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1章
7【迷妄コーヒー】
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「なぁ相模、愛って信じるか?」
「……どうしたんですか、朝夷さん。ポエムにでも目覚めました?」
「俺は今、愛に溺れてるんだ……! もう窒息寸前なほどに!」
「は、はぁ……」
朝から廊下で夢見るポエマーもどきに出くわした相模は、厄日を確信した。相模はアグリ班に配属されたばかりの新人だ。
「えーと……丹生さん絡みですか? 何か良い事でもありました?」
「ああ……。りっちゃんが俺に応えてくれたんだ……」
「ええっ!? マジですか!? ついに!?」
「そうとも……ああ、ほら! 聞こえるだろう?」
「……え?」
「あ、ほらまた! 長門、大好き、って!」
「……」
相模は身の危険を感じた。
「あ! 阿久里班長! ちょ、こっち来てください!」
ナイスタイミングで廊下の角から現れた直属の上司、阿久里に助けを求める。
「なんだよ、朝から元気だなぁ。若いってのは羨ましいね、まったく」
「それどころじゃないんですよ! 朝夷さんが、なんか変です!」
「はあ? あの人はいつも変……ゲホンゴホン……通常運転だろ?」
「いやいやいや! やばいんですって本格的に!」
要領を得ない阿久里が首をかしげていると、朝夷が割って入ってきた。
「やぁ阿久里! お前は愛を信じるよな!」
「あー、はい。信じます」
「おお、心の友よ! ならお前にも聞こえるだろ? りっちゃんの愛の言葉が!」
「え? 今ですか?」
「そうとも! 今この瞬間もだよ!」
阿久里も身の危険を感じた。そして丹生の身の危険も感じた。
「あの……朝夷さん、ゆうべ徹夜しました?」
「いいや、しっかり8時間睡眠だ」
「じゃあ、なにかものすごーく良い夢を見たとか……?」
「夢? もちろん、夢の中でもりっちゃんは俺に優しい眼差しを向け、慈しんでくれたとも」
「……えっ、と……今日、璃津と会いました?」
「ハハッ、なにを言ってるんだ阿久里。会ったもなにも、ずっとここに居るじゃないか!」
そう言って朝夷は自らの隣の空白を抱き寄せる仕草をする。阿久里と相模は確信した。こいつ、まじでやばい、と。
何だかよく分からない即興曲をバリトンボイスで熱唱し始めた朝夷を横目に、阿久里は相模を廊下の隅へ引っ張った。
「おま……なに!? これ、なに!? なにごと!?」
「知りませんよ! さっき会った時には、すでにこうでした……」
「まじでおかしいってアレ!」
「だから言ったじゃないですか!」
あたふたする相模に、阿久里はいよいよ訳が分からずに眉間を揉む。
「ええ……? なんか、幻覚キノコみたいなもん食ったとか……まさかやばい薬に手を出したとか無いよな? 洒落にならんぞ……」
「さ、さすがにそれは無いと思いたいですけど……。しかし、アレはどう見ても普通じゃないですよね……」
原因究明は後にして、まず今後の対処を考えねば、と切り替えた。
「とにかく、あの状態でアイツに会わせたらやばい。大至急、璃津に電話しろ! 俺は朝夷さんを引き付けておくから!」
「は、はい!」
さすがは直属の上司と部下、連携プレーも卒なくこなす。阿久里が朝夷のご機嫌を取っているうちに、相模は驚くべきタップスピードで丹生に電話した。
【……ゔ……んー……】
「丹生調査官! 起こしてすみせん!」
【んん……誰ぇ……?】
「相模です! おはようございます!」
【うぅん……おは、ょ…………】
「あ、あの、丹生さん!? 起きてください! 丹生さん!」
丹生の寝起きの悪さは筋金入りである。そして、人に起こされるとよりいっそう不機嫌になる。
【ぅゔー……るっせぇなぁ、もぉ! なんだよ!】
「す、すみません! ちょっと緊急事態でして……っていうか、声どうしたんですか? ガサガサですけど、風邪ですか?」
【……ちがう。で、なに? 緊急事態って。俺、遅出なんだけど。さっき寝たとこなんだけど】
「それは本当に申し訳なく……。あの、実はちょっと……朝夷調査官の様子がおかしくてですね……」
【あ゙? んなのいつもの事だろうが】
「違うんですよ! かくかくしかじか──……」
【なにそれ、きもい】
一蹴された。
「……えっと、それでですね、今日あなたがたを会わせるのは危険だと、阿久里班長の判断で……」
【……うるせぇな。なにごとだ、璃津】
相模は一瞬、硬直した。確かに今、受話器の向こうから衣擦れ音と男性の声が、しかもかなり聞き覚えのある声がしたのだ。
「……あ、あのー……今の声って……」
【気にするな。話は分かった。上には俺から伝えとくから、お前らは被害を最小限に食い止めて。面倒なら鎮静剤でも麻酔でも暴力でも、何でも好きに使っていいぞ。じゃあな】
「は、はい……」
(伝えるって、直で!? 一緒にいる人って……やっぱりあの人なの!?)
とは恐ろしすぎて聞けず。丹生と連絡がついた事だけを報告する、空気の読める相模だった。
◇
「ねみぃー、だりぃー……。なんでこんな日に限って叩き起こされなきゃなんねぇんだよ、くそぅ……」
ヘッドボードへ携帯を投げ捨て、悪態をつく低血圧な丹生。その背中を抱きすくめてキスを降らせる男はもちろん、更科だ。
「どうした? 朝夷とか聞こえたが」
「んー……。アイツがおかしくなったって相模たちが騒いでる。なんか俺の幻覚? 幻聴? とかなんとか……」
「へえ、なるほど。研究部によく効いたって言っとかねぇとな。後で阿久里に詳細まとめさせるか」
「また妙な試験薬? 今度は何したの?」
「自白剤の抵抗付けに、同成分から軽い幻覚剤へ改良したんだと。ま、ただのジョークアイテムだ。後遺症も依存性も無いらしいし、ほっときゃそのうち戻る」
「らしいって……完全にブラックジョークだろ、それ。ま、どーでもいいけど。俺は睡眠を邪魔されてすこぶる不愉快。まだ2時間しか寝てねぇってのに……」
「遅出だからってはしゃぎすぎた天罰かもな」
「誰のせいだよ。しかも相模に聞かれるの分かってて声出したりして。あっちは今頃、ますます混乱してるぞ、絶対」
「勝手にさせときゃいい。薬が切れるのは、だいたい夕方ってとこか。それまでお前は自宅待機だからな」
「まじか、ラッキー」
「昼過ぎには起こすぞ。出勤前にメシ食おう」
「え、なに、まさか夕方まで仕事行かないつもり?」
「部下の非常事態につき保護、という大事な任務を遂行中だ」
「職権濫用すぎてびっくりしたわ……今に始まった事じゃないけども」
「そんな事より、もっとくっつけって。寒くて二度寝できねぇだろ」
と、修羅場な阿久里たちをよそに、甘ったるい雰囲気で布団をかぶる更科たちであった。
◇
「うぉうーうぉー! あいらーびゅー璃津ぅー!」
「朝夷さん! ちょっと静かにして下さいって!」
「なんだこれ。小鳥遊、どういう状況?」
「おはよう、神前。それがさっぱりで……。俺が出勤した時には、もうこうなってたから……」
「ついにキャパオーバーしちゃったか、朝夷さん」
「面白いから動画撮っとこ」
大声で熱唱し続ける朝夷を宥めようと奮闘する阿久里と相模を、出勤してきた神前、小鳥遊、郡司、椎奈、辻 米呂が遠巻きに眺めている。
「お前らも見てないで手伝えよ!」
「無理。怖すぎ」
椎奈以外の全員から即答され、阿久里はうんざりと天を仰ぐ。
「くそっ! なんなんだよもー!」
「阿久里、大丈夫か?」
「大丈夫! 葵は危ないから下がってて!」
「面倒だからさっさと璃津呼んで、現実見せれば良いんじゃないのか」
「神前……お前ってやつは、まじで鬼だな」
「ダメ、絶対! 余計な事するなよ、神前! もし璃津に何かあったら、俺らが部長に殺されるぞ!」
「それに丹生調査官は今日、遅出でして……まぁ不幸中の幸いですけど。とりあえず朝夷調査官が落ち着くまで、自宅待機になったそうです」
「そもそも、なんでこうなったかだよな。誰か知らないの?」
郡司の言葉に、生駒が「あっ」と小さく声を上げた。生駒も相模と同期の新人で、椎奈の直属の部下だ。
「そういえば、ラウンジでコーヒー飲まれてた時は普通でしたよ」
「生駒、ああなる前の朝夷さんと会ってたのか?」
「はい。俺、泊まりだったので。定時より少し前に出勤してこられて、普通に挨拶をして別れました。その後の事は分かりませんが……こうなったのは少なくとも、今朝8時以降だと思います」
「ラウンジ……コーヒー……。そう言えば確か、部長が新しいコーヒーメーカー置くって言ってたな」
神前の言葉に、その場の全員がこの異常事態の原因を把握した。
件のコーヒーメーカーにはすぐさま使用禁止の張り紙がされ、朝夷は阿久里と郡司によって医務室へ運ばれた。
「でも、いったい何のためにこんな事したんだろう、更科部長」
「さ、さぁ……? 何でだろうな、ハハハ……」
首をかしげる生駒に苦笑で答える相模の隣から、椎奈が神経質に眉をひそめて答えた。
「恐らく、我々が提携している製薬会社の試験薬だろう。うちの局長や部長は、抜き打ちで調査官たちにこういう嫌がらせをするんだ、昔から。薬品耐性のためだと分かってはいるが、きちんと訓練の説明と手順を踏んで貰わねば、迷惑以外の何物でもない。まったく……また業務に支障をきたすじゃないか」
不機嫌に溜め息をつく椎奈の説明に、自分たちに当たらなくて本当に良かった、と思う新人たちなのであった。
「……どうしたんですか、朝夷さん。ポエムにでも目覚めました?」
「俺は今、愛に溺れてるんだ……! もう窒息寸前なほどに!」
「は、はぁ……」
朝から廊下で夢見るポエマーもどきに出くわした相模は、厄日を確信した。相模はアグリ班に配属されたばかりの新人だ。
「えーと……丹生さん絡みですか? 何か良い事でもありました?」
「ああ……。りっちゃんが俺に応えてくれたんだ……」
「ええっ!? マジですか!? ついに!?」
「そうとも……ああ、ほら! 聞こえるだろう?」
「……え?」
「あ、ほらまた! 長門、大好き、って!」
「……」
相模は身の危険を感じた。
「あ! 阿久里班長! ちょ、こっち来てください!」
ナイスタイミングで廊下の角から現れた直属の上司、阿久里に助けを求める。
「なんだよ、朝から元気だなぁ。若いってのは羨ましいね、まったく」
「それどころじゃないんですよ! 朝夷さんが、なんか変です!」
「はあ? あの人はいつも変……ゲホンゴホン……通常運転だろ?」
「いやいやいや! やばいんですって本格的に!」
要領を得ない阿久里が首をかしげていると、朝夷が割って入ってきた。
「やぁ阿久里! お前は愛を信じるよな!」
「あー、はい。信じます」
「おお、心の友よ! ならお前にも聞こえるだろ? りっちゃんの愛の言葉が!」
「え? 今ですか?」
「そうとも! 今この瞬間もだよ!」
阿久里も身の危険を感じた。そして丹生の身の危険も感じた。
「あの……朝夷さん、ゆうべ徹夜しました?」
「いいや、しっかり8時間睡眠だ」
「じゃあ、なにかものすごーく良い夢を見たとか……?」
「夢? もちろん、夢の中でもりっちゃんは俺に優しい眼差しを向け、慈しんでくれたとも」
「……えっ、と……今日、璃津と会いました?」
「ハハッ、なにを言ってるんだ阿久里。会ったもなにも、ずっとここに居るじゃないか!」
そう言って朝夷は自らの隣の空白を抱き寄せる仕草をする。阿久里と相模は確信した。こいつ、まじでやばい、と。
何だかよく分からない即興曲をバリトンボイスで熱唱し始めた朝夷を横目に、阿久里は相模を廊下の隅へ引っ張った。
「おま……なに!? これ、なに!? なにごと!?」
「知りませんよ! さっき会った時には、すでにこうでした……」
「まじでおかしいってアレ!」
「だから言ったじゃないですか!」
あたふたする相模に、阿久里はいよいよ訳が分からずに眉間を揉む。
「ええ……? なんか、幻覚キノコみたいなもん食ったとか……まさかやばい薬に手を出したとか無いよな? 洒落にならんぞ……」
「さ、さすがにそれは無いと思いたいですけど……。しかし、アレはどう見ても普通じゃないですよね……」
原因究明は後にして、まず今後の対処を考えねば、と切り替えた。
「とにかく、あの状態でアイツに会わせたらやばい。大至急、璃津に電話しろ! 俺は朝夷さんを引き付けておくから!」
「は、はい!」
さすがは直属の上司と部下、連携プレーも卒なくこなす。阿久里が朝夷のご機嫌を取っているうちに、相模は驚くべきタップスピードで丹生に電話した。
【……ゔ……んー……】
「丹生調査官! 起こしてすみせん!」
【んん……誰ぇ……?】
「相模です! おはようございます!」
【うぅん……おは、ょ…………】
「あ、あの、丹生さん!? 起きてください! 丹生さん!」
丹生の寝起きの悪さは筋金入りである。そして、人に起こされるとよりいっそう不機嫌になる。
【ぅゔー……るっせぇなぁ、もぉ! なんだよ!】
「す、すみません! ちょっと緊急事態でして……っていうか、声どうしたんですか? ガサガサですけど、風邪ですか?」
【……ちがう。で、なに? 緊急事態って。俺、遅出なんだけど。さっき寝たとこなんだけど】
「それは本当に申し訳なく……。あの、実はちょっと……朝夷調査官の様子がおかしくてですね……」
【あ゙? んなのいつもの事だろうが】
「違うんですよ! かくかくしかじか──……」
【なにそれ、きもい】
一蹴された。
「……えっと、それでですね、今日あなたがたを会わせるのは危険だと、阿久里班長の判断で……」
【……うるせぇな。なにごとだ、璃津】
相模は一瞬、硬直した。確かに今、受話器の向こうから衣擦れ音と男性の声が、しかもかなり聞き覚えのある声がしたのだ。
「……あ、あのー……今の声って……」
【気にするな。話は分かった。上には俺から伝えとくから、お前らは被害を最小限に食い止めて。面倒なら鎮静剤でも麻酔でも暴力でも、何でも好きに使っていいぞ。じゃあな】
「は、はい……」
(伝えるって、直で!? 一緒にいる人って……やっぱりあの人なの!?)
とは恐ろしすぎて聞けず。丹生と連絡がついた事だけを報告する、空気の読める相模だった。
◇
「ねみぃー、だりぃー……。なんでこんな日に限って叩き起こされなきゃなんねぇんだよ、くそぅ……」
ヘッドボードへ携帯を投げ捨て、悪態をつく低血圧な丹生。その背中を抱きすくめてキスを降らせる男はもちろん、更科だ。
「どうした? 朝夷とか聞こえたが」
「んー……。アイツがおかしくなったって相模たちが騒いでる。なんか俺の幻覚? 幻聴? とかなんとか……」
「へえ、なるほど。研究部によく効いたって言っとかねぇとな。後で阿久里に詳細まとめさせるか」
「また妙な試験薬? 今度は何したの?」
「自白剤の抵抗付けに、同成分から軽い幻覚剤へ改良したんだと。ま、ただのジョークアイテムだ。後遺症も依存性も無いらしいし、ほっときゃそのうち戻る」
「らしいって……完全にブラックジョークだろ、それ。ま、どーでもいいけど。俺は睡眠を邪魔されてすこぶる不愉快。まだ2時間しか寝てねぇってのに……」
「遅出だからってはしゃぎすぎた天罰かもな」
「誰のせいだよ。しかも相模に聞かれるの分かってて声出したりして。あっちは今頃、ますます混乱してるぞ、絶対」
「勝手にさせときゃいい。薬が切れるのは、だいたい夕方ってとこか。それまでお前は自宅待機だからな」
「まじか、ラッキー」
「昼過ぎには起こすぞ。出勤前にメシ食おう」
「え、なに、まさか夕方まで仕事行かないつもり?」
「部下の非常事態につき保護、という大事な任務を遂行中だ」
「職権濫用すぎてびっくりしたわ……今に始まった事じゃないけども」
「そんな事より、もっとくっつけって。寒くて二度寝できねぇだろ」
と、修羅場な阿久里たちをよそに、甘ったるい雰囲気で布団をかぶる更科たちであった。
◇
「うぉうーうぉー! あいらーびゅー璃津ぅー!」
「朝夷さん! ちょっと静かにして下さいって!」
「なんだこれ。小鳥遊、どういう状況?」
「おはよう、神前。それがさっぱりで……。俺が出勤した時には、もうこうなってたから……」
「ついにキャパオーバーしちゃったか、朝夷さん」
「面白いから動画撮っとこ」
大声で熱唱し続ける朝夷を宥めようと奮闘する阿久里と相模を、出勤してきた神前、小鳥遊、郡司、椎奈、辻 米呂が遠巻きに眺めている。
「お前らも見てないで手伝えよ!」
「無理。怖すぎ」
椎奈以外の全員から即答され、阿久里はうんざりと天を仰ぐ。
「くそっ! なんなんだよもー!」
「阿久里、大丈夫か?」
「大丈夫! 葵は危ないから下がってて!」
「面倒だからさっさと璃津呼んで、現実見せれば良いんじゃないのか」
「神前……お前ってやつは、まじで鬼だな」
「ダメ、絶対! 余計な事するなよ、神前! もし璃津に何かあったら、俺らが部長に殺されるぞ!」
「それに丹生調査官は今日、遅出でして……まぁ不幸中の幸いですけど。とりあえず朝夷調査官が落ち着くまで、自宅待機になったそうです」
「そもそも、なんでこうなったかだよな。誰か知らないの?」
郡司の言葉に、生駒が「あっ」と小さく声を上げた。生駒も相模と同期の新人で、椎奈の直属の部下だ。
「そういえば、ラウンジでコーヒー飲まれてた時は普通でしたよ」
「生駒、ああなる前の朝夷さんと会ってたのか?」
「はい。俺、泊まりだったので。定時より少し前に出勤してこられて、普通に挨拶をして別れました。その後の事は分かりませんが……こうなったのは少なくとも、今朝8時以降だと思います」
「ラウンジ……コーヒー……。そう言えば確か、部長が新しいコーヒーメーカー置くって言ってたな」
神前の言葉に、その場の全員がこの異常事態の原因を把握した。
件のコーヒーメーカーにはすぐさま使用禁止の張り紙がされ、朝夷は阿久里と郡司によって医務室へ運ばれた。
「でも、いったい何のためにこんな事したんだろう、更科部長」
「さ、さぁ……? 何でだろうな、ハハハ……」
首をかしげる生駒に苦笑で答える相模の隣から、椎奈が神経質に眉をひそめて答えた。
「恐らく、我々が提携している製薬会社の試験薬だろう。うちの局長や部長は、抜き打ちで調査官たちにこういう嫌がらせをするんだ、昔から。薬品耐性のためだと分かってはいるが、きちんと訓練の説明と手順を踏んで貰わねば、迷惑以外の何物でもない。まったく……また業務に支障をきたすじゃないか」
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