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足【告白】

足②

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西条 風花は退屈していた。

ほどほどに真面目に生活し、ほどほど不真面目に生活する。
そうすれば優等生でもなく不良でもなく、誰からもほどほどに愛される立場になった。
そんなほどほどな生活をしないといけない理由はなかった。
いつの間にかそんな生活が定着したから、そのままほどほどに生活していた、それだけ。

退屈だった。

そんなほどほどに愛される自分は本当の自分だろうか?
自分はどんな性格だっただろう?
女子高生の流行に無難に乗って、周りの目を気にして作り出した自分。
この自分が愛されたからなんだというのだろう。

退屈だった。

隣のクラスで告白があったらしい。
相手の身体を舐めて告白するらしい。
自分の愛情をそんな情けない姿で表現する。
うん、そんな恥ずかしくてかっこいい勇気は自分には無い。

少し面白そうだった。

自分が告白するなんて絶対考えられない。
ならもし自分が告白されたら?
ほどほどな自分に全力で向けられる好意。
それはどんな光景だろう?

面白い事が起きた。

クラスの男子に放課後呼び出された。
平静を装ってたかが丸わかりだった。
可愛いじゃないか。
今からこの男子が勇気を振り絞って自分を舐めてくるのだ。

「西条さん」

「ん?」

そしてその放課後。
自分に告白をしようとしている斎藤という男子が、目の前に立つ。

2人だけが残された教室。
真剣な顔つきで立っている斎藤に対して西城は足を組んで自席に座ったまま妖しく微笑む。

「俺、西条さんに一目惚れしてました。…それからずっと、西条さんの事――」

斎藤はゆっくり屈み、西条に顔を近付ける。
教室は全て締め切ると廊下から中が見えない仕組みになっている。
恐らくこういう告白シチュエーションを作りやすくする様に配慮されているのだろう。

だから今から10分間、2人の世界で告白が出来る。
10分間が勝負。

決死の想いで斎藤は西条の髪に手をかけ、小さな耳に――
「ねえ」

と思ったら止まった。
いや止められた。
一声で。

感情の分からない声掛けに思わず身体が静止してしまった。

「告白するのは良いんだけどさ。私の指定する場所を舐めてくれないかな?」

顔に戸惑いを隠せていない斎藤を見ながら、西条は申し訳なさそうに目を細めて微笑む。

「ていうか指定の場所以外舐めてきたら絶対に告白断るから」

憐れむ様に微笑む。

「私の指定する場所を舐めるなら前向きな返事したいな」

可愛く微笑む。

告白する際の舐める部位は、告白する側が決める。
告白される側に決定権も拒否権もない。
だけど今告白されようとしている西条の顔を見ると、
なぜか逆らってはいけない気がすると斎藤は感じ取っていた。

一先ず相手の耳に近付けていた顔を離す。

「えっと…その指定の場所って?」

「ん」

優しく微笑んだまま、人差し指で下を指す。
その指の先は組まれた足。
太ももでもない、脛でもない。
足首より下。足。

斎藤は一瞬理解できず、西条の顔を見る。

「ん」

楽しそうに微笑んでいた。

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