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懺悔
プレアティ
しおりを挟むプレアティと名乗る男は、本来僧でないのか破門されたからなのか、頭頂部にも髪の毛が生え揃っていた。
そして、逆行に隠れていても存在感のある、堀の深いラテン系の顔立ちだと感じた。
表情は読めなかったが、闇の中から見つめられて、カルロは、この男に悪魔がとり憑いているとしたら、知恵と名のある悪魔にちがいないと感じた。
いや…悪魔だなどと…軽々しく思うものではない。
カルロは心の中で十字を切り、自分の浅はかな考えを戒める。
教会では、悪魔の存在についてはデリケートに扱われている。
みだりに、悪魔などと口にしてはいけないのだ。
中央の偉大な方々の考える細かな教えを参考にしてもなお、現場で様様な人間と対峙すると、経験による個人的な分析や考えも生まれてくる。
カルロもまた、自分なりの見分け方を持っていた。
悪魔憑き…にも、大きく分けて二つある。
下等な悪魔にとり憑かれれば動物のように考えなしに悪さを繰り返すが、
階級が上の知恵のある悪魔がとり憑いている場合は、清潔で気さくな人好きするタイプが多く、なかなか自分の犯罪の証拠を残したりはしないのだ。
そして、どちらの場合も、ある一定のサイクルをもって世の中に現れることがある。
プレアティと名乗る男は死の神の星…マルスが教会の一番高い菩提樹の辺りに輝く頃にやって来る。
1445年絞首刑になった、初めの男から、この懺悔をする男で7人目になる。
「あなたがプレアティですね?」
カルロは、プレアティが話しやすいように穏やかに彼の名前を呼んだ。
プレアティは、名前を呼ばれたことを喜び、握手のために右手をカルロに差し出したが、後ろで睨み付けるアンドレと目があって、手を引っ込めた。
「嬉しいですね。私の人生最大のハレの日を貴方が見届けてくれるなんて!なんと言っても、貴方の著書『魔物の系譜』は、素晴らしい出来でした。あれを読んだ時、私の最後の祈りを聞いてくれるなら、貴方しかいないと決めていたのです。」
プレアティは、聖書の暗唱の評価を聞くように期待を込めてカルロに聞いた。
「で、私にはどんな悪魔がとり憑いているのでしょうか?」
カルロは、一瞬、返答に困る。悪魔にとり憑かれて浮かれている人物を初めての見たからだ。
「そう簡単に悪魔を見わけることは出来ません。彼らは狡猾で位の高い頭の良い奴ほど闇に隠れるのが上手いのです。」
カルロは、プレアティの気を悪くさせないように、言葉を選んで話した。
プレアティはカルロの穏やかな表情を疑わしそうに見つめて、
「では、ジャンヌダルクはどうでしたか?」
と、意地悪な質問をした。
1431年。カルロは、確かにジャンヌダルクの処刑の様子を目撃していた
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