祓魔師 短編集

のーまじん

文字の大きさ
上 下
8 / 44
懺悔

魔物の系譜 3

しおりを挟む
 カルロの動揺に反応するようにアンドレが立ち上がる。
 「懺悔の時間は終わりにしましょう。」
アンドレの低く野太い声が手入れされた斧が切り株に突き刺さるように強い意思と恐怖を含んで牢の空気を揺らした。

 カルロは弾かれたようにアンドレを見る。
「アンドレ、お座りなさい。」
カルロの穏やかな声にアンドレは困った顔でカルロを見つめる。
「朝日が昇りました。こんな奴には勿体ないくらいの時間をさきましたぜ。
 もう、戻りましょう。」
アンドレは立ったまま、カルロを急かした。
 アンドレの不安がカルロの心に伝染する。早くなる脈拍を自覚しながらカルロは穏やかに微笑みを返した。アンドレは、カルロの言葉に囚われたように何も出来ずにカルロを悲しそうに見つめた。

 「アンドレ、ビビるなよ。昼には私は、地獄に戻る。おまえさんとの付き合いもこれきりだ。
 それに、私はこうして檻の中にいるじゃないか!怖がるなんて、お前らしくないぞ。」
プレアティは、くくっとバカにしたような軽い笑いを漏らしてアンドレを挑発する。が、3人の同僚を傷つけられたアンドレは耳を貸さなかった。

 悪魔の言葉に耳を貸してはいけない。

 アンドレはカルロを見つめたまま、カルロに問いかけるように大袈裟に十字を切り祈る。
 「カルロ様、アイツは悪魔です。これ以上の慈悲などかける価値もありません。」
アンドレの意思の強さをカルロはその目に見た。

 カルロは迷った。

 プレアティの話を聞くのは今しかない。
 特に現在、目の前にいるプレアティは、1440年のジル・ド・レ男爵の事件を思わせた。

 少年の誘拐と殺戮。

 それに、微妙に自著と食い違う過去のプレアティについても知りたかった。

 レディ ヨランド・タラゴン…。国王殿下の義母が登場するとは穏やかではない。

 「酷いな、アンドレ。私は、昼には殺されてしまうのだよ?生きながら焼かれて…もう少し慈悲の気持ちを向けてくれても良いのではないかな?」
プレアティは芝居がかった言い方でアンドレを煽る。が、食いついてくれないと悟ると、急に低く真面目な声色でこう言った。
「カルロ様、貴方は私を見棄てたりはしませんよね?
 いいえ、それはもう不可能なのです。
 20年前の、ジル様のイカサマ裁判に出席したあの時から、いいえ、ジャンヌ・ダルクの処刑を見ていたあの日から、貴方もこの話のシナリオに組み込まれていたのですから。」
と、ここでプレアティは一度言葉を区切った。
 それから、とても満足そうな笑い声を漏らし、こうかたる。
「私は、これにて、おいとましますがね、その前に是非とも貴方様には聞いてもらいたいと思っていたのですよ。少女ジャンヌの夢をミカエルの代わりに果たした、偉大な御方と私の話をね。」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

ヴィクトリアンメイドは夕陽に素肌を晒す

矢木羽研
歴史・時代
カメラが普及し始めたヴィクトリア朝のイギリスにて。 はじめて写真のモデルになるメイドが、主人の言葉で次第に脱がされていき…… メイドと主の織りなす官能の世界です。

【18禁】「巨根と牝馬と人妻」 ~ 古典とエロのコラボ ~

糺ノ杜 胡瓜堂
歴史・時代
 古典×エロ小説という無謀な試み。  「耳嚢」や「甲子夜話」、「兎園小説」等、江戸時代の随筆をご紹介している連載中のエッセイ「雲母虫漫筆」  実は江戸時代に書かれた随筆を読んでいると、面白いとは思いながら一般向けの方ではちょっと書けないような18禁ネタもけっこう存在します。  そんな面白い江戸時代の「エロ奇談」を小説風に翻案してみました。    下級旗本(町人という説も)から驚異の出世を遂げ、勘定奉行、南町奉行にまで昇り詰めた根岸鎮衛(1737~1815)が30年余にわたって書き記した随筆「耳嚢」  世の中の怪談・奇談から噂話等々、色んな話が掲載されている「耳嚢」にも、けっこう下ネタがあったりします。  その中で特に目を引くのが「巨根」モノ・・・根岸鎮衛さんの趣味なのか。  巨根の男性が妻となってくれる人を探して遊女屋を訪れ、自分を受け入れてくれる女性と巡り合い、晴れて夫婦となる・・・というストーリーは、ほぼ同内容のものが数話見られます。  鎮衛さんも30年も書き続けて、前に書いたネタを忘れてしまったのかもしれませんが・・・。  また、本作の原話「大陰の人因の事」などは、けっこう長い話で、「名奉行」の根岸鎮衛さんがノリノリで書いていたと思うと、ちょっと微笑ましい気がします。  起承転結もしっかりしていて読み応えがあり、まさに「奇談」という言葉がふさわしいお話だと思いました。  二部構成、計六千字程度の気軽に読める短編です。  

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

若妻の穴を堪能する夫の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

処理中です...