上 下
68 / 154
悪霊

29

しおりを挟む
  「つまり、克也説をまとめると、江戸川乱歩は、リンドバーグの事件と福来博士の念写実験をベースに『悪霊』を考えた。
  が、アガサ・クリスティが同じ年に『オリエント急行殺人事件』を執筆。パクリ疑惑を避けるためにエンディングを変えようとして失敗し、未完になった。
  と、言うこと?」
説明しながら、混乱する。
  リンドバーグ愛児誘拐事件をベースは理解できるが、福来先生が上手く噛み合わない。
  大体、殺され方が『オリエント急行殺人事件』に似ていたなら、『悪霊』の殺される時点で言われるに違いない。
  
  私は、ネットで噂される数々のパクリ検証を思い出す。
  素人が書いているネット小説では、盗作を疑われる事が良くある。
  それが、故意なのか、うっかりなのかは別として、これらについて、討論している読者はいる。
  私も、書いていて、後から、似ている作品を見つけてぎょっとなったりした事がある。

  それは、ノストラダムスなんかを書くとなると、一斉に同じテンプレで昭和、平成とテレビから小説まで書いていたんだから、オリジナルにするのは難しい。
  ノストラダムスの母方のじいさんは、カバラの秘術を孫に伝授するのがテンプレだった。
  が、ネットが発達した平成の終わりに、そんな話を書こうとして、じいさんが亡くなっていたらしい事を知って、頭を抱えた。

  そう、いろんな問題で、完結できなかったり、終わりを変える話は、私クラスの作家にだっておこるのだ。被害者の殺され方が少し似ているくらいで文句は言ってこないんじゃないだろうか…と、したら…

  ふと、エンディングも似てしまった可能性を考えた。
  『オリエント急行殺人事件』の犯人は…
  あのエンディングを『悪霊』に重ねる事が出来るだろうか…

  「違うね。江戸川乱歩は、そんな小さな人間じゃ無いよ。本格ミステリ?今までのショボい犯人なんて、10年目の凱旋作品に書くわけはないんだよ。」

克也がなんか、乱歩を持ち上げてきたΣ( ̄□ ̄)!

「え…どうゆうことよ…まさか、アンタ、Xについて、解を既に導いたとでもいうの?」
私は、少しからかうように中2病風味に合いの手をいれた。
  克也は、私の予想を颯爽と外し、その言葉を歌劇団のトップスターのように受け取った。

  「勿論だよ。ここまで説明して、Xの解が分からない奴がおかしいよ。」

  はあっ?

  私は、混乱と怒りの入り交じった顔で山臥を見た。
  目が合った山臥は、ビールジョッキ越しにウインクを返してきた(○_○)!!

  駄目だ、コイツは話を聞いてない!

  「ごめん。私、おかしいから解の答えが分からないよ。」

  私は敗けを認め、そして、奴からノートとペンを奪うと、克也に解説を頼んだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…

ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。 しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。 気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…

正体不明

ベアりんぐ
ホラー
 ある県の、ある市の、あるコンビニの夜勤に勤めている大学生"石子徹"の感じた違和感から始まる物語。  あなたのそばにも。 014

動画配信者が消えた

佐倉海斗
ホラー
『心霊スポット巡り 特別編』として投稿された動画を最後に行方知らずになった動画配信者がいる。生放送と謳った動画につけられたコメントに対する返信はなく、続報もない。彼らの行方を知る者もなく、SNS上で拡散された噂話や根拠のない推測が話題を呼び、動画視聴率は駆け上がっていく。 彼らの身に何が起きたのか。 すべては動画の中に残されている。 ※小説家になろうで掲載している短編を元に書いています。

意味が分かると怖い話 完全オリジナル

何者
ホラー
解けるかなこの謎ミステリーホラー

その少女、闇に魅入られて

栗須帳(くりす・とばり)
ホラー
交通事故で両親を亡くした奈津子は、過疎化の進む小さな村で新しい生活を始めた。 家族の温もり、優しい友達。彼女がずっと望んでいたものがそこにはあった。 新生活に胸躍らせる奈津子。そんな彼女をあざ笑うかのように「それ」は忍び寄ってきた。 決して逃れることの出来ない災厄に、奈津子はなす術もなく怯えるのだった。 全69話。

【毎月1本更新予定】2024年版 ルノルマン・カードに導かれし物語たちよ!

なずみ智子
ホラー
ご覧いただき、ありがとうございます。 7年目に突入いたしました! 2024年も完結を目標に頑張ります! 本作は毎月1回、36枚のルノルマン・カードより5枚のカードを引き、その5枚のカードが持つ意味やカード湧き上がってくるインスピレーションを元に、私、なずみ智子が変な短編を書く企画でございます。 ちなみに過去作は、以下となります。 『2018年版 ルノルマン・カードに導かれし物語たちよ!』 ⇒https://www.alphapolis.co.jp/novel/599153088/403188672 『2019年版 ルノルマン・カードに導かれし物語たちよ!』 ⇒https://www.alphapolis.co.jp/novel/599153088/168236130 『2020年版 ルノルマン・カードに導かれし物語たちよ!』 ⇒https://www.alphapolis.co.jp/novel/599153088/422338592 『2021年版 ルノルマン・カードに導かれし物語たちよ!』 ⇒https://www.alphapolis.co.jp/novel/599153088/134454376 『【毎月1本更新予定】2022年版 ルノルマン・カードに導かれし物語たちよ!』 ⇒https://www.alphapolis.co.jp/novel/599153088/869593801 『【毎月1本更新予定】2023年版 ルノルマン・カードに導かれし物語たちよ!』 ⇒https://www.alphapolis.co.jp/novel/599153088/303717920

陽炎のような、恋をした

真弓りの
ホラー
初めて彼を見かけたのは、真昼の交差点。 事故にあったのか、血塗れで、虚ろな目をしたバリバリの地縛霊だった。 下手に同情して、厄介なことにはなりたくないと、気づかないふりをして、足早に通り過ぎた。 でも、彼がそこにいる理由を理解した時。 私は、彼に恋をした。 どうしたって報われることはない、悲しい恋を。 …………………………………………………… とても短いお話です。 報われない恋をする女の子の切なさが書けるといいんですが。 恋愛なのかホラーなのか、カテゴリーがどれなのかすごく迷いました…

叫ぶ家と憂鬱な殺人鬼(旧Ver

Tempp
ホラー
大学1年の春休み、公理智樹から『呪いの家に付き合ってほしい』というLIMEを受け取る。公理智樹は強引だ。下手に断ると無理やり呪いの家に放りこまれるかもしれない。それを避ける妥協策として、家の前まで見に行くという約束をした。それが運の悪い俺の運の尽き。 案の定俺は家に呪われ、家にかけられた呪いを解かなければならなくなる。 ●概要● これは呪いの家から脱出するために、都合4つの事件の過去を渡るホラーミステリーです。認識差異をベースにした構成なので多分に概念的なものを含みます。 文意不明のところがあれば修正しますので、ぜひ教えてください。 ●改稿中 見出しにサブ見出しがついたものは公開後に改稿をしたものです。 2日で1〜3話程度更新。 もともと32万字完結を22万字くらいに減らしたい予定。 R15はGの方です。人が死ぬので。エロ要素は基本的にありません。 定期的にホラーカテゴリとミステリカテゴリを行ったり来たりしてみようかと思ったけど、エントリの時点で固定されたみたい。

処理中です...