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11章【喉元過ぎれば熱さを忘れる】

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 ただ、前を寛がせて互いの逸物を擦りつけ合うだけ。山吹が望んでいた行為よりも、ソフトな触れ合いだ。

 それなのに山吹は、自分でも驚くほどに満たされていた。


「んっ、課長っ。気持ち、い……っ」


 桃枝の手が、自らと山吹の逸物を一緒くたに扱いている。もう片方の手は山吹の腰を支え、桃枝から落ちてしまわないようにと気遣っていた。


「あ、んっ。耳、舐めちゃ──んっ、んぅ」


 近付いた唇が、山吹の耳朶に触れる。啄むようなキスをした後、桃枝の舌が山吹の耳を這った。

 桃枝の吐息が鼓膜を震わせると、まるで全身をくすぐられたようで。山吹は堪らず甘い声を漏らし、反射的に身を引きそうになった。


「駄目だろ、緋花。自分から誘ったくせに、逃げるなんて」
「だって、気持ち良すぎて──ひ、んっ」
「嫌じゃないんなら、ちゃんと俺にしがみついてろ」
「あっ、うぅ……」


 低い声で叱責されて、命令されて。強い言葉でもなく、恐怖の種が微塵も含まれていないその声に、山吹の体は甘く疼いてしまう。

 もっと、もっと。触れられたくて、辱められたくて、求められたい。山吹は無意識に引いてしまった体を、今度は無意識に押し付けるよう近付いた。


「いい子だな」
「んんっ、ぅ」


 はしたないとは、分かっている。触ってほしさに下半身を押し付け、逸物を扱く桃枝の指をじっくりと眺めてしまっているのだから。

 分かっているのに、止められない。山吹は逸物の先端からしとどに蜜を零しながら、吐息を漏らした。


「は、ん、ぅ……。指も、舌も、気持ちいい……」


 まるで、譫言のように。感じたことをただ、口にした。快楽に沈んだ山吹は、自分の身に起こっていることを言葉にして零す。


「耳を舐める音が、エッチでドキドキして……。それで、んっ。課長の手が動くと、そこからもエッチな音が鳴って、ボク……っ」


 実況されると、それはそれで気恥ずかしい。そう思いながらも、桃枝は手を止めなかった。

 耳たぶを優しく噛むと、山吹が反射的に体を震わせる。やはり、映画で抱かれていた女優よりも山吹の方が煽情的だと、桃枝は再認識した。


「課長、もっ、出ちゃう……っ」
「みたいだな。手がドロドロだ」
「それは、ボクだけのじゃなくて……ん、ふっ」


 反論をすると、逸物を扱く桃枝の指がすぐさま山吹を窘める。親指の爪が、逸物の先端を軽く引っ掻いたのだ。

 そんなことをされてしまっては、ますます感じてしまう。山吹は桃枝に強くしがみついて、快感に体を震わせた。


「出ちゃう、ボク、もう……っ。んっ、んん、ぅ……あ、ッ」


 とぷ、と。桃枝の手を、白濁とした液が汚す。わざわざ訊かなくても、しがみついた山吹が呼吸を乱している様を見ればどれだけ感極まっているかが分かった。

 それから追従するように、桃枝の熱が山吹の逸物をさらに汚す。山吹は律儀に、それにすら反応を示した。


「課長の精液、熱くて気持ちいぃ……」
「お前のだって相当だがな」
「ボクのより課長の方が、気持ちいいです……」


 濡れ場を見ると、カップルが盛り上がる。青梅の言葉に踊らされたようで、ほんの少しだけ癪な気もした。

 だが、桃枝からキスをされると他のことがどうでもよくなったから。山吹は汚れた下半身を拭うことも忘れて、桃枝とのキスに溺れた。




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