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悪霊

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 克也が私の呼び出しに応じるとはおもわなかった。
  奴は、私と二人っきりの場合、スーパーの入り口とか、駐輪場での世間話を好むから。
  まあ、100歩譲って、それはいいとしても…そんなところで30分近くオカルト談義はやめて欲しかったが。

  とは言え、難しいと言っても、江戸川乱歩の霊を呼び出すよりは遥かに楽だし、怖くはない。

  色々、書いて盛り上がってるところをなんだけど、私には霊感なんてものはない。
  で、それを上手く演出する方法を…克也は考えてくれた。
  つまり、YesかNoの二択まで話をまとめ、最後はコインなり、トランプなりで答えを聞き出そう。と、まあ、こんな感じで進める。

  
  なんとなく…それっぽい設定の話を昔、読んだ気がするけど…
  二択ものは…推理小説の爆弾コードをはじめとして、テンプレだと思うから、気にせず行こう。

  そんなところで躓(つまず)いていては、先に進められないからだ。

  剛は、ポテトを昔のように笑顔で見つめ、時より、ポテトをつまむ私に、
  「おいしそうだね?」
と、物欲しそうにきいてきた。
  そして、不満そうにしていたが、江戸川乱歩の未完『悪霊』の結末…と、言うことで、少し納得したように
「悪霊の話だから、俺は悪魔なんだね?」
と、聞く。
「違うよ。」
私は秒で否定する。

  そう、剛がベルフェゴールの扮装をしているのは、もう少し厄介な理由がある。

  それは、この『悪霊』と言う物語の鍵を握るキャラクターが、『躄(いざり)車の物乞い』と言う、今では決してドラマに登場させられないだろうキャラだからだ。

  そこで、便座(くるま)に座り、物思いにふける悪魔、ベルフェゴールに登場を願ったわけだ。

  どうせ、最後は占いで結果を決めるんだし、悪魔なら、乱歩の物語に登場していなくとも、状況を知っていても自然だからだ。

  

  「なんだか、面倒くさそうな話だね?」
剛は、テーブルに肘をつき、他人事のようにぼやく。
「なに、気楽に話してるのよ~一応、アンタが、この話の結末をジャッジするんだからねっ。」
私は声をあらげ、剛は、耳が痛そうに右目を絞る。
「俺が…あー、ダメダメ、俺、そう言うの苦手だから。」
剛が全身で拒否り、私は、ため息をついてから説明をする。
「大丈夫よ。結局、最後は右か左か、YesかNoか、二択なんだからさ。
  鳥や猿でもやれるわよ。」
私の説明に、剛は、安心し、そして、全てに興味を亡くしたようにポケットからスマホを取り出した。

  私は細部まで丁寧にリスペクトされた剛に関心しながら、 江戸川乱歩の『悪霊』をまとめる事にした。
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