親友の弟を騙して抱いて、

ヘタノヨコヅキ@商業名:夢臣都芽照

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オマケ①【親友の弟を不意打ちで抱いて、】

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 今日は、恋人と家でまったりできる日。
 俺こと火乃宮平兵衛は、恋人こと月島冬人が作ってくれた晩メシを食べながらテレビを見ていた。


「なぁ、冬人。お前さん、こういうドラマとかは実家で見てたのか?」


 そう言いながら俺が指し示すのは、テレビだ。……もっと言うと、テレビ画面に映る恋愛ジャンルのドラマだった。

 冬人は箸の動きを止めて、顔を上げる。


「いや、あまり。興味もなかったな」
「そうか。……どうだ、実際に見てみて?」
「特になにも。『演技が上手だな。今後の私に活かそう』とは思うが」
「目線が完全に一般人のそれじゃねぇな……」


 ドラマを見て初めから役者目線って、どういうことだよ。……という、実に冬人らしい天然発言は置いておいて、俺と冬人はなにを言うでもなくテレビに目を向けた。

 内容は、学園ものの恋愛ドラマだ。ヒロインの女の子に対し、ヒーロー候補数名がここぞとばかりにヒロインへアピールしている。……おっ? このヒーロー役の俳優、この前一緒に撮影したな。

 知り合いが出ていることに意識を奪われた俺は、想定していた以上にドラマを見入ってしまう。

 知り合いの俳優──かなり主要キャラっぽいヒーローが、ヒロインを口説いている。この前一緒にいた雑誌の撮影現場だとかなりおちゃらけた奴だったが、演じている役は結構クールなキャラだな。感慨深い。

 すると不意に、ヒーロー候補がヒロインのことを姫抱きにしたではないか。


「この男性は力持ちだな」
「その感想、女の前で言うなよ」
「なぜだ? 私は女性ではなく男性に対して言っているのに」
「なんでもだ」


 やはり、冬人の視聴目線はどことなく不思議だ。

 ……それにしても、姫抱きか。女の子の中では可愛らしく【お姫様抱っこ】と称されるやつだな。

 女の子の夢というやつであり、男としても自身のオスらしさをアピールできるいい手法だ。……ちなみに、俺はやったこともあるしやられたこともあるぞ。相手はどっちも、冬樹だが。

 冬樹が『姫抱きされたい!』と喚き始めたので抱き上げたら、今度は逆に『俺が平兵衛を抱いてやる!』と言ってきたのだ。語弊を恐れないいい男だったな、冬樹は。
 ちなみに、結果は冬樹の惨敗。俺は床に頭をぶつけた。アレは普通に痛かったな、ウン。

 ……という出来事を思い返しながら、俺はぼんやりと取り留めのない議題を作り上げてしまう。

 ──いつか冬人も、誰かにしてあげるのだろうか。……という内容だ。

 最近の冬人はとてもいい感じに仕事をしていて、女性人気も急上昇中。いつそういった【女の子の夢】を叶える王子様になるのか分からない。
 女性モデルを抱き上げるかもしれないし、相手は男の可能性だってある。最近は男同士のそういう画も人気だからだ。

 ……と、そこまで考えてから、俺はハッとした。

 ──冬人なら、する側ではなくされる側の可能性もあるのではないか? という衝撃だ。

 ……それは、良くない。非常に良くないし、ダメだぞ。全然ダメで、全然良くない。

 『公私混同』と罵られても構わないが、冬人を抱き上げていいのは俺だけだ。どこの馬の骨とも分からない男に冬人の体を抱かせてなるものか。

 頭の中で想いが爆発した俺は、ビールの缶を握り潰してから、叫ぶ。


「──冬人は俺だけのお姫様でいてくれッ!」
「──私は誰かの姫になった覚えはない」


 ピシャリ、と。あまりにも真っ直ぐ且つ鋭いツッコミだ。

 冬人は一切表情を変えずに、俺が潰してしまった缶を回収した。……くっ、今日も気が利くいい男だ。愛しているぞ。

 あと、メシがウマい。ヤッパリ俺の冬人は最高だ。




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