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本を売る女

暦の終わり

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  2019年…正月が終わるまで小説を書いていた。
  そして、結末をつけずに一旦やめた。

  それは、世界的に怪しげな流感が流行っていると噂があったからだ。

  特に中国から、なにやら怪しげな情報が流れてきていた。
  私は遺伝子治療がどうこう書いていたか、設定していたか…だったので、様子を見たかったのだ。

  2000年辺りは、中国はこの分野で先頭を走っているとか書いてあった。
  2012年辺りから、欧州も本格的に参加する…みたいな記事があって、目に止まったのだと思う。

  思えば、あそこで一気に書いちゃえば、なんて事は無かった。
  きっと、パッとしないまま、それでも、少しの評価とPVを稼いで、春先には他の作品で稼ぐとかいってたかもしれない…
まあ、本当に、そうなったかは分からないが。

  なぜなら、ここから、旧正月…そして、3月になる頃には本格的な世界規模のパンデミックになっていたのだから。

  年の終わりに別れたツヨシはまた、出稼ぎに出掛けていた。
  春にはまた、皆で会う予定だった。

  その年の春の事は、あまり良く覚えていない。
  が、その年の春分に、インド辺りの暦が終わるとか、ベテルギウスが爆発するとか噂があったのは凄く覚えている。

  

  ベテルギウスは、爆発しなかった。
  が、我々の夢は、サクラの開花を待たずに見事に散った。

  私はパラサイトを書き直しはじめていた。
  落ち着いて、今見ると、あまりの変わりように、最初に読んでくれた人に申し訳なく思う。

  が、当時の私は、正気ではなかったのだ。
  泣きながら、漫画の三国志を読み返していた。

  なんとか、中国のイメージを良くする必要にかられていたからだ。

  私は、いろんなものに脅されていた。
  深刻な世の中の流れ、
  パンデミック
  そして、都市伝説…『トミノの地獄』を軽はずみに使った事に…


  私は、現在も、音読して呪われるなんて思ってはいない。
  音読できない児童文学なんて、あり得ないからだ。
  だから、そんなものは、嘘なんだって、そう、笑い飛ばしたかったのに…


  禁忌の呪文を唱えるって、こんな気持ちなんだろうか?
 などと、思いながら書き直しに迫られた。
 世の中に出し、評価も貰って、逃げるわけにもいかないとか考えた。
 日本には、『逃げるが勝ち』と言う言葉もあったと言うのに…


  私は、ここで東洋医学を調べ、劉備玄徳に品格を乞うた。
 そして、あんな都市伝説を流行らせた人間と、そんなものに乗ってしまった馬鹿な私に腹をたてた。

  私は、馬鹿だ。浅はかな人間だ。皆んなそう思うに違いない。
  が、きっと、私の立場にたてば、また、違う見方が出来ると思う。

  『トミノの地獄』は、1919年、西條先生の処女作品として出版された『砂金』と言う本に収録された詩なのだ。

  これに怪しい噂がついて回るようになるのが、2004年と言われている。
  それが本当かどうかは知らないが、ネットではそう噂されていた。

  2004年…

  中国と感染症でサーズを思い出した私は、ここで驚愕する。
サーズ…重症急性呼吸器症候群…このウイルスが特定されたのが2003年…
  なんと、都市伝説が流行る一年前
 もう、孔明に泣いてすがりたい気持ちになった。が、諸葛 コウメイがこの世にいるわけもなく、
  私は、全て、忘れ去りたいと思いながら、書き換えていた。
  パンデミックではなく、明るいハッピーエンドを目指して。

  なんだろう?良くわからないが、ハッピーエンドに出来たら、全てが上手く進むような気がしていた。

  その年の3月…

  古代インドの暦が終わっても、私は生きていて、ベテルギウスも爆発はしていない。

  が、私はエタの闇をさ迷い歩く事になり、

  ツヨシの春からの仕事が消えた。
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