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本を売る女

無双

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  最近、私は年がら年中夢想している。

  とにかく、何かを考えなくては行けない。
  物語の先を。

  克也の事も考えていた。
  奴は何を考えているのだろう?
  
  克也はそれを語ることは無いだろう。が、そうだとしても、少しは私も役に立つ気がした。

  こうして、冷静になって書いていると、胸をつくような恥ずかしさが込み上げるが、当時、私はフリマの仲間に小説に関わって欲しかったし、なんか、ネットの底知れない力に魅了されていた。

  クラウド・ファンディング…この言葉を良く聞いた。
  個人でも、夢を叶える資金が集められる…集めた人の輝くような話を耳にした。

  私は創作と言う果てない孤独な旅に疲れ、そして、努力さえすれば、前にさえ進んでいれば、必ず、夢のアルカディアに行き着けるんだと信じていた。

  そして、2年を過ぎた時点で、そろそろ、何か、考えないと、今までの努力が無駄…なゴミと化す、そんな予感にも怯えていた。

  私より、ずっと、評価をもらい、書籍化した作家ですら、ごみ呼ばわりされる世界なのだ。

  でも、顔も知らない他人の評価より、『ほらね。』と、得意気に私の失敗にニヤリと笑う剛を思って焦る。

  全てがカネに…ならなかったとして、
  だから、無価値とはならない。

  私はふりまじん。フリマの人なのだ。

  人が、不要品と決定するような物を、おのれのトークで『商品』に変えた成功体験がある。

  そう、サイトに来る一万人に不要だからといって、無価値にはならないのだ。
  世界は広く、そして、多様な趣味の人物はいる。たった一人、自分の希望額を払う客を捕まえさえすれば勝ちなのだ。

  別に、本として価値がないとしても、他の楽しみ方を提案すればいい。

  提案する為には、工夫をしなくてはいけない。

  フライ・フィッシングのように、客層を決め、何度でも、餌をつけた針をポイントに投げる。

  克也はそんな餌でもある。

  この2年、なにか知らないが、オカルトネタが沢山集まっていた。
  これらを餌に客を釣る。
  そうして、人が集まれば、出版社の人の目にとまって、特派員みたいなパスが貰えるかもしれない。

  ドラマで関係者が首からかけてる札を思い出していた。
  そして、子供の頃に見た、テレビや雑誌の素人の取材班の募集に憧れた記憶がよみがえる。

  素人特派員…オカルト系の動画配信者と、ラノベ作家のオカルトミステリーの話が頭を回る。

  少し、古くさくて、新しい物語。
  昭和世代を釣れそうな話を想像した。

  物語を考えながら、克也の研究を推理すれば一石二鳥な気がした。

  ほぼ、そんな夢は叶わないとも思ったが、叶うなら、調べてみたい色々もある。
  個人では、なかなか、はいれないようなお寺や資料も、出版社経由なら、見せて貰えるかもしれない。

  この辺りの妄想を広げて行くことにした。

  克也はそんな事を望んではいなかった。
  が、本当に、叶う日が来たら、全く拒否をするとは思えなかった。

  なにしろ、全国の神社仏閣を暇を探しては、調査いっていたのは本当なのだから。
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