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  ベルフェゴールは、楽しそうに笑い、メフィストは澄まし顔で給仕係に徹している。

  私は、この2人の関係が気になってくる。

  「ねえ、メフィスト…あなたはどう思う?」
私はダウニーのおこしたハイジャック事件の感想を聞いてみる。
  いつもなら、メフィストは呼ばれた途端に、反応するのに、軽い会釈でベルフェゴールに視線を向けるだけだ。

  なんだろう?この上下関係の強さ…
  確かに、ベルフェゴールは、7つの大罪の人柱…悪魔(デビ)セブン。
  対して、メフィストは16世紀辺りから芝居や小説などから自然発生した悪魔で、小説『ファウスト』ではベルゼブルの使い魔として登場していた。と、記憶している。

  「ベルフェゴールぅ~何とかしてよ。」
私がベルフェゴールを睨むと、彼女は肩をすくませる。
「使用人と話をするなんて、淑女のすることじゃ、ありませんわよ。」
「淑女じゃないし。」
熟女だけど…とは、オヤジギャクみたいなのでギリ、言わなかった。
「でも、熟女なんだから、その辺は考えるべきよ。」
「はい…そうですね。」
まさか、ベルフェゴールに言われるとは!と、思いつつ、ここは負けておく。



  「じゃあ、ダウニーのハイジャックの話をするけどさ、これ、やっぱりおかしいよね(-_-;)」
私の台詞にベルフェゴールは思い出し笑いでゲラゲラ笑う。

  全く、何がおかしいのか…ただ、『マリアさまの悔い改める為の予言を公開させるためにハイジャックをするようには言わないよね?』と、聞いただけじゃない。

  それにしても、この話は良くわからない。
  ファティマに現れた聖母は、地獄に落ちる前に悔い改めよ、と、少し、説教臭いアドバイスをしていった。
  それをバチカンが隠したからって…ハイジャックをするのは、人として…キリスト教徒としてどうなんだろう?
  
  「何もおかしくないでしょ?もう。私もさ、適当に人類滅亡の話でまとめようと思ったのに…考えると、やっぱり変だよね?
  ハイジャックに使った爆弾…中東のテロリストが使うタイプなんだって…中東のテロリストのクリスチャンじゃないよね?
  異教徒のテロリストの兵器で法王様を脅迫とか…正義の味方のすることじゃないよね…」
私はため息をついた。

  底辺とは言え、web作家生活も5年である。
  評価は貰えなくても、少しは進化もしてるんだ。

  作家として話を作るとする。物語のつかみの部分、ダウニーのハイジャックのエピソードは、強烈に読者に印象付けをする。

  ハイジャックは悪いことだ。が、犯人には止むに止まれぬ真相を隠している。  
  それは、人類の命運をかけた真相だった…

  と、続ける。

  この時、捕まった犯人は、読者に向かって意外な人物でなくてはいけない。
  今までの…冷戦やテロリストとは違う、ビックリするほどの純粋さ…神を見るに相応しいと読者に思わせなくては、読書放棄(ブラバ)されちゃう。か、感想欄でバカにされちゃう。
  か、全く相手にされず、PVすらない…

  痛いわ…

  説明を終えて、ガッカリする私にベルフェゴールは笑い疲れた感じのかすれた笑いを扇で隠しながら、こう言った。

  「かわいいわぁ…本当におぼこい。」

  おぼこい…幼くて可愛らしい…と言う意味。元は関西の方言らしいけど、漫画とかで敵対キャラを煽るときにも使われていて、ラノベ系のベルフェゴールはそっちから学習したと思われる。
「おぼこい…ね。ふっ…一応、誉め言葉ととっておくわ。」
私は、諦めムードで言った。
  が、悪魔や読者がせせら笑うくらいの正論が言えるのは、ラノベ作家を目指すなら必要なスキルなので、マジ、嬉しい。

  とにかく、金になる文章は、喜怒哀楽に響かないといけない。
  無関心(スルー)が一番痛いのだ。
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