ ヘスが自殺をする。
ヒトラーの生誕100年を3年後に控えた8月の事だった。
それは、他の人には全く、関係の無い事件だ。
が、怪しげな話を増産する私には、この二つの事件は大いに物語の行く末に引っ掛かってくるのだ。
しかも、2つのみかんに(T-T)
「面倒くさいんだよ~未完は金にならないから嫌なんだよ~
金どころか、書籍化の空想すら許されないんだもん。さわりたくないのよ。
ついでに、八十のミステリーに関係しないし。」
私は叫んだ。
本当に…なんか、いい感じで終わりたい。
と、悶絶する私の横で、妖精は何やら資料を調べ、楽しそうに私に渡した。
「いやいや、姐さん、関係あるじゃないですか。」
と、渡されたのは、私の古い記事だった。
それは、ヒトラーとヘスの話で…
平成の終わりを記念して書かれたものだった。
「これが…どうしたのよ。」
私の問いに、妖精は楽しそうに日付を指差した。
「この辺りから、始めたらどうですかね?」
妖精の指の先には
2019年4月の文字があった。
『トミノの地獄』の、西条八十100年周年の年で、ネットでも細々と取り上げられていた。
あの年…
私はただ、小説で小銭を稼ぐことだけ考えていた。
名古屋のワンコインでお得なモーニングを一食分。
500円。ただ、それだけのために小説を考えていた。
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