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  「冗談はさておき、失神した法王は誰なんだろうね。」
私はため息をつく。
「ヨハネ23世ではないのよね。」
ベルフェゴールは、wikipediaの情報を思い出す。
「確かに、wikipediaに書いてあったわよね(-_-;)でも、今、見に行ったらなかったわ…」
私の幻覚か、それとも改変されたのか…

  それはともかく、他の資料を漁ると、失神した…とされた法王が増える。
  ヨハネ23世と言うものもあれば、その次の法王と言ったもの。そして、ヨハネ23世の前の法王。
  つまり、噂であり、正確な情報ではなかった可能性がある。
「それがどうしたの?」
ベルフェゴールは、不思議そうに聞いてくる。
「物語なら、印象が随分と変わるわよ…」

  そう、変わるのだ。
  考えれば、前の法王は1958年に亡くなるのだ。脳の発作で。
  ファティマの聖母の警告通り、第一次世界大戦よりももっと酷い…第二次世界大戦の予感と共に就任された。

  アドルフヒトラーが台頭する時期とそれは重なり、終戦後は様々な批判を浴びる事になる。
  
  そんな人が…偶然に、聖母の予言が始まる前に法王を離任する。
  高齢の病死で。

  随分と出来すぎた話ではないか。
  58年と言うのも心憎い。
  60年を前に、かつての奇跡の少女から、新法王が聖母のメッセージを手にするのだ。
  その時の気持ちを…私には想像は出来ないが、終戦後の混乱の中で、その手紙を手にする法王の気持ちは…尋常ではないのだろう。
  大概、この手の再現ドラマでは、手紙を読み進めて驚愕、と、言う演出になりがちだが、
  オカルト風味にするなら、封筒の蝋(ろう)の封を触った瞬間に戦慄を感じる…そんな風に作るに違いない。
  
  気配…それを感じるところから全てが始まる。
  タロットカードを開く瞬間のように、何か、未来のヴィジョンが見えるような…
  そして、封を開ける前に気絶したら…
  印象は随分と変わる。

  ヨハネ23世には、読んで失神した後で封をして閉まった。と、言うバージョンと、読まずにしまうバージョンの噂があった。

  どちらにしても、ヨハネ23世が、一番、封印する動機がある。
  何しろ、史上初のクリスチャンのアメリカ大統領の誕生に関わる内容だった可能性があるのだから。

  その前のピオ12世の場合は事情が違う。
  第二次世界大戦と、ファティマの聖母に指摘された法王と言う立場だからだ。  しかも、脳の病気を患(わずら)っていたなら、幻覚や失神が、いい感じのタイミングでおこってもおかしくはなからだ。
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