上 下
84 / 466
4章【肉を切らせて骨を断つ】

20 微*

しおりを挟む


 熱でもあるのかと、ほんの少しだけ心配になってしまう。それほど、桃枝の手は熱くなっていた。


「や、んっ。太腿を撫でる手つきがエッチですよ、課長?」
「そりゃ、そういう気分で触ってるんだ。やらしい手つきにだってなるだろ」
「あ、ちょっと……っ。内腿は、まだ……や、んっ」


 一度乗ってしまえば、他は吹っ切れたらしい。桃枝の手つきは意外にも大胆で、山吹が望む前に先へと進んだ。

 温かな手が、山吹の内腿を撫でる。強引なはずなのにどこか優しい手の平に、山吹は小さく震えてしまう。


「だ、めです……っ。勃っちゃいます、からぁ……っ」
「内腿を手の平で撫でただけなのにか? 敏感なんだな」
「課長の手が、大きくて、ゴツゴツしてるから……っ。変な気分に、なっちゃいます……っ」
「そうかよ。俺はお前のおかげで、とっくに変な気分だがな」
「ん、あっ!」


 下着越しに、逸物が撫でられる。まさか一気にそこまで触られるとは思っておらず、さすがの山吹も甘い声を漏らしてしまった。

 どこまでも、ソフトタッチ。かえってそれがこそばゆく、山吹の体は熱を持ってしまった。


「濡れてるな。この、ヘンタイ」
「ん、ぅ。ゾクゾク、しちゃいます……っ。もっと、罵ってください……っ」
「っ! い、今のは罵ったわけじゃ……っ!」


 だが、桃枝はどこまでいっても桃枝だ。山吹の発言を聞き思うところがあったのか、桃枝はハッとした様子ですぐに手を離してしまった。

 中途半端に熱を帯びた山吹は、ぷくっと頬を膨らませる。


「どうしてやめちゃうんですか。ボク、悦んでいましたのに」
「いや、今のは俺が悪かった……っ。いきなり、おかしなところを触って……っ」
「だから、それが嬉しかったんですってば」


 チラリと、山吹は視線を下げた。そのまますぐに、ニヤリと口角を上げる。


「ボクに触っただけで、コーフンしてくれたんですね。嬉しいです」
「ッ! 馬鹿、見るな……ッ!」


 山吹が見つめているのは、桃枝の股間だ。すぐに桃枝は手を伸ばし、山吹の視界を覆った。

 人の逸物は許可も取らずに触っておいて、自分が見られるのはなぜ駄目なのか。半端に残っている桃枝の理性が可笑しくて、山吹は笑ってしまう。


「ねぇ、課長。……カワイイナースに、お注射。したくないですか?」

「──お前そんな言葉どこで覚えたんだよッ!」
「──実地で、ですかね?」


 視界を覆っていた手が離れると同時に、山吹は動く。桃枝の下半身に手を伸ばし、ある一部分を撫でるために。


「ほら、もうパンパンじゃないですか。このまま放置するのは体に悪いですよ? 健康的ではありませんよね? 課長は患者さんなんですから、体に悪いことはしちゃダメですよ?」
「やめろ、卑猥な雰囲気を作るな。……そもそも、なんで患者がナースに注射するんだよ」
「あははっ、ステキなツッコミですねっ! じゃあ、課長が納得しそうな返しとして、そうだなぁ。……『予防接種』なんてどうですか?」
「この状況に対しては最高の返しだが、中身が結局は最低だな」
「そう言いながら、ココ。どんどん大きくなってますよ、課長?」


 手を払われはしないが、目も合わない。桃枝はフイッと顔を背け、しかし山吹に下半身を撫でられたまま、ポソポソと反論をする。


「──惚れた相手のそんな恰好見せられたら、誰だってこうなるだろ、阿呆が……ッ」


 ……あまり【反論】らしくはなかったが。




しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

『これで最後だから』と、抱きしめた腕の中で泣いていた

和泉奏
BL
「…俺も、愛しています」と返した従者の表情は、泣きそうなのに綺麗で。 皇太子×従者

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

彼の理想に

いちみやりょう
BL
あの人が見つめる先はいつも、優しそうに、幸せそうに笑う人だった。 人は違ってもそれだけは変わらなかった。 だから俺は、幸せそうに笑う努力をした。 優しくする努力をした。 本当はそんな人間なんかじゃないのに。 俺はあの人の恋人になりたい。 だけど、そんなことノンケのあの人に頼めないから。 心は冗談の中に隠して、少しでもあの人に近づけるようにって笑った。ずっとずっと。そうしてきた。

ハイスペックED~元凶の貧乏大学生と同居生活~

みきち@書籍発売中!
BL
イケメン投資家(24)が、学生時代に初恋拗らせてEDになり、元凶の貧乏大学生(19)と同居する話。 成り行きで添い寝してたらとんでも関係になっちゃう、コメディ風+お料理要素あり♪ イケメン投資家(高見)×貧乏大学生(主人公:凛)

理香は俺のカノジョじゃねえ

中屋沙鳥
BL
篠原亮は料理が得意な高校3年生。受験生なのに卒業後に兄の周と結婚する予定の遠山理香に料理を教えてやらなければならなくなった。弁当を作ってやったり一緒に帰ったり…理香が18歳になるまではなぜか兄のカノジョだということはみんなに内緒にしなければならない。そのため友だちでイケメンの櫻井和樹やチャラ男の大宮司から亮が理香と付き合ってるんじゃないかと疑われてしまうことに。そうこうしているうちに和樹の様子がおかしくなって?口の悪い高校生男子の学生ライフ/男女CPあります。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

処理中です...