10 / 89
1章【運命的で偶発的、されど必然的な出会い】
7 *
しおりを挟む蹂躙されることのなにが、得なのか。
それを矢車は、笑みを浮かべたまま説き始めた。
『ボク、悲惨すぎるシチュエーションとか、理不尽すぎる待遇を受けるとか……そういう、絶望感たぁっぷりな状況、大好きなんです。……もう、すぐにでも達しちゃいそうなくらい、ね?』
そこまで聴いて、松葉瀬は遂に理解する。
――矢車はどうして、自分がオメガだというカミングアウトをしたとき……あんなにも、毅然としていたのか。
それは決して、オメガだということを嘆いていたわけではなかった。
矢車は確かに……【自分がオメガだ】という事実に、絶望はしていたのだろう。
――だからこそ、その絶望を快感へと転換してしまったのだ。
『だから、ね? ボクを、虫唾が走る程大嫌いな松葉瀬センパイの番にして? ボクのこと、いっぱい、い~っぱい……絶望させてくださいよぉ?』
――矢車菊臣は、能天気な馬鹿なんかじゃない。
――頭のネジが外れた、とんでもない狂人なのだ。
恍惚とした笑みを浮かべ、矢車は官能的に囁く。
すると不意に、甘い香りがした。
『……あれ? センパイの、オスな部分……どんどん、硬くなってますね?』
『ッ!』
矢車から放たれる、甘い香り。
それはきっと、オメガが持つ……フェロモン。
『良かった、反応してくれて。……ね、センパイ。そろそろ本番……シませんか? ボク、さっきのキスで……結構、その気になってるんですよぉ?』
囁く矢車が、松葉瀬に自身の下半身を擦りつける。
オメガのフェロモンに充てられた松葉瀬同様……矢車の下半身も、反応を示していた。
松葉瀬は、苦虫を嚙み潰したような顔をする。
けれど、このまま黙って解散する気には……どうしても、なれない。
『テメェのことは気に食わねェが、とりあえず魂胆は理解した。だったら、乗っかってやるよ、ドヘンタイ』
矢車のスラックスに手を伸ばし、前を寛げる。
そのまま、下着もろとも引き下げた。
『ん……っ。ヤッパリ、ちょっとだけ……恥ずかしい、かも』
『男同士に、恥ずかしいもなにもねェだろ』
『銭湯とかお手洗いなら、その場にいる人全員が脱いでるけど……今は、ボクだけじゃないですかぁ』
既に濡れている、矢車の先端。
そこに指を這わせた松葉瀬は、ゆっくりと先端を刺激した。
『ん、っ。……センパイも、早く……脱いで、っ?』
『主導権はこっちだ。指図すんな、ドヘンタイ』
『あ、っ!』
ぐりっ、と、先端を圧迫する。
華奢な矢車の体が、小さく跳ねた。
『だめ、センパイ……ボク、センパイ相手だと感じやすくなっちゃうみたいで……んっ! すぐ、出ちゃいそうです……っ』
『男を煽るのが上手だな。矮小ビッチなメスオメガ、だったか? もう十分そうなんじゃねェの』
『やっ、あっ! 利己的なセンパイに、罵られるなんて……んっ、感じちゃいます……あ、っ!』
松葉瀬の手が、徐々に滑り気を帯びていく。
矢車の逸物から、快感による先走りの液が漏れているからだ。
『あ、ん、っ! だめ、あっ、イ――ん、ふあ……っ!』
矢車の体が、小刻みに震えた。
それと同時に、松葉瀬の手が白い飛沫で汚れていく。
――相手は、満更でもない。
――だったら、抱いてしまっても胸は痛まないだろう。
絶頂によって脱力している矢車の体を、松葉瀬がぐるりと反転させる。
『自分だけ楽しんでんじゃねェよ、後輩。年上には敬意を払うモンだろォが』
自身の前も寛げ、松葉瀬は矢車との距離を詰めた。
それがどういうことか、分からないほど……矢車は、純情ではない。
唇で弧を描き、これから自分を犯す相手を熱く見つめ……矢車は蚊の鳴くような声で『すみません』とだけ、囁いた。
0
あなたにおすすめの小説
もう一度言って欲しいオレと思わず言ってしまったあいつの話する?
藍音
BL
ある日、親友の壮介はおれたちの友情をぶち壊すようなことを言い出したんだ。
なんで?どうして?
そんな二人の出会いから、二人の想いを綴るラブストーリーです。
片想い進行中の方、失恋経験のある方に是非読んでもらいたい、切ないお話です。
勇太と壮介の視点が交互に入れ替わりながら進みます。
お話の重複は可能な限り避けながら、ストーリーは進行していきます。
少しでもお楽しみいただけたら、嬉しいです。
(R4.11.3 全体に手を入れました)
【ちょこっとネタバレ】
番外編にて二人の想いが通じた後日譚を進行中。
BL大賞期間内に番外編も完結予定です。
壊すほどに、俺はお前に囚われている
氷月
BL
【後輩と先輩、交錯する心と体】
春、新学期の大学キャンパス。
4年の蓮(レン)は、人気者らしく女子に囲まれながらも、なぜか新入生・七瀬巧(タクミ)の姿を探してしまう自分に気づいていた。
彼は去年の秋、かつて蓮が想いを寄せていた男の恋人の友人として出会った相手。
――まさか、この俺様が、また男に惹かれるなんて。
否定しようとすればするほど、目はタクミを追ってしまう。
無邪気に笑う顔。ふと見せる真剣な横顔。
先輩と後輩、互いに抗えない感情に囚われながら、夏の学園を駆け抜けていく――。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
必要だって言われたい
ちゃがし
BL
<42歳絆され子持ちコピーライター×30歳モテる一途な恋の初心者営業マン>
樽前アタル42歳、子持ち、独身、広告代理店勤務のコピーライター、通称タルさん。
そんなしがない中年オヤジの俺にも、気にかけてくれる誰かというのはいるもので。
ひとまわり年下の後輩営業マン麝香要は、見た目がよく、仕事が出来、モテ盛りなのに、この5年間ずっと、俺のようなおっさんに毎年バレンタインチョコを渡してくれる。
それがこの5年間、ずっと俺の心の支えになっていた。
5年間変わらずに待ち続けてくれたから、今度は俺が少しずつその気持ちに答えていきたいと思う。
樽前 アタル(たるまえ あたる)42歳
広告代理店のコピーライター、通称タルさん。
妻を亡くしてからの10年間、高校生の一人息子、凛太郎とふたりで暮らしてきた。
息子が成人するまでは一番近くで見守りたいと願っているため、社内外の交流はほとんど断っている。
5年間、バレンタインの日にだけアプローチしてくる一回り年下の後輩営業マンが可愛いけれど、今はまだ息子が優先。
春からは息子が大学生となり、家を出ていく予定だ。
だからそれまでは、もうしばらく待っていてほしい。
麝香 要(じゃこう かなめ)30歳
広告代理店の営業マン。
見た目が良く仕事も出来るため、年齢=モテ期みたいな人生を送ってきた。
来るもの拒まず去る者追わずのスタンスなので経験人数は多いけれど、
タルさんに出会うまで、自分から人を好きになったことも、本気の恋もしたことがない。
そんな要が入社以来、ずっと片思いをしているタルさん。
1年間溜めに溜めた勇気を振り絞って、毎年バレンタインの日にだけアプローチをする。
この5年間、毎年食事に誘ってはみるけれど、シングルファザーのタルさんの第一優先は息子の凛太郎で、
要の誘いには1度も乗ってくれたことがない。
今年もダメもとで誘ってみると、なんと返事はOK。
舞い上がってしまってそれ以来、ポーカーフェイスが保てない。
地味メガネだと思ってた同僚が、眼鏡を外したら国宝級でした~無愛想な美人と、チャラ営業のすれ違い恋愛
中岡 始
BL
誰にも気づかれたくない。
誰の心にも触れたくない。
無表情と無関心を盾に、オフィスの隅で静かに生きる天王寺悠(てんのうじ・ゆう)。
その存在に、誰も興味を持たなかった――彼を除いて。
明るく人懐こい営業マン・梅田隼人(うめだ・はやと)は、
偶然見た「眼鏡を外した天王寺」の姿に、衝撃を受ける。
無機質な顔の奥に隠れていたのは、
誰よりも美しく、誰よりも脆い、ひとりの青年だった。
気づいてしまったから、もう目を逸らせない。
知りたくなったから、もう引き返せない。
すれ違いと無関心、
優しさと孤独、
微かな笑顔と、隠された心。
これは、
触れれば壊れそうな彼に、
それでも手を伸ばしてしまった、
不器用な男たちの恋のはなし。
逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、
隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。
しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです…
オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が
なかたのでした。
本当の花嫁じゃない。
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
死ぬほど嫌いな上司と付き合いました【完結】
三宅スズ
BL
社会人3年目の皆川涼介(みながわりょうすけ)25歳。
皆川涼介の上司、瀧本樹(たきもといつき)28歳。
涼介はとにかく樹のことが苦手だし、嫌いだし、話すのも嫌だし、絶対に自分とは釣り合わないと思っていたが‥‥
上司×部下BL
星降る夜に ~これは大人の純愛なのか。臆病者の足踏みか。~
大波小波
BL
鳴滝 和正(なるたき かずまさ)は、イベント会社に勤めるサラリーマンだ。
彼はある日、打ち合わせ先の空き時間を過ごしたプラネタリウムで、寝入ってしまう。
和正を優しく起こしてくれたのは、そこのナレーターを務める青年・清水 祐也(しみず ゆうや)だった。
祐也を気に入った和正は、頻繁にプラネタリウムに通うようになる。
夕食も共にするほど、親しくなった二人。
しかし祐也は夜のバイトが忙しく、なかなかデートの時間が取れなかった。
それでも彼と過ごした後は、心が晴れる和正だ。
浮かれ気分のまま、彼はボーイズ・バーに立ち寄った。
そしてスタッフメニューの中に、祐也の姿を見つけてしまう。
彼の夜の顔は、風俗店で働く男娼だったのだ……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる