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黒い指輪
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翌日、ミュリエルは再びロージーの元を訪れた
「え、来てない?」
昼過ぎ、まだウルドは来ていないと聞き、昨日会ったことをロージーに説明した
「そうか、、、そんなことが」
「ねぇ、ロージーはウルドがどういう理由で、、孤児院に来たか知っている?」
ロージーは首を振る
「私がウルドにあったのは彼が5才頃だったかな、、、
フレデリクから呼ばれて、見に行ったらウルドはすでに魔力暴走状態で、それを一緒に魔力を消費したのが最初だった」
「そう」
「でも、最初にウルドにあった時思ったことがあるんだ」
ロージーはミュリエルをじっと見る
「?」
「少し、アレンに似ていると思った」
ロージーの診療所を後にすると教会に急ぐ
礼拝堂の中にフレデリクはいない
ウルドがここに来た経緯を聞こうと思った
その後にウルドの様子を見に行こう
「まさか、ロージーのところに寄らずに騎士団にいったのかな」
でもここから近いし、スティアード伯爵邸にも寄ってみよう
誰もいない礼拝堂を奥に進み
ミュリエルは仕方なく孤児院に続く内扉を開いた
「すいません、誰かいらっしゃいますか?」
珍しい、誰もいないのかな お昼過ぎだから食堂かな?
ミュリエルになってからここに入るのは
初めてだ
コツコツと外の中庭に面した石の廊下を歩く
中庭、、全然変わってない
ここでみんなで遊んだっけ、、
その時ピリッと耳に違和感が
《ミュリエル、これで聞こえるのか!?》
デオの声が聞こえる
「何かあったの?」
《青の騎士達が街にむかってる》
《また竜が出たって》
「どこに?」
《下町の上空》
「え、近くじゃない」
ミュリエルは中庭に出ると上を見た
確かに、黒い竜が上空を旋回している
「魔力を感じないのはなんでなの?」
ミュリエルは集中して魔力を探る
感知能力が落ちているわけじゃない
範囲を広げると診療所にいるロージーの魔力だって感じられる
「まさか、感知できないように魔力を封じて近づいてきたの?」
「ー!、!」
「?」
なにか聞こえた!
女の人の悲鳴?孤児院の建物の中から聞こえた
ミュリエルは孤児院につながる廊下を駆け出し
中庭の通路を通って扉を開ける
「デオ、こっちに来れる?」
あの竜の相手を1人でするのはきつい
《殿下の守りが薄くなったら危ないんじゃないか?》
確かに、揺動なのかもしれない
デオと通信をしながら建物の中を走る
それもそうだけど
食堂にも誰もいない、昼過ぎ、ここでは少し遅めに昼食をとる
食卓に食事の用意があるが、手をつけていない、食べかけの皿も見えた
そのまま食堂を出て廊下を走る
ドクドクと嫌な予感がする
デオの通信が入っていて何か言っているけど
対応している暇がない
さらに居住スペースに続くドアをあけると
叫び声を上げたであろう修道女が階段下にうずくまっている
奥には扉があり、そこを塞ぐようにフレデリクが倒れていて手には子供が1人
その前には男がいてフレデリクと子供に剣を振りかざす
それを見たミュリエルは手のひらに魔力を集中させていた
そしてフレデリクを庇うように修道女が前に出て刃を振り下ろされる寸前
氷の刃を放ち男を壁に縫い止める、そこからパキパキっとその手足が凍り動けなくなる
ミュリエルは氷の攻撃に驚いて後ろによろめく修道女を抱きとめた
「よく叫んでくれたね」
おかげで異変に気づいて駆けつけることができた
よく見るとどこかで見たことのある女性だった
「、、、!」
アレンの記憶が蘇る
リン、、、!
アレンの一つ下の孤児院仲間、ここの修道女になっていたのか
「大丈夫ですか?」
「はい、お助けいただき感謝します」
リンを見ると頭から血が出ている
ミュリエルは手をかざすと、治癒魔法をつかい
彼女をゆっくり座らせた
「フレデリク院長!」
今度はフレデリクに歩み寄ると足元に血だまりができていた
フレデリクの抱える子供はブルブル震え泣きじゃくっているがどこも怪我をしていない
子供をゆっくり抱き上げ、リンへ手渡す
フレデリクの体を横たえると、背中からの出血がひどい
重症だ、命が危ない、、。
「子供を庇って背中を剣で切られたのです」
リンが子供を抱きしめて涙を流した
「大丈夫、心配しないで」
ミュリエルは耳飾りをとると
両手をかざし治療に魔力を込める
大きな光が迸り、血が止まり傷が塞がっていった
「おお、女神様」
リンが泣きながら手を組む
フレデリクが倒れていた後の扉には子供の部屋がある
中に何人かいたがみんな無事だった
「よかった」
間に合った
ミュリエルは氷漬けになった男の顔のすぐ側に剣を突き立てる
「ヒィっ!」
男の鼻先に剣の刃先が掠り血が一筋流れた
「なぜここを襲った、貧しい孤児院に盗む金などないけど?」
「頼まれたんだよ、魔力を持った男がいたら攫ってこいって」
「フードの男か?」
「そうだ」
「お前は魔力を持っていない、剣士だろう、どうやってその男の魔力を見るんだ?」
男は指を動かす
そこには黒い石のはまった指輪が装備されていた
「ここから出る黒い煙を辿って、、、」
ミュリエルは心の中で舌打ちした
「お前以外この指輪を渡されたものがいるのか?」
「わからない、道で声をかけられて、ただ雇われただけだ、許してくれ」
「人殺しをしようとする人間を許せるわけないだろう」
「デオ、教会に人を寄越して、フードの仲間を捕らえた」
《わかった》
ミュリエルは子供の中から一番年長の子を選ぶと
子供の前に跪く、子供の目線で
「名前は?」
「ハリス」
ミュリエルはハリスの頭を撫でる
「いい?今から鉄壁の防御魔法をかけてあげる、何があっても大丈夫だからロージーのところに行って彼を呼んで来て欲しい」
ハリスはコクンと頷く
「わかった、ロージーを呼んでくる」
騎士団が来るまでロージーに来てもらえればここは安全だ
防御魔法をハリスにかけると
ハリスは勢いよく外に走っていった
ミュリエルが立ち上がると、少しふらつき壁に手をついた
フレデリクの怪我にだいぶ魔力を消耗したがまだ倒れるわけにいかない
氷漬けにした男から指輪をもぎ取ると今度はリンの側に跪いた
「もう少ししたらロージーが来てくれる、フレデリク院長も、もう大丈夫だから少しの間子供達をお願いしていいかな?」
「はい」
いい子だ
ミュリエルはリンの頭を撫でる
自分よりだいぶ年下の少女に頭を撫でられたリンは不思議な感覚を思い出す
昔、こうやって頭を撫でてくれた人
アレン兄さん、
走り去っていく少女の背中が彼と重なって見えた気がした
ミュリエルは孤児院の中庭に出ると、空を仰ぐ
竜は未だ空の上、きっと指輪を持つものが魔力を持つ男を連れてくるのを待っているのかもしれない
なぜ、この孤児院に
ミュリエルは指輪はめる、その手を前に出すと指輪の石から黒いモヤが出て煙のように流れ、孤児院の中に入っていく
「中に魔力のあるという男なんていなかった」
それなのに孤児院の中に薄い煙が入っていく
「もしかして、魔力の残滓にも影響する?」
ウルドは元はこの孤児院の子供だ、最近もよく出入りしている
ミュリエルは教会をでると噴水の前まで走って、指輪をかざす
指輪の黒いモヤは濃く大きな煙となって噴水の、昨日ウルドが魔力を放出したあたりで漂っている
噴水のあたりから残滓を辿って、教会に入ったのか
はっとして、元の道を戻り、スティアード伯爵邸に登る坂を走った
指輪が反応して黒いモヤが先を漂っていく
やっぱりウルドが目的?
似た魔力を辿っている
私も、昨日感じた、似ているって
だとしたら
モヤを追って走ると、大きな屋敷に辿り着く
門は空いていて、門番が倒れている
今は先を急いだ
やはり、まだあいつに雇われたものがいるのか
正面玄関にいる男が剣を持っていた。執事服の男と揉みあっている
ミュリエルは足に風の魔法をかけ踏切り飛び上がると、
剣を抜き流れるように賊の剣を持った手を切り落とす
腕から血を流してのたうち回る男の腕と下半身を氷魔法で凍らせた
「大丈夫?他に侵入者はいない?」
「二人組でした、1人と揉みあっているうちに1人中に」
ミュリエルはそれを聞くと屋敷の中に急ぐ
広い屋敷だ指輪を見るとモヤは2階へ伸びていく
階段を駆け上がり煙を辿って行くと身なりのいい男が倒れていた
「伯爵!?」
「う、、、妻が、息子の部屋に」
ミュリエルは治癒魔法を彼にかけ、走る
バキバキと何かを破壊する音が聞こえ、女性の悲鳴がした
間に合え!!
廊下に大きな男が見えた
大きな斧を持った男がドアを破壊して中に入っていく
ミュリエルは体に強化魔法をかけその部屋に全力で走る
部屋に着くと男が夫人の腕を掴かもうと手を伸ばしていた
ウルドはベットで眠っている
ミュリエルは男の肩を掴むと全力でその肩を後ろへ引きずり
部屋の外へ投げようとしたが、男は想定より重く部屋の中央に転がっただけだった
もう力が思うように出せない!?
ミュリエルはベットにいる夫人とウルドを背に、大きな男相手に剣を構える
大きな男は指輪をしていて、持っていた斧を構えた
ミュリエルは魔力が残り少ない、ふらつく体を気力で支える
ここで気を失えば前世の二の舞だ
その時、ウルドを見た
「!」
ミュリエルは剣を一瞬、離し逆手に持ち変えると全力で男に投げる
大きな体の割に素早く、剣を男が避ける
その間にベットに近づきウルドの首のチェーンを外し、彼の手を握ると
自分の手を斧を振り近づく男に向けた
手に魔法陣が出現すると、無数の氷の刃が男に向かって放たれた
男の肩に、腕に、足にそれは刺さるが、男は止まらない
もっと、ウルドの魔力を
ミュリエルはウルドの手をにぎり
魔力をを取り込む
それを魔法陣に増幅し、さっきより大きな氷の刃を作ると
男に向かって放った
ドンと大きな氷の固りが勢いよく男にぶつかってドアの外、廊下の壁に激突し男の胴体を壁に氷で縫い付けた
パキパキっと氷は広がり、四肢を覆う氷が壁と一体化していく
そのまま動かなくなった男を見て、
ミュリエルはホッとすると床に崩れ落ちた
伯爵夫人がよろける足で、ミュリエルに触れる
「大丈夫?」
呼びかけても反応がない
ベット下の床に倒れ伏した少女を抱き起こし
血の気のないその顔を見て
夫人は叫んだ
「誰か?!来てちょうだい!」
回復した伯爵と執事がウルドの部屋に着くと
大男は廊下の壁に氷漬けにされて、夫人がさっきの少女を抱き叫ぶ
「早く、騎士団とお医者様を!」
「え、来てない?」
昼過ぎ、まだウルドは来ていないと聞き、昨日会ったことをロージーに説明した
「そうか、、、そんなことが」
「ねぇ、ロージーはウルドがどういう理由で、、孤児院に来たか知っている?」
ロージーは首を振る
「私がウルドにあったのは彼が5才頃だったかな、、、
フレデリクから呼ばれて、見に行ったらウルドはすでに魔力暴走状態で、それを一緒に魔力を消費したのが最初だった」
「そう」
「でも、最初にウルドにあった時思ったことがあるんだ」
ロージーはミュリエルをじっと見る
「?」
「少し、アレンに似ていると思った」
ロージーの診療所を後にすると教会に急ぐ
礼拝堂の中にフレデリクはいない
ウルドがここに来た経緯を聞こうと思った
その後にウルドの様子を見に行こう
「まさか、ロージーのところに寄らずに騎士団にいったのかな」
でもここから近いし、スティアード伯爵邸にも寄ってみよう
誰もいない礼拝堂を奥に進み
ミュリエルは仕方なく孤児院に続く内扉を開いた
「すいません、誰かいらっしゃいますか?」
珍しい、誰もいないのかな お昼過ぎだから食堂かな?
ミュリエルになってからここに入るのは
初めてだ
コツコツと外の中庭に面した石の廊下を歩く
中庭、、全然変わってない
ここでみんなで遊んだっけ、、
その時ピリッと耳に違和感が
《ミュリエル、これで聞こえるのか!?》
デオの声が聞こえる
「何かあったの?」
《青の騎士達が街にむかってる》
《また竜が出たって》
「どこに?」
《下町の上空》
「え、近くじゃない」
ミュリエルは中庭に出ると上を見た
確かに、黒い竜が上空を旋回している
「魔力を感じないのはなんでなの?」
ミュリエルは集中して魔力を探る
感知能力が落ちているわけじゃない
範囲を広げると診療所にいるロージーの魔力だって感じられる
「まさか、感知できないように魔力を封じて近づいてきたの?」
「ー!、!」
「?」
なにか聞こえた!
女の人の悲鳴?孤児院の建物の中から聞こえた
ミュリエルは孤児院につながる廊下を駆け出し
中庭の通路を通って扉を開ける
「デオ、こっちに来れる?」
あの竜の相手を1人でするのはきつい
《殿下の守りが薄くなったら危ないんじゃないか?》
確かに、揺動なのかもしれない
デオと通信をしながら建物の中を走る
それもそうだけど
食堂にも誰もいない、昼過ぎ、ここでは少し遅めに昼食をとる
食卓に食事の用意があるが、手をつけていない、食べかけの皿も見えた
そのまま食堂を出て廊下を走る
ドクドクと嫌な予感がする
デオの通信が入っていて何か言っているけど
対応している暇がない
さらに居住スペースに続くドアをあけると
叫び声を上げたであろう修道女が階段下にうずくまっている
奥には扉があり、そこを塞ぐようにフレデリクが倒れていて手には子供が1人
その前には男がいてフレデリクと子供に剣を振りかざす
それを見たミュリエルは手のひらに魔力を集中させていた
そしてフレデリクを庇うように修道女が前に出て刃を振り下ろされる寸前
氷の刃を放ち男を壁に縫い止める、そこからパキパキっとその手足が凍り動けなくなる
ミュリエルは氷の攻撃に驚いて後ろによろめく修道女を抱きとめた
「よく叫んでくれたね」
おかげで異変に気づいて駆けつけることができた
よく見るとどこかで見たことのある女性だった
「、、、!」
アレンの記憶が蘇る
リン、、、!
アレンの一つ下の孤児院仲間、ここの修道女になっていたのか
「大丈夫ですか?」
「はい、お助けいただき感謝します」
リンを見ると頭から血が出ている
ミュリエルは手をかざすと、治癒魔法をつかい
彼女をゆっくり座らせた
「フレデリク院長!」
今度はフレデリクに歩み寄ると足元に血だまりができていた
フレデリクの抱える子供はブルブル震え泣きじゃくっているがどこも怪我をしていない
子供をゆっくり抱き上げ、リンへ手渡す
フレデリクの体を横たえると、背中からの出血がひどい
重症だ、命が危ない、、。
「子供を庇って背中を剣で切られたのです」
リンが子供を抱きしめて涙を流した
「大丈夫、心配しないで」
ミュリエルは耳飾りをとると
両手をかざし治療に魔力を込める
大きな光が迸り、血が止まり傷が塞がっていった
「おお、女神様」
リンが泣きながら手を組む
フレデリクが倒れていた後の扉には子供の部屋がある
中に何人かいたがみんな無事だった
「よかった」
間に合った
ミュリエルは氷漬けになった男の顔のすぐ側に剣を突き立てる
「ヒィっ!」
男の鼻先に剣の刃先が掠り血が一筋流れた
「なぜここを襲った、貧しい孤児院に盗む金などないけど?」
「頼まれたんだよ、魔力を持った男がいたら攫ってこいって」
「フードの男か?」
「そうだ」
「お前は魔力を持っていない、剣士だろう、どうやってその男の魔力を見るんだ?」
男は指を動かす
そこには黒い石のはまった指輪が装備されていた
「ここから出る黒い煙を辿って、、、」
ミュリエルは心の中で舌打ちした
「お前以外この指輪を渡されたものがいるのか?」
「わからない、道で声をかけられて、ただ雇われただけだ、許してくれ」
「人殺しをしようとする人間を許せるわけないだろう」
「デオ、教会に人を寄越して、フードの仲間を捕らえた」
《わかった》
ミュリエルは子供の中から一番年長の子を選ぶと
子供の前に跪く、子供の目線で
「名前は?」
「ハリス」
ミュリエルはハリスの頭を撫でる
「いい?今から鉄壁の防御魔法をかけてあげる、何があっても大丈夫だからロージーのところに行って彼を呼んで来て欲しい」
ハリスはコクンと頷く
「わかった、ロージーを呼んでくる」
騎士団が来るまでロージーに来てもらえればここは安全だ
防御魔法をハリスにかけると
ハリスは勢いよく外に走っていった
ミュリエルが立ち上がると、少しふらつき壁に手をついた
フレデリクの怪我にだいぶ魔力を消耗したがまだ倒れるわけにいかない
氷漬けにした男から指輪をもぎ取ると今度はリンの側に跪いた
「もう少ししたらロージーが来てくれる、フレデリク院長も、もう大丈夫だから少しの間子供達をお願いしていいかな?」
「はい」
いい子だ
ミュリエルはリンの頭を撫でる
自分よりだいぶ年下の少女に頭を撫でられたリンは不思議な感覚を思い出す
昔、こうやって頭を撫でてくれた人
アレン兄さん、
走り去っていく少女の背中が彼と重なって見えた気がした
ミュリエルは孤児院の中庭に出ると、空を仰ぐ
竜は未だ空の上、きっと指輪を持つものが魔力を持つ男を連れてくるのを待っているのかもしれない
なぜ、この孤児院に
ミュリエルは指輪はめる、その手を前に出すと指輪の石から黒いモヤが出て煙のように流れ、孤児院の中に入っていく
「中に魔力のあるという男なんていなかった」
それなのに孤児院の中に薄い煙が入っていく
「もしかして、魔力の残滓にも影響する?」
ウルドは元はこの孤児院の子供だ、最近もよく出入りしている
ミュリエルは教会をでると噴水の前まで走って、指輪をかざす
指輪の黒いモヤは濃く大きな煙となって噴水の、昨日ウルドが魔力を放出したあたりで漂っている
噴水のあたりから残滓を辿って、教会に入ったのか
はっとして、元の道を戻り、スティアード伯爵邸に登る坂を走った
指輪が反応して黒いモヤが先を漂っていく
やっぱりウルドが目的?
似た魔力を辿っている
私も、昨日感じた、似ているって
だとしたら
モヤを追って走ると、大きな屋敷に辿り着く
門は空いていて、門番が倒れている
今は先を急いだ
やはり、まだあいつに雇われたものがいるのか
正面玄関にいる男が剣を持っていた。執事服の男と揉みあっている
ミュリエルは足に風の魔法をかけ踏切り飛び上がると、
剣を抜き流れるように賊の剣を持った手を切り落とす
腕から血を流してのたうち回る男の腕と下半身を氷魔法で凍らせた
「大丈夫?他に侵入者はいない?」
「二人組でした、1人と揉みあっているうちに1人中に」
ミュリエルはそれを聞くと屋敷の中に急ぐ
広い屋敷だ指輪を見るとモヤは2階へ伸びていく
階段を駆け上がり煙を辿って行くと身なりのいい男が倒れていた
「伯爵!?」
「う、、、妻が、息子の部屋に」
ミュリエルは治癒魔法を彼にかけ、走る
バキバキと何かを破壊する音が聞こえ、女性の悲鳴がした
間に合え!!
廊下に大きな男が見えた
大きな斧を持った男がドアを破壊して中に入っていく
ミュリエルは体に強化魔法をかけその部屋に全力で走る
部屋に着くと男が夫人の腕を掴かもうと手を伸ばしていた
ウルドはベットで眠っている
ミュリエルは男の肩を掴むと全力でその肩を後ろへ引きずり
部屋の外へ投げようとしたが、男は想定より重く部屋の中央に転がっただけだった
もう力が思うように出せない!?
ミュリエルはベットにいる夫人とウルドを背に、大きな男相手に剣を構える
大きな男は指輪をしていて、持っていた斧を構えた
ミュリエルは魔力が残り少ない、ふらつく体を気力で支える
ここで気を失えば前世の二の舞だ
その時、ウルドを見た
「!」
ミュリエルは剣を一瞬、離し逆手に持ち変えると全力で男に投げる
大きな体の割に素早く、剣を男が避ける
その間にベットに近づきウルドの首のチェーンを外し、彼の手を握ると
自分の手を斧を振り近づく男に向けた
手に魔法陣が出現すると、無数の氷の刃が男に向かって放たれた
男の肩に、腕に、足にそれは刺さるが、男は止まらない
もっと、ウルドの魔力を
ミュリエルはウルドの手をにぎり
魔力をを取り込む
それを魔法陣に増幅し、さっきより大きな氷の刃を作ると
男に向かって放った
ドンと大きな氷の固りが勢いよく男にぶつかってドアの外、廊下の壁に激突し男の胴体を壁に氷で縫い付けた
パキパキっと氷は広がり、四肢を覆う氷が壁と一体化していく
そのまま動かなくなった男を見て、
ミュリエルはホッとすると床に崩れ落ちた
伯爵夫人がよろける足で、ミュリエルに触れる
「大丈夫?」
呼びかけても反応がない
ベット下の床に倒れ伏した少女を抱き起こし
血の気のないその顔を見て
夫人は叫んだ
「誰か?!来てちょうだい!」
回復した伯爵と執事がウルドの部屋に着くと
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