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平凡な家

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百合は寝転がっている。
具体的に言えば、自分の家の自分のベッドで寝転がっている。

今日は土曜日。
つまりあの日――足をくすぐられて舐められた日の翌日。

「…~っ」

百合はあの時の感触を思い出してはゾクりとし、枕に顔を埋め他の事を考えようとした。

それでも思い出すのはあの感触。
未久と末樹というクラスで、いや学校中で5本の指に入るような美女に触れられ舐められた感触。
なにより末樹の濃厚なキスの感触。

くすぐったい。けど、気持ちいい…?

「ち…ちがっ…!」

部屋で一人で必死に自分の頭、そして足や口の感触と戦っていると部屋の扉から控えめなノックの音がした。

「百合、いいかい?」

「ん」

気の弱そうな男性の声、百合の父親の声。
その声の主は扉を開けずに扉越しに続ける。

「今週分、振り込まれていたよ…。ありがとう」

「うん」

「百合、嫌な思いとかしてないかい…?痛い思いとか辛い思いとか…こんな父親だけど何か少しでも力になれるならなりたいんだ」

「ううん、大丈夫」

「そうかい…」

力ない男性の声が少しの間聞こえなくなり、また続いた

「ごめんよ…」

「ううん、大丈夫。本当に痛い思いや嫌な思いなんてしてないよ」

「そうか…私も借金を返すためにもっと頑張るから」

少しだけ声が明るくなり、それじゃあと扉の前から去った気配を感じた。

百合は再び枕に顔を埋める。

良かった。
金曜日にあんな思いをしたかいがあった。
ちゃんと振り込まれていた。
ちゃんと――借金を返すためのお金の一部が――振り込まれていた。

…あんな思いってどんな思いなのだろう。
痛い思いや嫌な思いはしてないと言ったのは父親を元気づかせる為に言ったのは間違いない。
母が他界し、無気力となった父親が借金をどんどんかかえていったが、ようやく罪悪感が生まれたんだ。
少しでも元気づかせたい。

…でも痛い思いや嫌な思いをしていないというのは間違っていない気がした。
嫌だ、金曜日の放課後は怖い、憂鬱だ。けど、嫌ではない…。
嫌なの?嫌ではないの?
分からない。

嫌に決まってるじゃないか、
だって未久にあんなに足を舐められながら、
末樹にあんなにキスをされて―。

「っ…!」

また身体がゾクりとした。

落ち着かない。

今日は一日中。足をもぞもぞとしていた。
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