上 下
131 / 154
1922

4

しおりを挟む
  ムッソリーニひきいるファシスト党にソ連の新たな書記長スターリン。
  暴動の絶えない不安定なドイツ帝国には、ムッソリーニを兄貴とばかりに尊敬し、胎動を始めるヒトラー。
  そして、ムッソリーニこそ、その後のイタリアをバチカンを戦禍(せんか)へ誘う男。
  ピオ11世。結構、大変なときに法王に選ばれてしまったものである。


  「でもさぁ、ローマ法王って、終身職でさ、頑張って高齢(とし)をとってからのご褒美みたいな仕事だと思ってたのに…」
私は、20世紀のローマ法王のドラマチックな背景に深いため息が出た。
「そうでしょ?法王になれば『天国の鍵を』手に出来るのだから。」
ベルフェゴールは、ホホッと優雅に笑い、私はここで、彼女の髪型が変わったことに気がついた。
「か、髪型変えた?」
私は美しい銀髪の頭頂部モリモリのポンパドールヘアーに結ったベルフェゴールの髪をため息をついて見た。
「ええ。ロココの香りが致しますでしょ?」
ベルフェゴールは、軽く扇を閉めて口元だけを隠して頬を赤く染める。

  可愛いけど…あざといなぁ…

  私は数秒、みとれてため息と共に気持ちを切り替えた。

  「うん、素敵。でも、話を戻すわ。」
私はもう一度、ため息をついて、ファティマの聖母に大変になると予言された法王に就任したピオ11世を思い出した。

  1922年アキッレ・ラッティという名から、法王としてピオ11世を名乗ることになる人物に思いを馳せる。

  私には、それはファティマの予言の始まりの分岐に見えた。
  が、ピオ11世には、それは終わりの分岐に思えたかもしれない。

  バチカンの歴史は9世紀に遡る。
  北からやって来たフランク人の王カールをローマ皇帝と認めた800年12月のクリスマスの日から。

  彼は蟹座の超新星爆発のように人類史上類のない功績を残した。
  ヨーロッパの統一である。
  それに伴い、時の法王レオ3世はカールをローマ皇帝と認めることになる。
  それは、混乱するヨーロッパの状況下でカールから武力的な庇護を受ける事でもあった。

  ヨーロッパは統一を果たそうとしていたが、ローマ帝国は東と西に分かれ、この出来事は、ヨーロッパのキリスト教徒をも、大枠で二つに分裂させることになる。
  西は、武器を持ち共に戦う僧、カトリックに
  東は、戦いは専門職に任せ、積極的に戦わない僧、東方教会に。

  それから、20世紀のピオ11世の時代まで、聖ぺトロの眠る、この土地はローマ法王の宮殿であり、聖地として受け継がれてきたのだ。

  それから1000年と200年時の法王が繋いできた神の帝国は、この新しい法王と共に窮地にあった。

  イタリア国王とは絶縁状態。
  神を否定する共産主義の台頭(たいとう)。
  新政権のファシズムとムッソリーニ。

  聖母の予言がなくても…
  緊迫した状態なのである。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

孤独な戦い(1)

Phlogiston
BL
おしっこを我慢する遊びに耽る少年のお話。

おかえり、さっちゃん。

柚木崎 史乃
ホラー
中学二年生の春。僕は、小日向幸という女子生徒と仲良くなった。 彼女はいじめられっ子で、毎日のようにクラスメイトたちから虐げられていた。 そんなある日、どういうわけか幸をいじめていた生徒たちの私物が度々盗まれるようになる。 やがて、生徒たち自身にも次々と災難が降りかかるようになり、「あのクラスは呪われている」と噂が立つようになるが──。

意味が分かると怖い話 完全オリジナル

何者
ホラー
解けるかなこの謎ミステリーホラー

叫ぶ家と憂鬱な殺人鬼(旧Ver

Tempp
ホラー
大学1年の春休み、公理智樹から『呪いの家に付き合ってほしい』というLIMEを受け取る。公理智樹は強引だ。下手に断ると無理やり呪いの家に放りこまれるかもしれない。それを避ける妥協策として、家の前まで見に行くという約束をした。それが運の悪い俺の運の尽き。 案の定俺は家に呪われ、家にかけられた呪いを解かなければならなくなる。 ●概要● これは呪いの家から脱出するために、都合4つの事件の過去を渡るホラーミステリーです。認識差異をベースにした構成なので多分に概念的なものを含みます。 文意不明のところがあれば修正しますので、ぜひ教えてください。 ●改稿中 見出しにサブ見出しがついたものは公開後に改稿をしたものです。 2日で1〜3話程度更新。 もともと32万字完結を22万字くらいに減らしたい予定。 R15はGの方です。人が死ぬので。エロ要素は基本的にありません。 定期的にホラーカテゴリとミステリカテゴリを行ったり来たりしてみようかと思ったけど、エントリの時点で固定されたみたい。

MLG 嘘と進化のゲーム

なべのすけ
ホラー
退屈な日常を送っていた彰は街で拾った、ミッシング・リンク・ゲームと呼ばれる、デスゲームに参加することになってしまう。その中で一人の少女と子供と出会う。ゲームを進ませていく中で、出会いと別れ。嘘と進化。どれが正しく、何が嘘なのか?予測不可能なデスゲームが今、ここで始まる。 ミッシング・リンク・ゲーム、MLG、嘘とだまし合いの果てに待っていたものは? 自由か?栄光か?大金か?進化か?

陽炎のような、恋をした

真弓りの
ホラー
初めて彼を見かけたのは、真昼の交差点。 事故にあったのか、血塗れで、虚ろな目をしたバリバリの地縛霊だった。 下手に同情して、厄介なことにはなりたくないと、気づかないふりをして、足早に通り過ぎた。 でも、彼がそこにいる理由を理解した時。 私は、彼に恋をした。 どうしたって報われることはない、悲しい恋を。 …………………………………………………… とても短いお話です。 報われない恋をする女の子の切なさが書けるといいんですが。 恋愛なのかホラーなのか、カテゴリーがどれなのかすごく迷いました…

こわくて、怖くて、ごめんなさい話

くぼう無学
ホラー
怖い話を読んで、涼しい夜をお過ごしになってはいかがでしょう。 本当にあった怖い話、背筋の凍るゾッとした話などを中心に、 幾つかご紹介していきたいと思います。

その少女、闇に魅入られて

栗須帳(くりす・とばり)
ホラー
交通事故で両親を亡くした奈津子は、過疎化の進む小さな村で新しい生活を始めた。 家族の温もり、優しい友達。彼女がずっと望んでいたものがそこにはあった。 新生活に胸躍らせる奈津子。そんな彼女をあざ笑うかのように「それ」は忍び寄ってきた。 決して逃れることの出来ない災厄に、奈津子はなす術もなく怯えるのだった。 全69話。

処理中です...