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のーまじん

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セカンドシーズン

振り返る

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 切なげな春の夜。
 一軒家に一人きり。
 私は、パソコンに入れた長い奈津子のメールを読んでいた。

 それは、奈津子がグループの一員として発表したいと私に送られてきた小説……
 私小説だ。

 風呂上がりでなくとも、こんなメールを再び読んでいたら、頭がゆだるきがする。
 彼女の小説の題名は、
『ヴァッカボン~幸せを売る男(仮)』と言うものだった。

 多分、シャンソンから題を思いついたのだと思う。
 『幸せを売る男』と言う題名で日本でも昭和の歌手が
  複数カバー曲をリリースした名曲で、
 ヴァッカボン…と言うのは、放浪者とか、根無し草の意味合いだと思う。

 フランス語でカタカナによる日本語表記としては少し間違っている気がするが、
 ヴァカボンドとかにすると何やら有名な漫画を連想されそうだし、
ヴァカボンも、ヴをバに変えると、有名なあのギャグ漫画のキャラクターを連想されそうだから奈津子も少し気にしたのだと思う。

 陽気な男、ヴァカボン。
 そう命名されて語られる物語の主人公は二郎。
 なんの捻りもなく雄二郎の雄の部分を削除しただけの名前だ。

 (個人情報隠す気無いじゃない(T_T))

 私は、ネットの大通りで個人情報のストリップを始めたような物語の冒頭に嫌な予感がわいてきた。

 この話はメール機能を使って書かれているので、一話、五千字位のボリュームでまとめられていた。

 1話目は『出会い』と言う題名だ。

 はじめての小説で、1話目の題名は、何となく、力が入るか、プロローグなんて作りたくならずに、素直に出会いからはじめるところに、奈津子の文才をちょっぴり感じる。

 私の場合は……まあ、それはいい(*''*)

 シンプルに投げられる題名をクリックすれば、スマホが本文を表示してくれる。

 なんだか、小学生の息子の参観日を思い出すような、変な緊張感に見舞われながら、私は読み始めた。

 本文…
 これから、私は一人の男性を皆さんに紹介しようと思う。




 ああ…(-_-;)

 私は、雑に流して読んでいた冒頭部分を真面目に読んで汗をかく。
 なんだろう?この、選挙演説みたいなでだし、久しぶりに読んでも…恥ずかしさは生き生きと甦る。

 こんな出だしで紹介される、その男。
 私は、真ん丸の気の弱そうな中年男の雄二郎を思い浮かべて続きを読む。



 彼と私の奇妙な関係について、私は告白する。
 私たちは名古屋に行きたい。
 でも、これから紹介するこの男は、いい歳をして交通費すら払えずに、私に思い出を売る権利を差し出したのだ。

 私は、私と奴との思い出を皆さんに買ってもらおうと考えている。

 目標最低金額は二万円。
 それ以上稼げたら、生ビールを彼にご馳走しようと私は考えている。

 そして、こんな私達が出会ったのは、ある、工事現場での事なのだ。



 なんか…恥ずかしいわ…(///∇///)

 私は、なんの捻りもなく書かれているその文章に焦りって読んだ初見の事を思い出していた。

 あのときは、こんな風にΣ( ̄□ ̄)!驚いて、本当の…ただのメールを読み間違えたのかと調べたりした。


 でも、この文章は、間違いなく送られてきた小説の1話だった。
 ただ、私がこの1話を読み飛ばしていたらしいのは今、理解した。


 笑いが込み上げる。

 奈津子…今も昔も、直球過ぎる危険な女なのだ。
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