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番外編~迷作文学~
【白雪姫 1】
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迷作文学
~もしも万華郷メンバーが童話の登場人物になったら~
※ご注意
グリム童話の原作に近い物語をモデルにしておりますので少々残酷、過激な表現がございます。出産設定がありますが女体化ではございません。ゆるいパロディとしてお楽しみ頂ければ幸いです。
【白雪姫 1】
むかし、むかし。とある国の王妃の部屋には、金縁の大きな魔法の鏡があった。王妃の日課は、鏡の精霊へこう尋ねることだった。
「おい鶴城、世界で1番美しいのは誰だ?」
「もちろん、王妃である黒蔓様です。しかし、残念ながらそれも残りわずかのこと……」
「はあ? なんでだよ」
「実は、数ヶ月と経たぬうちに世界で最も美しいのは朱理姫様となるのです……」
「へー。まぁ当然だよな。あいつはこの俺の子なんだから」
「え? いや、あのぉ……」
「なんだよ、文句あんのか? 王でさえ朱理の寝込み襲ってたレベルだぞ。あれはもう天然の魔性だろ」
「王様まじか!! 確かにあの魔性ぶりには俺もクラっと……じゃなくて! ここで激怒していただかねば話が成り立ちませんよ! なに旦那の近親相姦まで容認してるんですか!」
「容認するワケねぇだろ。気付いて速攻、殺したわ」
「あー、やっぱり普通の病死じゃなかったんだな、王様……。と、とにかく! 王妃様は常にナンバーワンでなくてはならないんです! じゃないと魔力が衰えて国が大惨事になりますよ!」
王妃は眉根を寄せて舌打ちした後、諦めの嘆息とともに再び鏡へ問う。
「面倒くせぇなぁ。なら、俺が1番であり続けるにはどうすれば良いんだ?」
「朱理姫の心臓を食すのです。さすれば黒蔓様の美貌は永遠の物となるでしょう」
「カニバリズムで、しかも実の子って正気か? お前、小綺麗な顔してとんだイカレ野郎だな」
「し、仕方ないじゃないですか! それしか方法がないんですから! 断じて俺の趣味じゃありませんよ!」
「ったく……分かった、分かった。おい、誰か棕櫚を呼んでこい」
数分後。呼び付けられた猟師が王妃の部屋へやって来た。
「御用でしょうか、王妃様」
「おう。お前、ちょっと朱理そそのかして森にでも連れて行け。んで、心臓くり抜いて持って来い」
「な──ッ!? あ、あんなに大切にしてらしたのに、突然なぜ……!?」
「端的に言うと、あいつが俺より美しくなるからだ」
「ええ……? そんなしょうもない理由で殺すなんて、いくらなんでも酷すぎますよ! 姫が可哀想です!」
「そうしなきゃ国が滅ぶって鶴城が言うんだから仕方ねぇだろ。俺だって嫌だわ」
「で、でも……姫の心臓をくり抜くなんて、俺にはとても出来ません!」
「ははぁ。じゃ、お前もいっとくか、毒林檎。正確に言えば入ってるのは毒じゃないが、毒のほうがマシだったと思う羽目になるぞ」
「すぐに新鮮な心臓を持ち帰ってみせます! お任せ下さい!」
「それで良い。言うまでもないが、失敗や裏切りは許さないからな」
「し、承知致しました……」
◇
そして小1時間後。爽やかな青空に小鳥が囀るうららかな森には、久しぶりの外出にご機嫌な白雪姫と、沈痛な面持ちの猟師がいた。
「うはー、超良い天気ー。棕櫚が散歩に誘ってくれるなんて嬉しいなぁ」
「……」
「棕櫚? どしたの、黙りこくって」
「……姫、申し訳ございませんっ︎!!」
「ぅおわッ!!!! えっ、なに⁉︎ いきなり切りつけて来るとか聞いてないし! 怖っ!」
「くっ……なんでそんな重そうなドレスで俊敏に動けるんだ……っ」
「ちょ、なにごと? 俺、殺意湧くほど怒らせるようなことした? とにかく一旦、ナイフ置こうぜ。落ち着いて話し合おう、な?」
「……いえ……貴方は何も悪くありません……。すべては王妃様のご命令なのです……」
「王妃様って……どう言うこと?」
「実は、かくかくしかじか……」
猟師から事情を聞かされた白雪姫は、髪をぐしゃぐしゃやりながら深く溜め息をついた。
「なるほどねぇ……。そういえば最近、何かにつけて視力が落ちただの、白髪が増えただの、肩が上がらないだの愚痴ってたわ。やっぱ相当、気にしてたんだなぁ……」
「しかし……私には貴方を手にかけることなど出来ません! どうか、このまま森の奥へお逃げ下さい!」
「え? いや良いよ、そういう事情なら殺されても。突然ナイフ振り回すからびっくりして避けたけど、次はちゃんと刺されてやるから」
「は?」
けろりとそんなことを言ってのける白雪姫に、唖然とする猟師。
「殺すんだろ? さぁ、どんと来い!」
「ちょちょちょ、待って待って! だからそれじゃ話が進まないんだって!」
「えー、だって黒蔓さんがそこまで悩んでるなんて、ほっとけないよぉ。俺の心臓ひとつで解決するなら、安いもんじゃん?」
「すんごい自己犠牲精神! 尊い! でも、これじゃただのスプラッタ寸劇になっちゃうからダメ! ほら、早く逃げて!」
「ええー……。でも俺、ほとんど城から出たことないし、森の奥とかやばいって、まじで。今殺されなくても絶対、のたれ死ぬって。無駄死にするくらいなら、黒蔓さんに心臓あげたほうが建設的だろ?」
「この箱入り息子さんめ! なんとか生き抜いてよ、そこは! ほらほら、さっさと行かないと襲っちゃうよ? 姫を抱く代わりに逃がすってパターンもあるんだからね」
「別に良いぜ、棕櫚になら抱かれても」
「やだもー、好き。……じゃなくて! こんな話ししてたらますます辛くなるじゃんかぁ! お願いだから早く行ってくれよぉお!」
「わ、分かったから泣くなって……。はぁ……面倒くせぇ話だなぁ……」
と、ぶつくさ言いながら緩慢に森の奥へと逃げて行く白雪姫に、いろんな意味で嘆息する猟師なのであった。
◇
さらに小一時間後。王妃の部屋にて──
「し、失礼致します……」
「おう、早かったじゃねーか。もう少し手こずると思ったっていうか、返討ちにされる予定だったのに」
「どういうこと⁉︎ いったい何がしたいんですか、貴方︎!」
「わめくなよ、うるせぇな。で? 心臓は取ってきたのか」
「は、はい。こちらに……(イノシシのだけど)」
猟師がささげ持つ銀の皿に乗せられた心臓を一瞥すると、王妃は思い切り顔をしかめた。
「うーわ、まじでやりやがった。お前やばいな。殺すだけならともかく、心臓えぐるとか狂気がすぎるぞ」
「だから俺は断ったじゃないですか! 脅迫してやらせたの王妃様でしょ!?」
「まぁいい、ご苦労。これ食えば万事解決なんだよな? 鶴城」
「え、ええ……左様で……ゔっ、おぇ──」
「きったねぇなー。俺が我慢してんのに、言い出したてめーが嘔吐いてんじゃねぇよ」
「す、すみませ……ゥッ……いざ本物を見ると、やっぱキツいです……」
「ったく、それ食わなきゃならん俺の身にもなれっての。さっさと終わらせるぞ、こんなくそ物語」
王妃は苦々しく顔を歪めつつ、ちゃっかり心臓は調理させるのであった。
~もしも万華郷メンバーが童話の登場人物になったら~
※ご注意
グリム童話の原作に近い物語をモデルにしておりますので少々残酷、過激な表現がございます。出産設定がありますが女体化ではございません。ゆるいパロディとしてお楽しみ頂ければ幸いです。
【白雪姫 1】
むかし、むかし。とある国の王妃の部屋には、金縁の大きな魔法の鏡があった。王妃の日課は、鏡の精霊へこう尋ねることだった。
「おい鶴城、世界で1番美しいのは誰だ?」
「もちろん、王妃である黒蔓様です。しかし、残念ながらそれも残りわずかのこと……」
「はあ? なんでだよ」
「実は、数ヶ月と経たぬうちに世界で最も美しいのは朱理姫様となるのです……」
「へー。まぁ当然だよな。あいつはこの俺の子なんだから」
「え? いや、あのぉ……」
「なんだよ、文句あんのか? 王でさえ朱理の寝込み襲ってたレベルだぞ。あれはもう天然の魔性だろ」
「王様まじか!! 確かにあの魔性ぶりには俺もクラっと……じゃなくて! ここで激怒していただかねば話が成り立ちませんよ! なに旦那の近親相姦まで容認してるんですか!」
「容認するワケねぇだろ。気付いて速攻、殺したわ」
「あー、やっぱり普通の病死じゃなかったんだな、王様……。と、とにかく! 王妃様は常にナンバーワンでなくてはならないんです! じゃないと魔力が衰えて国が大惨事になりますよ!」
王妃は眉根を寄せて舌打ちした後、諦めの嘆息とともに再び鏡へ問う。
「面倒くせぇなぁ。なら、俺が1番であり続けるにはどうすれば良いんだ?」
「朱理姫の心臓を食すのです。さすれば黒蔓様の美貌は永遠の物となるでしょう」
「カニバリズムで、しかも実の子って正気か? お前、小綺麗な顔してとんだイカレ野郎だな」
「し、仕方ないじゃないですか! それしか方法がないんですから! 断じて俺の趣味じゃありませんよ!」
「ったく……分かった、分かった。おい、誰か棕櫚を呼んでこい」
数分後。呼び付けられた猟師が王妃の部屋へやって来た。
「御用でしょうか、王妃様」
「おう。お前、ちょっと朱理そそのかして森にでも連れて行け。んで、心臓くり抜いて持って来い」
「な──ッ!? あ、あんなに大切にしてらしたのに、突然なぜ……!?」
「端的に言うと、あいつが俺より美しくなるからだ」
「ええ……? そんなしょうもない理由で殺すなんて、いくらなんでも酷すぎますよ! 姫が可哀想です!」
「そうしなきゃ国が滅ぶって鶴城が言うんだから仕方ねぇだろ。俺だって嫌だわ」
「で、でも……姫の心臓をくり抜くなんて、俺にはとても出来ません!」
「ははぁ。じゃ、お前もいっとくか、毒林檎。正確に言えば入ってるのは毒じゃないが、毒のほうがマシだったと思う羽目になるぞ」
「すぐに新鮮な心臓を持ち帰ってみせます! お任せ下さい!」
「それで良い。言うまでもないが、失敗や裏切りは許さないからな」
「し、承知致しました……」
◇
そして小1時間後。爽やかな青空に小鳥が囀るうららかな森には、久しぶりの外出にご機嫌な白雪姫と、沈痛な面持ちの猟師がいた。
「うはー、超良い天気ー。棕櫚が散歩に誘ってくれるなんて嬉しいなぁ」
「……」
「棕櫚? どしたの、黙りこくって」
「……姫、申し訳ございませんっ︎!!」
「ぅおわッ!!!! えっ、なに⁉︎ いきなり切りつけて来るとか聞いてないし! 怖っ!」
「くっ……なんでそんな重そうなドレスで俊敏に動けるんだ……っ」
「ちょ、なにごと? 俺、殺意湧くほど怒らせるようなことした? とにかく一旦、ナイフ置こうぜ。落ち着いて話し合おう、な?」
「……いえ……貴方は何も悪くありません……。すべては王妃様のご命令なのです……」
「王妃様って……どう言うこと?」
「実は、かくかくしかじか……」
猟師から事情を聞かされた白雪姫は、髪をぐしゃぐしゃやりながら深く溜め息をついた。
「なるほどねぇ……。そういえば最近、何かにつけて視力が落ちただの、白髪が増えただの、肩が上がらないだの愚痴ってたわ。やっぱ相当、気にしてたんだなぁ……」
「しかし……私には貴方を手にかけることなど出来ません! どうか、このまま森の奥へお逃げ下さい!」
「え? いや良いよ、そういう事情なら殺されても。突然ナイフ振り回すからびっくりして避けたけど、次はちゃんと刺されてやるから」
「は?」
けろりとそんなことを言ってのける白雪姫に、唖然とする猟師。
「殺すんだろ? さぁ、どんと来い!」
「ちょちょちょ、待って待って! だからそれじゃ話が進まないんだって!」
「えー、だって黒蔓さんがそこまで悩んでるなんて、ほっとけないよぉ。俺の心臓ひとつで解決するなら、安いもんじゃん?」
「すんごい自己犠牲精神! 尊い! でも、これじゃただのスプラッタ寸劇になっちゃうからダメ! ほら、早く逃げて!」
「ええー……。でも俺、ほとんど城から出たことないし、森の奥とかやばいって、まじで。今殺されなくても絶対、のたれ死ぬって。無駄死にするくらいなら、黒蔓さんに心臓あげたほうが建設的だろ?」
「この箱入り息子さんめ! なんとか生き抜いてよ、そこは! ほらほら、さっさと行かないと襲っちゃうよ? 姫を抱く代わりに逃がすってパターンもあるんだからね」
「別に良いぜ、棕櫚になら抱かれても」
「やだもー、好き。……じゃなくて! こんな話ししてたらますます辛くなるじゃんかぁ! お願いだから早く行ってくれよぉお!」
「わ、分かったから泣くなって……。はぁ……面倒くせぇ話だなぁ……」
と、ぶつくさ言いながら緩慢に森の奥へと逃げて行く白雪姫に、いろんな意味で嘆息する猟師なのであった。
◇
さらに小一時間後。王妃の部屋にて──
「し、失礼致します……」
「おう、早かったじゃねーか。もう少し手こずると思ったっていうか、返討ちにされる予定だったのに」
「どういうこと⁉︎ いったい何がしたいんですか、貴方︎!」
「わめくなよ、うるせぇな。で? 心臓は取ってきたのか」
「は、はい。こちらに……(イノシシのだけど)」
猟師がささげ持つ銀の皿に乗せられた心臓を一瞥すると、王妃は思い切り顔をしかめた。
「うーわ、まじでやりやがった。お前やばいな。殺すだけならともかく、心臓えぐるとか狂気がすぎるぞ」
「だから俺は断ったじゃないですか! 脅迫してやらせたの王妃様でしょ!?」
「まぁいい、ご苦労。これ食えば万事解決なんだよな? 鶴城」
「え、ええ……左様で……ゔっ、おぇ──」
「きったねぇなー。俺が我慢してんのに、言い出したてめーが嘔吐いてんじゃねぇよ」
「す、すみませ……ゥッ……いざ本物を見ると、やっぱキツいです……」
「ったく、それ食わなきゃならん俺の身にもなれっての。さっさと終わらせるぞ、こんなくそ物語」
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