祓魔師 短編集

のーまじん

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ちょっと一服 〜作者のぼやき〜12

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 なんだか、止まらなくなってきた。

 ベタな昭和の新婚初夜の描写なんて、書いてるこっちも恥ずかしいが、まあ、いいか。

 ナイトガウンを身に纏(まと)う可憐な新妻を前に、レクスは赤面しながら硬直する。

 これで、レクスは有能で、ケンカも強いんだよね。  この頃には、部下だっているし、秀吉モデルといっても、猿は猿でも、コルシカの猿と言われたナポレオン位のマスクは維持してる。

 が、レクスはお嬢様一途だったし、その辺の経験はない。15才だし。商家の番頭は忙しい。

 勿論、夜具を身につけたの女性と二人きりなんて、生まれて初めての経験だ。
 固まってるしかない。

 そんなレクスをしばらく見つめ、少し不満そうに少女はレクスを見つめる。

 「旦那様、あなたの為に装った新妻を抱き締める両腕と甘く囁く唇をお忘れになってきたのですか?」
少しふくれたような、不満げな表情も可愛らしくて、レクスの胸は締め付けられる。

 「すいません、お嬢様。貴女があまりにも美しいので、言葉も恥ずかしがって出てこなかったようです。」
レクスは優しい眼差しを少女に向けて微笑んだ。
 少女は、「お嬢様」の台詞に少し不機嫌になりながら、バルコニーに続くフランス窓に向かう。
「星を見ましょう。今日は満月が一際綺麗なのよ。」
なにも知らないお嬢様は、窓を開けてバルコニーに歩いて行く。

 レクスは、監視がいるのを知っているから少し躊躇(ちゅうちょ)するけれど、二人きりよりましだと考えなおしてついて行く。

 そこには、乳白色の世界にヴェネチアを変えながら、月が輝いている。

 「ジュリアス。みて、なんて綺麗な月なんでしょう!こんな月に見られていたら、私、悪い女に変身してしまうかもしれないわね。」
少女は、乳白色の光のなかで幻想的に微笑んだ。
 少し、魅惑的で、いつもと違う大人びた姿の彼女を見たようにレクスは感じる。

 が、見ているのは、月だけじゃない。川をはさんだ向かいの部屋には、クロスボーの傭兵がこちらを狙っている。

 レクスは急いで少女のもとへとかけよると、その肩に手をかけて優しく囁いた。

「風邪をひいてしまいますよ。ダイアナ(月の女神で泥棒の女神)に貴女をとられては困ります。中に入りましょう。」
レクスの言葉に、少女は不満げに彼を見つめて、少し、腹をたてながらレクスの首筋に抱きついた。

「口づけをしてくれる?」
 レクスは驚いて少女を見つめた。
 だって、出航が決まってから、とんとん拍子に結婚は決まったけれど、お嬢様と番頭の雰囲気は、この部屋に入るまで変わらなかったのだから。

 抱きつかれて、レクスははじめて、女性の普段着と寝巻きの生地の違いを体感する。

 柔らかい木綿のドレスのすぐ下にある少女の温もりと肌の感覚が、レクスの両手から理性を奪おうとしていた。

 「大丈夫。月しか見ていないわ。月の下では我を忘れてもいいのよ。ジュリアス。」
少女は、無意識に甘い言葉を男に投げ掛ける。

 でもっ。

 見ているのは、月だけじゃーありませんから。
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