7 / 44
懺悔
魔物の系譜2
しおりを挟む
「51年の男は『憤怒』でした。
彼は怒りに任せて川沿いの小さな町を滅ぼしました。黒魔術をしていると喚きながら、子供にも容赦はしませんでした。」
プレアティは、詩を口ずさむように軽快に話す。
カルロは51年の男に違和感を感じた。それは、自分の著作とは違う男の話だった。
「54年の男は『嫉妬』深い人物でした。
自分を棄てた女に似た娼婦を殺し続けたのです。」
プレアティは、昔話でもするように抑揚をつけ、歌うように続ける。
カルロは静かにプレアティの手を見つめていた。
力仕事などした事の無いような綺麗な爪をしていた。
3年ごとに繰り返される殺戮。
しかし、カルロは知っていた、54年にパリを騒がせたその男はプレアティなどと語ってはいない。
『魔女を地獄へもどした。』と、そう告白したのだ。
7人のプレアティを名乗る人物は、不特定の場所、無関係な人物だが、何故、この男はこうもスラスラと話すのだろうか?
が、カルロはプレアティの事件に7つの大罪を結びつけたりはしていない。
彼が『魔物の系譜』を書き上げた時は、まだ、51年の男を含めて3人の出現であり、マルスとの関係もボンヤリとしたイメージでしかなかったのだ。
漠然としたカルロの不安など気にする事もなくプレアティは続けた。
「57年の男は、死んだばかりの若い娘の死体を盗むのが好きだった。
ある日、急死した領主の姫に恋をして墓に忍び込んで捕まった。」
プレアティはそう言って静かに口をつぐむ。
カルロはプレアティの表情を確認しようと目を細める。
「『傲慢』『強欲』『憤怒』『嫉妬』57年の男はさしずめ『暴食』でしょうか?
それではあなたを除外しても7つの大罪にはなりませんね?
それとも…これは、わたしの勘違いでしょうか?」
カルロの優しい低い声が牢内に響いた。
「いいえ、その通りです。もう一人は、42年。
カルロ様の系譜は少し離れているのです。
42年、悪魔召喚をした女がいます。
彼女は、自らの希望を叶える努力を怠り、死の間際、魂と引き換えに悪魔にそれを願った…。
タラゴン夫人でございます。」
プレアティの言葉にカルロは言葉を失った。
彼が口にしたのは、ヨランド・タラゴン……国王殿下の義母に間違いないと感じたからだ。
「なんと、冗談でも軽々しく口にする名前ではありませんよ。」
カルロの心臓が少し早く脈を打つ。
シャルル殿下の義母様が、悪魔に力を借りるなど、あり得ないと思った。
思いながらも、心の不安が深く濃くなるのを感じずにはいられなかった。
彼は怒りに任せて川沿いの小さな町を滅ぼしました。黒魔術をしていると喚きながら、子供にも容赦はしませんでした。」
プレアティは、詩を口ずさむように軽快に話す。
カルロは51年の男に違和感を感じた。それは、自分の著作とは違う男の話だった。
「54年の男は『嫉妬』深い人物でした。
自分を棄てた女に似た娼婦を殺し続けたのです。」
プレアティは、昔話でもするように抑揚をつけ、歌うように続ける。
カルロは静かにプレアティの手を見つめていた。
力仕事などした事の無いような綺麗な爪をしていた。
3年ごとに繰り返される殺戮。
しかし、カルロは知っていた、54年にパリを騒がせたその男はプレアティなどと語ってはいない。
『魔女を地獄へもどした。』と、そう告白したのだ。
7人のプレアティを名乗る人物は、不特定の場所、無関係な人物だが、何故、この男はこうもスラスラと話すのだろうか?
が、カルロはプレアティの事件に7つの大罪を結びつけたりはしていない。
彼が『魔物の系譜』を書き上げた時は、まだ、51年の男を含めて3人の出現であり、マルスとの関係もボンヤリとしたイメージでしかなかったのだ。
漠然としたカルロの不安など気にする事もなくプレアティは続けた。
「57年の男は、死んだばかりの若い娘の死体を盗むのが好きだった。
ある日、急死した領主の姫に恋をして墓に忍び込んで捕まった。」
プレアティはそう言って静かに口をつぐむ。
カルロはプレアティの表情を確認しようと目を細める。
「『傲慢』『強欲』『憤怒』『嫉妬』57年の男はさしずめ『暴食』でしょうか?
それではあなたを除外しても7つの大罪にはなりませんね?
それとも…これは、わたしの勘違いでしょうか?」
カルロの優しい低い声が牢内に響いた。
「いいえ、その通りです。もう一人は、42年。
カルロ様の系譜は少し離れているのです。
42年、悪魔召喚をした女がいます。
彼女は、自らの希望を叶える努力を怠り、死の間際、魂と引き換えに悪魔にそれを願った…。
タラゴン夫人でございます。」
プレアティの言葉にカルロは言葉を失った。
彼が口にしたのは、ヨランド・タラゴン……国王殿下の義母に間違いないと感じたからだ。
「なんと、冗談でも軽々しく口にする名前ではありませんよ。」
カルロの心臓が少し早く脈を打つ。
シャルル殿下の義母様が、悪魔に力を借りるなど、あり得ないと思った。
思いながらも、心の不安が深く濃くなるのを感じずにはいられなかった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
3
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる