祓魔師 短編集

のーまじん

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通り魔

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  私は戦場にいた。

  爆発音があちこちで聞こえてきた。

  その時、優勢だったのは我々の方だった。

  砲撃準備の号令を聞きながら、私は、敵陣で聞こえる破裂音を聞きながら、天空に雷神(トール)の姿を見たのだった。

  瞬間、激しい光と頭への激痛が走り、

  私は、たまらなくなって叫びだした。

  狼が来る

  狼が来る!

  狼が………太陽を食らいにやって来る。

  

  途端に私は、沢山の白衣の人物に取り押さえられた。そして、腕に注射を一本打たれたのだった。

  「皆さん、これはフラッシュバックという症状です。どうぞ落ち着いてください。」
ジルの穏やかな説明が、講堂に響いた。

  「すべては、アンドレの頭の中で作られる妄想なのです。」
ジルの台詞を遠くに聞いた。

  「違う!俺は本当に聞いたんだっ。戦場で、雷神(トール)が叫びあげるのを………。
  高貴狼(アドルフ)が目を覚ましたと。
  術式は成功したんだと!
  どうして、信じてくれないんだ。
  ノストラダムスの予言書にも書いてあると言うのに。」

  ノストラダムスと聞いて、観客は大ウケした。

  遠くなる意識の中で、ジョセフィーヌが私の髪を撫でながら、得意顔で助言した。

  「バカね。あの人たちは見えないんだから、分からないのよ。
  皆、みーんな、おバカさんなの。」
ジョセフィーヌの助言に、観客が笑いと拍手を惜しまなかった。
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