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本を売る女

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  頭の中はいつもぐるぐるだ。
  そして、この話を書き始めると呪文使いが活性化する。
  調べると、2019年…9月にそんな設定を書いていた。
  昔から、それらしい設定は作っていたが、9月辺りは、随分とまとまって来ていた。
  呪文使いは小人の少女だった。イ世界の物語ではあるが、児童小説なので、月の地形を利用した。
  彼女とイ世界を旅すれば…目的地につく頃には、月の地理にも詳しくなる予定だった。
  5月のヒトラーの自分の作品の影響で、ワルギブスの夜に祭りは始まる事になっていた。

  私は、昔から、ドイツ辺りの小人属は、ケルト人か、東洋人の象徴だと思っていたので、少女もアジア系の丸みのある顔立ちをしていた。

  この話はそこで止まった。私は『魔法の呪文』の続きを選択したから。

  しかし、呪文使いの物語を始めたとしても、いまだに完結はしていなかったに違いない。

  私は、良い年をして作者であるにも関わらず異界に迷い混んでいた。
  西條先生を信じてはいたが、終わらない流感に心が混乱していたのだ。

  なんか、ハッピーエンドを作り上げなくては!

  恥ずかしいが、本気でそう考えていた。
  春先は、まだ、希望があった。パンデミックがあけたら、きっと、名古屋に行こうと考えた。
  家にこもっていたし、考える時間はあった。

  『パラサイト』の完結を優先した。もう、ハッピーエンドなら何でもよかった。
  でも、おかしな都市伝説で穢してしまった『トミノの地獄』の新解釈は考えようと思っていた。

 
  小説は、その世界に没頭して読むものだけれど、
  書いている方は、色んな話が浮いては消えて行く…
  まるで動画サイトを見ているように、何かのエピソードを見ているはしで、他の話がアピールしてくる。
  現在は呪文使いが活動していて、
  彼女を思うと、剛の言葉が胸に刺さる。

  『別に、普通に書いたら良いじゃない!こんな話、読まれたって。俺の事なんて誰も気にしないよ。』


  そうかもしれない。
  私の物語なんて、それほど読者に関心を持たれもしなかったし、剛のほのぼの系の馬鹿話は呆れて馬鹿にされても炎上するようなエピソードは無かったから。

  今でも、考える。
  こんな、おかしな話にかまけてないで、フリマの話でもしていたら…と。

  それは、考えるととてもツライ気持ちになるが、最近、やっと、なろう系異世界ファンタジーが書けないのか、理解ができた。

  私はなろう系イ世界ファンタジーの主人公を剛をモデルに考えていた。
  努力が嫌いで、働くのも嫌いで、なのに、なんだか知らないが、天気の神様に好かれている。
  
  なんとなく、ぴったり来ると考えていた。が、話を作り始めると、上手く続きが出来ず、他のキャラクターの話を考えていた。

  呪文使いの少女にしてもそうだ。
  一途で可愛い少女の呪文使い…
  剛とはかけ離れた昭和の少女漫画に登場しそうなキャラクター…


  どうして、そうなるのか、この話を書いていて理解が出来てきた。
  そう、私は剛の友人ではあるが、奴の性根は嫌いだった。
  努力もせず、目標や夢を叶えるために自らは行動せずに、ボヤく。
  ボヤきながら他人が夢を叶えてくれるのを待つのだ。
  そんな、棚ぼた人生、私は好きではないのだ。
  諦めず、まっすぐ、一歩でも前に進み続けたら、夢は叶う。
  そう思いたかった。

  剛は全てを諦めたようにフラフラ生きていて、
  私はいつもブツブツ文句を言っていた。

  でも…

  どんなに頑張っても、良い人間を目指そうと、すべての人の願いは叶わない。
  それが、叶いそうな…例えば、お得なモーニングを食べる…と、そんな他愛の無いものでも…
  叶わないときは、叶わない。

  
  完全にどうにも出来なくなった現在、私は本当の意味で、剛の生き方を受け入れたのかもしれない。
  私が文句を言う度に『エヘヘ』と笑って受け流しながら、それでも、思い出したように
  『モーニング食べたいね。』
と、言っていた。

  私もそんな風に進めて行こう。
  結局、ハッピーエンドを作れてないのだから。
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