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6章【連鎖的に解明される、犠牲的な後輩への想い】
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しおりを挟む矢車と茨田の仲が急速に深まっているのは、松葉瀬も知っている。
そんなこと、同じ事務所にいたら誰だって気付くことだ。
「いえ、寂しくはありませんよ。……ただ、茨田課長に迷惑をかけていないかどうかは、心配ですね」
「保護者の目ですね! 萌える~!」
よく分からないポイントで悶えられたが、松葉瀬は笑顔でスルー。
「でも、本当に突然だったよねぇ……? 確か、茨田課長が自分のことをオメガだってカミングアウトしてから、だよね?」
「そうそう! あれかな? ヤッパリ、シンパシーみたいなの感じるのかな?」
「う~ん……ベータの私たちにはよく分かんない感覚だね」
女性職員が盛り上がる中、松葉瀬は内心……とても、冷ややかだった。
何となく、矢車と茨田の仲がいいという話は……聞きたくない。
(茨田は俺のことを警戒してるからな。そんな奴の話題、聞きたくねェに決まってんだろ)
そう思い、松葉瀬はコンビニ弁当を食べ進める。
けれど、女性職員の話は終わらない。
「でもでも、茨田課長って不思議だよね? オメガに見えないって言うか……何か、全然ダメな感じに見えないよね?」
「うん、見えない! 変わらず仕事もできるし、オメガって言うよりはアルファな感じ!」
勿論。
この手の話題は……松葉瀬にとって、地雷だ。
(当たり前だろォが。オメガになったからって、ソイツの内面全部変わるワケじゃねェんだぞ。第二の性が何だよ、アホか。……それに、仕事ができるできないってのはアルファもオメガも関係ねェ。ソイツ自身のポテンシャルだっつの、ボケが)
そう、笑顔の下に怒りを隠す。
だからこそ、松葉瀬はほんの少し……小さな反発をしたくなった。
「茨田課長は仕事熱心な方ですからね。俺は入社してからずっと、あの人を尊敬しています。……茨田課長はきっと、オメガとかアルファとか……そういうの、関係無いんですよ。全部、あの人自身の実力です」
松葉瀬にしては、かなり攻めた方だ。
しかし当然……女性職員にそれは伝わらない。
「ヤッパリ、松葉瀬さんは言うことが違います~!」
「オメガにも優しいですねっ!」
ささやかな抵抗は、頬を撫でる微風にもならなかった。
二人の発言を統括すると……結局、答えは一つ。
(コイツらは、オメガって人種を軽んじてるってことか……ッ)
ふと、矢車の顔が頭をよぎった。
(オメガだからって、あのビッチと茨田がなにしたんだよ……ッ? そもそも、あのヘンタイヤローだって、人並みに仕事はしてるんだぞ。要領がよくねェだけだ……ッ!)
【オメガ】という枠の、期待以上。それが、茨田らしい。
しかしそれはとどのつまり……いつの間にか茨田は、同じ事務所の職員から下に見られていたと言うこと。
そういった世間の目に、松葉瀬は苛立ちを覚えた。
けれど、それ以上に。
――矢車のことを軽んじられたことが、なによりも……面白く、なかったのだ。
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