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それは記憶で自分じゃない
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ウルドは二つの記憶に悩まされていた
テレージアとフリードと
別れて
あれから一ヵ月
思い出した断片的な記憶を整理して
やっと、母とウルドの時間が埋まり
親子らしく話せるようになってきていた
と言っても母は10年ほどクリスタルの中で眠っていたため
年も近く母と言うより姉という感じで、
育ててくれた義母の方がやはり母という感じだ
(母さんにはまた、新たな人生を歩んでほしい)
それとは別に、頭を悩ませるのは前世の記憶だ
テレージアに会い、前世の兄に会った事で頭の痛みとともに
いろいろな記憶が蘇った
金髪の美しい、前世の母
昔の青の騎士団の部下
兄フリード
テレージア
かつての家族
そして、苦楽を共にした
アレン
七色の剣
何より、自分が
あのレアード•アルディンだという
到底受け入れ難い記憶
自分がレアードだとすると
ライアン副団長は前世の自分の息子って事になる
「今からどんなふうに見れば、、接すればいいのか」
そもそも、自分がレアードだと
知るものはいない
自分の中に記憶があるだけで
自分はウルド•スティアードだ
それを確固たる存在とする思いが自分にはあった
今日は休日で騎士団は休みだ
ライランド邸へ向かう少し登った
石畳の道を歩く
昨日、仕事終わりにミュリエルがテレージアに会いに行くと言うので
自分も連れて行って欲しいと言うと
了承してくれた
道すがら、綺麗な庭園の邸宅の東屋に
綺麗な夫人が座って編み物をしている姿が見えた
その姿に
懐かしく、心が騒いだ
その人が振り向くと目が合う
その人は柔らかく微笑んで会釈をくれる
(ああ、、そうか、、ここはライアン副団長の、、、かつての自分の家だ)
懐かしく思うのはレアードの記憶
立ち去らなければ、ただの不審者だ
しかし、なかなか立ち去ることが出来なかった
その時
ポンと肩を叩かれた
振り返るとそこにミュリエルとライアンが立っている
「ウルド、もー来たの?早かったね」
ミュリエルが言うと
ライアンも声をかけた
「どうしたんだ?こんなところに立ち止まって」
ミュリエルの手には大きな紙袋があって
その袋には彼女の好きなスイーツ店のロゴがある
「テレージアにお土産買ってきた」
ミュリエルがニコっと笑うと
庭からうれしそうな声が聞こえた
「まぁ、ミュリエルじゃない。あらライアンもおかえり」
柔らかい優しい声にまた、心が反応する
「お久しぶりですフィレア様」
「ちょうど良かった!さっきりんごのタルトを作ったの食べて行かない?」
「え!いいんですか?」
ミュリエルは喜び、夫人に促されるまま
中に入っていく
「はぁ、母上にも困ったものだ、ミュリエルに命を救われてから彼女の事がお気に入りでな」
ライアンはため息をつくと
ウルドに振り返る
「ウルドも寄って行ってくれ、母上のタルトはなかなかうまいから」
ライアンが玄関に向かう
ウルドは胸の辺りの服をぎゅッと握った
(知っている)
(彼女の作る料理はすべて美味しかった)
死んだ後、家に帰ってくることができるなんて
まるで、自分のことのように懐かしく
涙が出そうだった
「ウルド?」
ライアンの呼ぶ声にさえ、感極まる
「今行きます」
中に入ると、前世の記憶とあまり変わらない家の中
昔、愛した女性と、今好きな女性が仲良くお茶の準備をしていた
ウルドはいろいろな感情をとりあえず押し込み
フィレアに挨拶をした
「はじめまして、ライアン副団長の部下でウルド・スティアードと申します」
「あら、じゃあ
あなたも青の騎士団なのね」
「はい」
「ウルドは私の先輩なのですよ」
ミュリエルが嬉しそうに話す
「なんだかミュリエル様、嬉しそうですね~」
ここの侍女メリーが皿やカトラリーを運んできた
「はい、みんなとお茶会ができてうれしいです」
少し歳をとったフィレアが嬉しそうに笑う
ウルドはほっとした
(元気そうだ)
みんなが席につき夫人の作ったタルトと紅茶をいただく
「美味しい!」
ミュリエルの笑顔が弾ける
「うれしいわ、あなたのそんな顔が見れて」
「いっそうちの娘にならない?ライアンはどうかしら?」
フィレアが言うとお茶を飲んでいたライアンが咳き込む
「母さん!」
「あら、いいじゃない!こんなかわいい娘ができたら毎日楽しいわ」
ウルドは唖然とした
人たらしのミュリエルはどこに行ってもこうなのか
「そういえば!ミュリエルが夫人の命を救ったと聞きましたが、何があったのですか?」
ウルドは話題を変えようと話を振る
「あの時はほんとうに助かりましたよ」
メリーばぁやが思い出したように語った
「庭で倒れた奥様を見つけて、颯爽とお姫様抱っこで運んでくださって、手当てしてくださいました」
「あれから奥様はどんどん元気になって」
ウルドはじっとミュリエルを見た
視線に気づいたミュリエルはニコッと笑い、ハッとした表情になる
「あ!私、用事があるの忘れていました!」
「ああ、テレージア様に会いに行くんだったな」
ライアンが言う
「はい、これで失礼します」
ミュリエルは立ち上がりウルドを見た
「行こう、ウルド」
ウルドは立ち上がり、夫人に深く会釈をしてミュリエルについて行った
アルディン邸を出て
2人は無言でライランド邸までの道を歩いていると
唐突にウルドが口を開いた
「ミュリエル、ありがとう」
「なにが?」
微笑みながら返す彼女に
ウルドは曖昧に笑うと
今度は真面目な顔をした
「ミュリエルは副団長のとこに嫁ぐのか?」
「えー?あの家族のことは大好きだけど、ライアンとは結婚しないよ」
「そうか」
(よかった)
ウルドは胸を撫で下ろす
(そうだ、俺は彼女が好きなのだ)
(レアードは記憶であって、俺は今ウルドなのだ)
テレージアとフリードと
別れて
あれから一ヵ月
思い出した断片的な記憶を整理して
やっと、母とウルドの時間が埋まり
親子らしく話せるようになってきていた
と言っても母は10年ほどクリスタルの中で眠っていたため
年も近く母と言うより姉という感じで、
育ててくれた義母の方がやはり母という感じだ
(母さんにはまた、新たな人生を歩んでほしい)
それとは別に、頭を悩ませるのは前世の記憶だ
テレージアに会い、前世の兄に会った事で頭の痛みとともに
いろいろな記憶が蘇った
金髪の美しい、前世の母
昔の青の騎士団の部下
兄フリード
テレージア
かつての家族
そして、苦楽を共にした
アレン
七色の剣
何より、自分が
あのレアード•アルディンだという
到底受け入れ難い記憶
自分がレアードだとすると
ライアン副団長は前世の自分の息子って事になる
「今からどんなふうに見れば、、接すればいいのか」
そもそも、自分がレアードだと
知るものはいない
自分の中に記憶があるだけで
自分はウルド•スティアードだ
それを確固たる存在とする思いが自分にはあった
今日は休日で騎士団は休みだ
ライランド邸へ向かう少し登った
石畳の道を歩く
昨日、仕事終わりにミュリエルがテレージアに会いに行くと言うので
自分も連れて行って欲しいと言うと
了承してくれた
道すがら、綺麗な庭園の邸宅の東屋に
綺麗な夫人が座って編み物をしている姿が見えた
その姿に
懐かしく、心が騒いだ
その人が振り向くと目が合う
その人は柔らかく微笑んで会釈をくれる
(ああ、、そうか、、ここはライアン副団長の、、、かつての自分の家だ)
懐かしく思うのはレアードの記憶
立ち去らなければ、ただの不審者だ
しかし、なかなか立ち去ることが出来なかった
その時
ポンと肩を叩かれた
振り返るとそこにミュリエルとライアンが立っている
「ウルド、もー来たの?早かったね」
ミュリエルが言うと
ライアンも声をかけた
「どうしたんだ?こんなところに立ち止まって」
ミュリエルの手には大きな紙袋があって
その袋には彼女の好きなスイーツ店のロゴがある
「テレージアにお土産買ってきた」
ミュリエルがニコっと笑うと
庭からうれしそうな声が聞こえた
「まぁ、ミュリエルじゃない。あらライアンもおかえり」
柔らかい優しい声にまた、心が反応する
「お久しぶりですフィレア様」
「ちょうど良かった!さっきりんごのタルトを作ったの食べて行かない?」
「え!いいんですか?」
ミュリエルは喜び、夫人に促されるまま
中に入っていく
「はぁ、母上にも困ったものだ、ミュリエルに命を救われてから彼女の事がお気に入りでな」
ライアンはため息をつくと
ウルドに振り返る
「ウルドも寄って行ってくれ、母上のタルトはなかなかうまいから」
ライアンが玄関に向かう
ウルドは胸の辺りの服をぎゅッと握った
(知っている)
(彼女の作る料理はすべて美味しかった)
死んだ後、家に帰ってくることができるなんて
まるで、自分のことのように懐かしく
涙が出そうだった
「ウルド?」
ライアンの呼ぶ声にさえ、感極まる
「今行きます」
中に入ると、前世の記憶とあまり変わらない家の中
昔、愛した女性と、今好きな女性が仲良くお茶の準備をしていた
ウルドはいろいろな感情をとりあえず押し込み
フィレアに挨拶をした
「はじめまして、ライアン副団長の部下でウルド・スティアードと申します」
「あら、じゃあ
あなたも青の騎士団なのね」
「はい」
「ウルドは私の先輩なのですよ」
ミュリエルが嬉しそうに話す
「なんだかミュリエル様、嬉しそうですね~」
ここの侍女メリーが皿やカトラリーを運んできた
「はい、みんなとお茶会ができてうれしいです」
少し歳をとったフィレアが嬉しそうに笑う
ウルドはほっとした
(元気そうだ)
みんなが席につき夫人の作ったタルトと紅茶をいただく
「美味しい!」
ミュリエルの笑顔が弾ける
「うれしいわ、あなたのそんな顔が見れて」
「いっそうちの娘にならない?ライアンはどうかしら?」
フィレアが言うとお茶を飲んでいたライアンが咳き込む
「母さん!」
「あら、いいじゃない!こんなかわいい娘ができたら毎日楽しいわ」
ウルドは唖然とした
人たらしのミュリエルはどこに行ってもこうなのか
「そういえば!ミュリエルが夫人の命を救ったと聞きましたが、何があったのですか?」
ウルドは話題を変えようと話を振る
「あの時はほんとうに助かりましたよ」
メリーばぁやが思い出したように語った
「庭で倒れた奥様を見つけて、颯爽とお姫様抱っこで運んでくださって、手当てしてくださいました」
「あれから奥様はどんどん元気になって」
ウルドはじっとミュリエルを見た
視線に気づいたミュリエルはニコッと笑い、ハッとした表情になる
「あ!私、用事があるの忘れていました!」
「ああ、テレージア様に会いに行くんだったな」
ライアンが言う
「はい、これで失礼します」
ミュリエルは立ち上がりウルドを見た
「行こう、ウルド」
ウルドは立ち上がり、夫人に深く会釈をしてミュリエルについて行った
アルディン邸を出て
2人は無言でライランド邸までの道を歩いていると
唐突にウルドが口を開いた
「ミュリエル、ありがとう」
「なにが?」
微笑みながら返す彼女に
ウルドは曖昧に笑うと
今度は真面目な顔をした
「ミュリエルは副団長のとこに嫁ぐのか?」
「えー?あの家族のことは大好きだけど、ライアンとは結婚しないよ」
「そうか」
(よかった)
ウルドは胸を撫で下ろす
(そうだ、俺は彼女が好きなのだ)
(レアードは記憶であって、俺は今ウルドなのだ)
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