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ヴィーナオーパンバル
3つの願い
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「どうしよう?」
フェネジは心配そうにメアリーを見ました。
これではエマと一緒に旅はできません。
フェネジはお願いを三つ叶えるだけです。
「良かったじゃないか。早く願いを叶えてあげなよ。」
メアリーは当たり前の事を言いましたが、フェネジには納得いきません。
でも、人間の女の子になれると分かったエマが、少し涙目になりながら、風のようにフェネジの元へ飛びついてきた時にはそんな事、忘れてしまいました。
「ああっ。私、人間の女の子になれるのねっ。
お日様に照らされて輝くリンデンバウムの黄色い色や、ねむの木のピンク色の花が、風に揺れる様を午後のお茶を飲みながら見ることが出来るのね!
私の生まれたときからの夢をフェネジ、あなたが叶えてくれるのね。
ああっ。なんて素敵なのかしら?」
とエマは、細い腕をフェネジに巻き付けて柔らかい頬を彼の胸に沈めて幸せそうに目を閉じました。
「も、勿論、大丈夫だ。」
フェネジは、可愛らしい女の子に無防備に抱きつかれて赤面しながら慌てたように言いました。
「さあ、エマ、いつまでも、フェネジに張り付いていると魔法が使えないよ。
人間の女の子になりたいんだろ?」
メアリーに諭されて、エマは慌ててフェネジから離れると、まずはひとつ目の願いを言いました。
「人間の女の子にしてください。出来れば、もう少し頬がポッチャリとして愛らしい感じに。」
エマのひとつ目の願いは聞き届けられました。
「二つ目の願いはどうする?」
フェネジは、嬉しそうにくるりと回るエマを可愛いと思いながら聞きました。
「お金とか、生活するのに必要な装備を一式。」
エマは即答で答え、メアリーは、チャッカリしているなぁ。と、苦笑しました。
「分かった。」
フェネジは、すぐにそう答え、上品な革張りのトランクをエマに渡しました。
エマが中身を確認すると、沢山のお金とか諸々の書類、着替えが入っていました。
トランクの中身に、若い娘を飾るには贅沢な真珠やダイヤモンドの指輪を見つけて、メアリーはフェネジのえこひいきにあきれましたが、何も言いませんでした。
「三つ目はどうするの?」
フェネジは、エマがフェネジ達と旅をしたいと言うことを期待しながら聞きました。
エマは、目を閉じて少し照れたように微笑んでから、フェネジを見つめて言いました。
「メアリーを。今度こそ、メアリーを幸せの分岐点まで連れていってあげて。」
エマの願いにメアリーが驚いて声をあげました。
「は?何言ってるんだい?私の事なんて、エマ、お前さんに関係ないだろ?もっと、為になる事を頼めばいいじゃないか。」
メアリーは、あきれた顔でエマを見ましたが、エマは真剣です。
「いいえ。関係あるわ。だって、トトがハッピーエンドを願わなければ私は、メアリー達に会えなかったのだもの。
トトの願いは、私の願いでもあるわ。
メアリー、私たち、あなたのハッピーエンドを知りたいのよ。」
エマは、メアリーの手をとりそういいました。
「全く、最近の娘と来たら…。欲がないんだから。ありがとう。」
メアリーは照れ隠しの憎まれ口をききました。そして、言葉をつづけます。
「でも、私は良いんだ。行くところを決めてあるからね。私は、お父さんに会いに行くんだよ。
それに、自分の幸せは、自分で見つけるつもりだよ。
きっと、あんたたちの考えるのとは違いだろうけど、きっと、喜んでくれる、そんなハッピーエンドを、私は、私の力でみつけるよ。」
メアリーは、エマに微笑みかけました。
「でも…それじゃあ。」
エマは、少し不満そうにメアリーを見つめました。
そんなエマを見て、メアリーは少し申し訳なさそうにエマを見つめ返して
「もし、願いを一つ叶えてもらえるなら、フランクに…
フランクに生き甲斐が見つかるように頼んではくれないかね?」
メアリーは心配そうにエマを見ました。
エマは、驚いてメアリーを見つめてから嬉しそうにメアリーに抱きつきました。
「ああっ。メアリー、メアリー!あなたって、なんて素敵なのかしら。
ええ、勿論、それで大丈夫よ。」
エマは、一途に幼馴染みを愛し続けたフランクの事も心配でした。
メアリー以外の生き甲斐が出来たら、きっと、フランクも幸せになるに違いありません。
「フェネジさん。それでお願いできますか?」
エマの言葉に、フェネジはジンとして堂々とした姿で
「勿論、大丈夫だ。」
と、大きく頷きました。
次の瞬間、エマは、風と共に消えてしまいました。
彼女の物語の分岐へ飛んでいったのです。
「さて、私たちも出掛けようか。まずは、プルングザールに行って本を返さなきゃ。フェネジ、あんた、連れていってくれるだろ?」
メアリーの言葉に、フェネジは口を尖らせて文句をいいます。
「えーっ。めんどうくさいなぁ。」
「そうかい?残念だねぇ。あの図書館に連れていってくれたら、チーズとソーセージの上手い店に連れていってやろうと思ったのに。」
「それならいいや。そう言うことは早くいってくれなきゃ。」
フェネジは、右手を大きく持ち上げて、魔法の呪文を唱えます。
二人の消えたフランクの部屋は、何事もないように静まり返りました。
深い眠りの底で、フランクはメアリーの夢を見ていました。
彼女の残したエーデルワイスの魔法がとけ、元のカモーミールの花になってフランクを優しい眠りに誘いました。
フェネジは心配そうにメアリーを見ました。
これではエマと一緒に旅はできません。
フェネジはお願いを三つ叶えるだけです。
「良かったじゃないか。早く願いを叶えてあげなよ。」
メアリーは当たり前の事を言いましたが、フェネジには納得いきません。
でも、人間の女の子になれると分かったエマが、少し涙目になりながら、風のようにフェネジの元へ飛びついてきた時にはそんな事、忘れてしまいました。
「ああっ。私、人間の女の子になれるのねっ。
お日様に照らされて輝くリンデンバウムの黄色い色や、ねむの木のピンク色の花が、風に揺れる様を午後のお茶を飲みながら見ることが出来るのね!
私の生まれたときからの夢をフェネジ、あなたが叶えてくれるのね。
ああっ。なんて素敵なのかしら?」
とエマは、細い腕をフェネジに巻き付けて柔らかい頬を彼の胸に沈めて幸せそうに目を閉じました。
「も、勿論、大丈夫だ。」
フェネジは、可愛らしい女の子に無防備に抱きつかれて赤面しながら慌てたように言いました。
「さあ、エマ、いつまでも、フェネジに張り付いていると魔法が使えないよ。
人間の女の子になりたいんだろ?」
メアリーに諭されて、エマは慌ててフェネジから離れると、まずはひとつ目の願いを言いました。
「人間の女の子にしてください。出来れば、もう少し頬がポッチャリとして愛らしい感じに。」
エマのひとつ目の願いは聞き届けられました。
「二つ目の願いはどうする?」
フェネジは、嬉しそうにくるりと回るエマを可愛いと思いながら聞きました。
「お金とか、生活するのに必要な装備を一式。」
エマは即答で答え、メアリーは、チャッカリしているなぁ。と、苦笑しました。
「分かった。」
フェネジは、すぐにそう答え、上品な革張りのトランクをエマに渡しました。
エマが中身を確認すると、沢山のお金とか諸々の書類、着替えが入っていました。
トランクの中身に、若い娘を飾るには贅沢な真珠やダイヤモンドの指輪を見つけて、メアリーはフェネジのえこひいきにあきれましたが、何も言いませんでした。
「三つ目はどうするの?」
フェネジは、エマがフェネジ達と旅をしたいと言うことを期待しながら聞きました。
エマは、目を閉じて少し照れたように微笑んでから、フェネジを見つめて言いました。
「メアリーを。今度こそ、メアリーを幸せの分岐点まで連れていってあげて。」
エマの願いにメアリーが驚いて声をあげました。
「は?何言ってるんだい?私の事なんて、エマ、お前さんに関係ないだろ?もっと、為になる事を頼めばいいじゃないか。」
メアリーは、あきれた顔でエマを見ましたが、エマは真剣です。
「いいえ。関係あるわ。だって、トトがハッピーエンドを願わなければ私は、メアリー達に会えなかったのだもの。
トトの願いは、私の願いでもあるわ。
メアリー、私たち、あなたのハッピーエンドを知りたいのよ。」
エマは、メアリーの手をとりそういいました。
「全く、最近の娘と来たら…。欲がないんだから。ありがとう。」
メアリーは照れ隠しの憎まれ口をききました。そして、言葉をつづけます。
「でも、私は良いんだ。行くところを決めてあるからね。私は、お父さんに会いに行くんだよ。
それに、自分の幸せは、自分で見つけるつもりだよ。
きっと、あんたたちの考えるのとは違いだろうけど、きっと、喜んでくれる、そんなハッピーエンドを、私は、私の力でみつけるよ。」
メアリーは、エマに微笑みかけました。
「でも…それじゃあ。」
エマは、少し不満そうにメアリーを見つめました。
そんなエマを見て、メアリーは少し申し訳なさそうにエマを見つめ返して
「もし、願いを一つ叶えてもらえるなら、フランクに…
フランクに生き甲斐が見つかるように頼んではくれないかね?」
メアリーは心配そうにエマを見ました。
エマは、驚いてメアリーを見つめてから嬉しそうにメアリーに抱きつきました。
「ああっ。メアリー、メアリー!あなたって、なんて素敵なのかしら。
ええ、勿論、それで大丈夫よ。」
エマは、一途に幼馴染みを愛し続けたフランクの事も心配でした。
メアリー以外の生き甲斐が出来たら、きっと、フランクも幸せになるに違いありません。
「フェネジさん。それでお願いできますか?」
エマの言葉に、フェネジはジンとして堂々とした姿で
「勿論、大丈夫だ。」
と、大きく頷きました。
次の瞬間、エマは、風と共に消えてしまいました。
彼女の物語の分岐へ飛んでいったのです。
「さて、私たちも出掛けようか。まずは、プルングザールに行って本を返さなきゃ。フェネジ、あんた、連れていってくれるだろ?」
メアリーの言葉に、フェネジは口を尖らせて文句をいいます。
「えーっ。めんどうくさいなぁ。」
「そうかい?残念だねぇ。あの図書館に連れていってくれたら、チーズとソーセージの上手い店に連れていってやろうと思ったのに。」
「それならいいや。そう言うことは早くいってくれなきゃ。」
フェネジは、右手を大きく持ち上げて、魔法の呪文を唱えます。
二人の消えたフランクの部屋は、何事もないように静まり返りました。
深い眠りの底で、フランクはメアリーの夢を見ていました。
彼女の残したエーデルワイスの魔法がとけ、元のカモーミールの花になってフランクを優しい眠りに誘いました。
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