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番外編~迷作文学~
【ラプンツェル⠀1】
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※シリアス(ホラー風味)。仄かな濡れ場あり。
むかしむかし、ある所に仲睦まじい夫婦がおりました。しかしこの夫婦には長年子どもができず、諦めかけていた頃、ようやく懐妊したことが分かって2人はたいへん喜びました。
夫婦の家の隣には、怖がって誰も近づかない恐ろしい魔法使いが住んでいました。魔法使いの家の庭は美しく手入れされており、花や野菜がみずみずしく育っています。
ある時、奥さんが窓からその庭を眺めていると、見事なノヂシャの実る苗床が目につきました。鮮やかな緑色で張りのある葉は、さぞかし新鮮で美味しかろうと思うと、にわかにそれが食べたいという欲求が込み上げてきます。
しかし、そこは魔法使いの庭。ただで譲ってくれるはずはないと思い、奥さんはぐっとこらえていました。
ところが、数日も経たずに我慢のあまり痩せ細り、顔色もどんどん悪くなっていきました。それを見た旦那さんはたいへん驚き、奥さんに事情を問いただしました。
「一体どうしたんだ黒蔓! 酷い顔色じゃないか!」
「ゔぅ……網代……。もう限界だ……っ」
「なんだ!? どこか痛いのか!?」
「魔法使いのノヂシャだ! アレがどうしても食いたい! あのノヂシャが食えないと、俺はたぶん死ぬ」
「ノヂシャ……? そんなにやつれるほど食べたいとは……。じゃあ、それを取ってくれば良いんだな? よし、待ってろ!」
優しい旦那さんは夜中にこっそり魔法使いの庭に忍び込み、ノヂシャを取ってきて奥さんに食べさせてあげました。しかし、奥さんの欲求はおさまるどころか、あまりの美味しさにまた食べたくなってしまい、衝動は激化してついに寝込んでしまいます。
見かねた旦那さんが再び魔法使いの庭へ出向き、ノヂシャを取っていたところを、とうとう魔法使いに見つかってしまいました。
「おや、お隣の旦那さん。夜更けに畑泥棒とは、落ちたものですねぇ」
「も、申し訳ない……。妊娠した妻が、陸奥さんのノヂシャがどうしても食べたいと言うので……」
「ほう、ご懐妊なされたんですか。それはおめでとうございます」
「刈り取ってしまいましたが、これはお返ししますので……どうか見逃していただけませんか?」
「いいえ、それは持って帰っておあげなさい。これからも奥様が食べたい時に、食べたいだけ取って構いませんよ」
「ほ、本当ですか!? 有難うございます!」
「ただし、ひとつ条件があります」
「……と、おっしゃいますと……?」
「お2人のお子が産まれた際には、私がその子をいただきます」
「そ、そんな……ッ!!」
「嫌ならば結構ですよ。しかし、そこまでこのノヂシャを欲している奥様であれば、食べられないとなるとどうなるでしょうねぇ。お子も無事に産まれるかどうか……」
にやりと口角を吊り上げる魔法使いの言葉と、家で夜も眠れないほどノヂシャを求める妻とを思い比べ、旦那さんはついにその首を縦に振ったのでした。
「……妻の体あってのものだ……しかたない……。分かりました、その条件をのみましょう」
「それは良かった。では、好きに持っておゆきなさい」
そうして、奥さんは無事に元気な赤ん坊を産むことができたのです。すると、そこへ隣の魔法使いが訪ねて来ました。
「お約束通り、その子をいただきに参りました」
「あ、ああ……」
「くそ……ッ! あの時、ノヂシャの誘惑に勝てなかったばかりに……っ!」
「思ったとおり可愛らしい。いや……これは予想以上だ」
すやすやと眠る赤ん坊を抱き上げた魔法使いは、満足そうに口元を歪めて笑いました。
「この子の愛称は、ノヂシャという意味のラプンツェルとしよう」
そしてラプンツェルは魔法使いによって大切に育てられ、美しく成長すると高い塔の上へ閉じ込められてしまいました。階段は無く、あるのはてっぺんの部屋に窓がひとつだけです。
そこでラプンツェルは日がな1日、歌を歌って通りかかる旅人や狩人を誘い、長く伸ばした髪を垂らして部屋へ引き入れ、情事に耽る日々を送っていました。そして必ず、事が終わると男たちを窓から突き落とし、殺してしまうのです。
そうやって魔法使いに贄をささげること。それが魔法使いから言いつけられたラプンツェルの役目でした。
男たちを始末した夜は、決まって魔法使いがどんなふうに抱かれたかしつこく尋ね、その行為を辿ります。
「……今日は随分、シーツが乱れてるじゃないか。そんなに激しかったのか?」
「んっ……そう、かも……」
「さぁ、どこをどう触られたか言ってみろ。こうか? それともこうか?」
「ア、あぁッ! ぃ、や……少し……休ませて……っ」
「駄目だ、それじゃあ意味が無い。抱き潰されたお前を抱くことこそ、最高に俺を昂らせるんだからな」
「……ッうぁ……ン! んんっ……!」
「お前は俺の小鳥だよ。可愛い可愛い、籠の鳥だ」
魔法使いの行為は、誘い込むどの男よりも的確で巧みで、高められ続ける快感は快楽を通り越して痛みを伴うほどでした。ラプンツェルは白い喉を仰け反らせて喘ぎながら魔法使いにしがみ付き、与えられる淫楽に呑まれ、思考もままならないほどどろどろに溶かされるのです。
来る日も来る日も、あらゆる男に犯され続け、ラプンツェルはそんな日々を疑問に思う余裕も無いのでした。
むかしむかし、ある所に仲睦まじい夫婦がおりました。しかしこの夫婦には長年子どもができず、諦めかけていた頃、ようやく懐妊したことが分かって2人はたいへん喜びました。
夫婦の家の隣には、怖がって誰も近づかない恐ろしい魔法使いが住んでいました。魔法使いの家の庭は美しく手入れされており、花や野菜がみずみずしく育っています。
ある時、奥さんが窓からその庭を眺めていると、見事なノヂシャの実る苗床が目につきました。鮮やかな緑色で張りのある葉は、さぞかし新鮮で美味しかろうと思うと、にわかにそれが食べたいという欲求が込み上げてきます。
しかし、そこは魔法使いの庭。ただで譲ってくれるはずはないと思い、奥さんはぐっとこらえていました。
ところが、数日も経たずに我慢のあまり痩せ細り、顔色もどんどん悪くなっていきました。それを見た旦那さんはたいへん驚き、奥さんに事情を問いただしました。
「一体どうしたんだ黒蔓! 酷い顔色じゃないか!」
「ゔぅ……網代……。もう限界だ……っ」
「なんだ!? どこか痛いのか!?」
「魔法使いのノヂシャだ! アレがどうしても食いたい! あのノヂシャが食えないと、俺はたぶん死ぬ」
「ノヂシャ……? そんなにやつれるほど食べたいとは……。じゃあ、それを取ってくれば良いんだな? よし、待ってろ!」
優しい旦那さんは夜中にこっそり魔法使いの庭に忍び込み、ノヂシャを取ってきて奥さんに食べさせてあげました。しかし、奥さんの欲求はおさまるどころか、あまりの美味しさにまた食べたくなってしまい、衝動は激化してついに寝込んでしまいます。
見かねた旦那さんが再び魔法使いの庭へ出向き、ノヂシャを取っていたところを、とうとう魔法使いに見つかってしまいました。
「おや、お隣の旦那さん。夜更けに畑泥棒とは、落ちたものですねぇ」
「も、申し訳ない……。妊娠した妻が、陸奥さんのノヂシャがどうしても食べたいと言うので……」
「ほう、ご懐妊なされたんですか。それはおめでとうございます」
「刈り取ってしまいましたが、これはお返ししますので……どうか見逃していただけませんか?」
「いいえ、それは持って帰っておあげなさい。これからも奥様が食べたい時に、食べたいだけ取って構いませんよ」
「ほ、本当ですか!? 有難うございます!」
「ただし、ひとつ条件があります」
「……と、おっしゃいますと……?」
「お2人のお子が産まれた際には、私がその子をいただきます」
「そ、そんな……ッ!!」
「嫌ならば結構ですよ。しかし、そこまでこのノヂシャを欲している奥様であれば、食べられないとなるとどうなるでしょうねぇ。お子も無事に産まれるかどうか……」
にやりと口角を吊り上げる魔法使いの言葉と、家で夜も眠れないほどノヂシャを求める妻とを思い比べ、旦那さんはついにその首を縦に振ったのでした。
「……妻の体あってのものだ……しかたない……。分かりました、その条件をのみましょう」
「それは良かった。では、好きに持っておゆきなさい」
そうして、奥さんは無事に元気な赤ん坊を産むことができたのです。すると、そこへ隣の魔法使いが訪ねて来ました。
「お約束通り、その子をいただきに参りました」
「あ、ああ……」
「くそ……ッ! あの時、ノヂシャの誘惑に勝てなかったばかりに……っ!」
「思ったとおり可愛らしい。いや……これは予想以上だ」
すやすやと眠る赤ん坊を抱き上げた魔法使いは、満足そうに口元を歪めて笑いました。
「この子の愛称は、ノヂシャという意味のラプンツェルとしよう」
そしてラプンツェルは魔法使いによって大切に育てられ、美しく成長すると高い塔の上へ閉じ込められてしまいました。階段は無く、あるのはてっぺんの部屋に窓がひとつだけです。
そこでラプンツェルは日がな1日、歌を歌って通りかかる旅人や狩人を誘い、長く伸ばした髪を垂らして部屋へ引き入れ、情事に耽る日々を送っていました。そして必ず、事が終わると男たちを窓から突き落とし、殺してしまうのです。
そうやって魔法使いに贄をささげること。それが魔法使いから言いつけられたラプンツェルの役目でした。
男たちを始末した夜は、決まって魔法使いがどんなふうに抱かれたかしつこく尋ね、その行為を辿ります。
「……今日は随分、シーツが乱れてるじゃないか。そんなに激しかったのか?」
「んっ……そう、かも……」
「さぁ、どこをどう触られたか言ってみろ。こうか? それともこうか?」
「ア、あぁッ! ぃ、や……少し……休ませて……っ」
「駄目だ、それじゃあ意味が無い。抱き潰されたお前を抱くことこそ、最高に俺を昂らせるんだからな」
「……ッうぁ……ン! んんっ……!」
「お前は俺の小鳥だよ。可愛い可愛い、籠の鳥だ」
魔法使いの行為は、誘い込むどの男よりも的確で巧みで、高められ続ける快感は快楽を通り越して痛みを伴うほどでした。ラプンツェルは白い喉を仰け反らせて喘ぎながら魔法使いにしがみ付き、与えられる淫楽に呑まれ、思考もままならないほどどろどろに溶かされるのです。
来る日も来る日も、あらゆる男に犯され続け、ラプンツェルはそんな日々を疑問に思う余裕も無いのでした。
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