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セカンドシーズン
火星人
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暑い夏の夜。21時を過ぎていたけど、旦那は帰ってこない。
いつもは不満を感じるけれど、今日は早く帰ってこない事を嬉しく感じてしまう。
奈津子から電話が来たのだ。
自分の部屋で少女時代のように奈津子に妖精や小人について語れる喜び。
よく、叔母さんが私の漫画を読みながら、少女漫画は変わった、昔のような可愛い話が読みたいとぼやいていたけれど、そんな気持ちが今ならわかる気がする。
叔母さんが私にくれた昭和の少女漫画を、たまに無性に読みたくなるがある。
健気な少女と、優しい王子、美しく気高い魔王……
童話の挿し絵のような湖の傍らで、少女の頃に知りあったイケメンの水神に語るように、
奈津子に美しい空想を語る幸せ。
サクラメンサの渓谷は、グランドキャニオンのような広大な姿にバージョンUp
小豆とぎは、昔話に登場するような着物の少し不気味な姿から、逞しい腕と胸板の、背中に見事なドラゴンのボディペインティングを施した少女漫画風味に変身していた。
ルナ高原は、衛星(つき)の光で乳白色に輝き、髪の長い、スノードロップのつぼみのような白い肌に碧瞳の妖精の女王がたたずんでいた。
それらについて、奈津子は軽く相槌をうちながら聞いてくれた。
突っ走る気持ちと設定。
自覚はあるけれど、止まらない。
中学時代は、長電話をしていると、お母さんが文句を言いに来たけれど、それは無くなり、話放題のプランなので料金を気にしなくても良いのだから。
「本当に、スミレは火星人が好きだね。」
私が息をついた時を狙うように奈津子が言う。
「え?火星?」
私は少し驚いて聞き返した。
確かに、モデルは火星だけど、作り出した世界はどこから見ても異世界。
そう考えていたから。
「うん。昔を思い出すわ。スミレも綾子も火星人が好きだったよね?タコ型の」
「たっ…タコ型?」
私は混乱する頭を抱えて絶句した。
宇宙人と言われて普通の人が思い浮かべるのは、グレイと呼ばれる黒目だけの、昔の少女漫画も顔負けの大きな瞳と尖った顎の人形の生物ではないだろうか?
しかし、昭和の時代は違った。
宇宙人と言えば、無脊椎動物…主にタコやイカのような姿をしていた。
H・G・ウェルズと言うイギリスの作家が、19世紀に流行りだした 火星に生命体がいるかもしれない と言う噂を作品にして、それが世界的に広まったためだ。
『宇宙戦争』と呼ばれたこの作品は、さすがに私の世代では古い話で、読んだことはない。
でも、英語の勉強になるとか、アメリカの俳優さんと何度か話題に上ったのは覚えている。
その俳優さんは、ラジオ番組で、この『宇宙戦争』をリアルな実況風の作品として発信し、全米を混乱させたそうだ。
私は、この話はまた聞きで、UFOのアメリカの陰謀に荷担している…かもしれない人として小学生の隼人くんが熱心に語っていた人として覚えている。
「うん、そういえばさぁ…、スミレの叔父さん、都会の番組、ビデオに録画して送ってくれてたでしょ?」
「うん…ドラマとか、アニメとか…あの頃、たまに、“一部地域”にされて見られなかった番組とかあったものね。」
私は、90年代を懐かしく思い出す。
ローカル放送では、2時間の歌番組などが、大人の事情で1時間にされたりしたのだ。
で、どうしても見たい番組は、都会で生活していた叔父さんに泣きついたりしたのだった。
「うん。私も、綾子とよく見せて貰ったけどさ、
あなたと綾子は、火星人のCMがかかると、そっちのほうに気をとられていたわね。」
「え?そんなCMあった?」
私は、遠い昔の甘い思いでと、突然、登場したタコ型の宇宙人に困惑した。
いつもは不満を感じるけれど、今日は早く帰ってこない事を嬉しく感じてしまう。
奈津子から電話が来たのだ。
自分の部屋で少女時代のように奈津子に妖精や小人について語れる喜び。
よく、叔母さんが私の漫画を読みながら、少女漫画は変わった、昔のような可愛い話が読みたいとぼやいていたけれど、そんな気持ちが今ならわかる気がする。
叔母さんが私にくれた昭和の少女漫画を、たまに無性に読みたくなるがある。
健気な少女と、優しい王子、美しく気高い魔王……
童話の挿し絵のような湖の傍らで、少女の頃に知りあったイケメンの水神に語るように、
奈津子に美しい空想を語る幸せ。
サクラメンサの渓谷は、グランドキャニオンのような広大な姿にバージョンUp
小豆とぎは、昔話に登場するような着物の少し不気味な姿から、逞しい腕と胸板の、背中に見事なドラゴンのボディペインティングを施した少女漫画風味に変身していた。
ルナ高原は、衛星(つき)の光で乳白色に輝き、髪の長い、スノードロップのつぼみのような白い肌に碧瞳の妖精の女王がたたずんでいた。
それらについて、奈津子は軽く相槌をうちながら聞いてくれた。
突っ走る気持ちと設定。
自覚はあるけれど、止まらない。
中学時代は、長電話をしていると、お母さんが文句を言いに来たけれど、それは無くなり、話放題のプランなので料金を気にしなくても良いのだから。
「本当に、スミレは火星人が好きだね。」
私が息をついた時を狙うように奈津子が言う。
「え?火星?」
私は少し驚いて聞き返した。
確かに、モデルは火星だけど、作り出した世界はどこから見ても異世界。
そう考えていたから。
「うん。昔を思い出すわ。スミレも綾子も火星人が好きだったよね?タコ型の」
「たっ…タコ型?」
私は混乱する頭を抱えて絶句した。
宇宙人と言われて普通の人が思い浮かべるのは、グレイと呼ばれる黒目だけの、昔の少女漫画も顔負けの大きな瞳と尖った顎の人形の生物ではないだろうか?
しかし、昭和の時代は違った。
宇宙人と言えば、無脊椎動物…主にタコやイカのような姿をしていた。
H・G・ウェルズと言うイギリスの作家が、19世紀に流行りだした 火星に生命体がいるかもしれない と言う噂を作品にして、それが世界的に広まったためだ。
『宇宙戦争』と呼ばれたこの作品は、さすがに私の世代では古い話で、読んだことはない。
でも、英語の勉強になるとか、アメリカの俳優さんと何度か話題に上ったのは覚えている。
その俳優さんは、ラジオ番組で、この『宇宙戦争』をリアルな実況風の作品として発信し、全米を混乱させたそうだ。
私は、この話はまた聞きで、UFOのアメリカの陰謀に荷担している…かもしれない人として小学生の隼人くんが熱心に語っていた人として覚えている。
「うん、そういえばさぁ…、スミレの叔父さん、都会の番組、ビデオに録画して送ってくれてたでしょ?」
「うん…ドラマとか、アニメとか…あの頃、たまに、“一部地域”にされて見られなかった番組とかあったものね。」
私は、90年代を懐かしく思い出す。
ローカル放送では、2時間の歌番組などが、大人の事情で1時間にされたりしたのだ。
で、どうしても見たい番組は、都会で生活していた叔父さんに泣きついたりしたのだった。
「うん。私も、綾子とよく見せて貰ったけどさ、
あなたと綾子は、火星人のCMがかかると、そっちのほうに気をとられていたわね。」
「え?そんなCMあった?」
私は、遠い昔の甘い思いでと、突然、登場したタコ型の宇宙人に困惑した。
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