スノードロップに触れられない

ヘタノヨコヅキ@商業名:夢臣都芽照

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5章【突発的に輝かれても、静観的に】

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 決して深入りはしない、キス。

 それでも矢車は時々、やたらとキスをせがむときがあった。


(コイツ、キス……好きだよな)


 それは素面のときでもだ。


(いつもは、そんなにしてやらねェけど……)


 対する松葉瀬は、そこまでキスが好きというわけではなかった。

 だが……たまには、相手の嗜好に付き合ってみるのも、悪くはないかもしれない。

 そう思った松葉瀬は、矢車の後頭部を掴んだ。


「――んっ、ふ、っ?」


 酔っていた矢車が、驚いたように身を引く。

 しかし、松葉瀬の手がそれを許さない。


「あ……ふぁ、あ……っ!」


 開かれた口腔に、舌をねじ込む。

 あまり絡めたことのない、矢車の舌。そこに、松葉瀬は自分の舌を絡めた。

 驚いた矢車は、逃げようと舌を引っ込める。

 けれど松葉瀬は、矢車を逃がさない。


「んっ、ふ……んん、む……っ!」


 何度も舌をつつくと、ようやく観念したのか……それとも、その気になったのか。

 矢車自ら、舌を絡めてきた。


(こういう時は、従順だよな……この、駄犬)


 上顎を舐めると、矢車の体が小さく跳ねる。

 松葉瀬が舌を引こうとすると、追うように矢車の舌が伸びてきた。

 そのやり取りが何だか可笑しくて、松葉瀬は矢車の気が済むまでキスに付き合う。


「んぅ、ん……は、ぁ……っ」


 体力が尽きたのか、それとも純粋に満足したのか。

 矢車の体から力が抜ける。

 それを頃合いだと判断し、松葉瀬は矢車から顔を離した。


「……ハッ。なんつゥ顔してんだよ、だらしねェ」
「はっ、あ……っ」


 口の端から零れた、唾液。

 それを指で拭ってあげながら、松葉瀬は口角を上げる。

 矢車の瞳は、蕩けたように甘く……熱く、潤んでいた。

 だらしなく開かれた唇は、小さく震えている。


「だ、ってぇ……こんなに、気持ちいいキス……ボク、初めて……っ」


 力の抜けた矢車が、目の前にしゃがみ込む松葉瀬へ向かって倒れ込む。


「オイ、まさか寝るんじゃ――」
「センパイ……っ」


 震える両手が、松葉瀬のスーツを握る。


「もっと、してぇ……っ?」


 思い出すのは、怒りに身を任せた……乱暴な、性交。

 腹癒せと、八つ当たりの為に……松葉瀬はいつも、手酷い行為しかしていなかった。


「お願い、センパイ……っ。もっと、いっぱいシてください……っ」


 だからこそ、矢車からこういう風に甘えられたり。

 ましてや、甘ったるい声で強請られることに……松葉瀬は、慣れていない。


(けど、まぁ……)


 脱力した矢車を抱き抱え、松葉瀬は寝室に向かって歩く。


(そこまで、気色悪くはねェ……か)


 そんなことを、内心で呟きながら。




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