親友の弟を騙して抱いて、

ヘタノヨコヅキ@商業名:夢臣都芽照

文字の大きさ
上 下
69 / 88
7章【親友の弟がよそよそしかった理由は、】

12

しおりを挟む



 驚いたように声を出して、冬人はされるがままになっている。
 そんなところも全部可愛く見えてくるのだから、好意というのは厄介だ。


「一番有名になるとかなら、お前さん自身にも目指せそうだろ? ……まぁ? 俺はモチロン、お前さんには負けないけどな?」


 もう一度ニッと笑ってみせると、冬人は俯いてしまった。


「私は、私のままでも……いいの、だろうか」


 また冬人がバカなことを言っている。
 これだけ言っているのに、なんで冬人は分からないんだよ。

 ──俺は。


「──俺は、そのまんまの月島冬人が好きだと思ってるぞ」


 瞬間。自分で言った言葉に、思わず心の中で疑問符を浮かべる。

 イヤ、うん? うん、んんん?
 ……今のは、どう、聞いても……?

 ──告白じゃねーかッ!

 そう気付き、自分の発言にゾッとする。

 早い早いッ! さすがに展開が早いッ! バカか俺は! 気付いたのなんて、今さっきだろ! 好きって気付いて即効告白って、早すぎどころの話じゃないぞ、オイッ!

 どんだけ性急なんだよ俺は! せっかちのレベル超えてるだろ! いくつだよ! 青春真っただ中の中学生だってもう少し段階を踏むぞ!

 悪い、頼む! 弁明させてくれ! 今まで好意を寄せられることはあっても、こっちが一方的に好意を寄せるなんてことなかったんだ!

 だから、告白をする方の気持ちとかを、俺は全然知らなかった。
 知らなかったのだが、これは……ッ!

 ──思っていた以上に恥ずかしいし、やけに怖くなってきたぞ……ッ!

 思わず、逃げ出したくなる。だが、いっそ返事を教えてもらいたいという気持ちもあった。

 俺は恐る恐る、冬人を見る。
 すると……。


「は……っ? あっ、あぁ。……あり、がとう?」


 ポカンとした顔で、冬人は俺を見ていた。
 いつの間にか、涙も止まっていたらしい。泣きはらしたような赤い目だ。

 ……と言うか、その反応は、つまり……?

 ──もしかして、分かってないのか!

 自分で蒔いた種どころの話ではないが、なんだかややこしいことになってきた気がするぞ。
 思い出すのが遅れたが、冬人の中で俺は【冬樹と付き合っていた】ということになっている。

 だから、俺がいきなり『好き』と言っても、友達とか同僚としての意味合いになってしまうのは、至極当然だろう。

 ……つまり俺は、大前提から失敗しているってことか?
 レイプしたうえに兄貴と付き合っているとウソを吐き、最悪のスタート地点だ。……むしろ、マイナスからのスタートとも言えるだろう。

 結局のところ、俺はいつもあの日の自分を呪うしかないのだ。

 グルグルとどうしようもないことを考えていると、頭に乗せられた俺の手を払うこともなく、冬人が声をかけた。


「平兵衛さん、あの」


 申し訳無さそうな顔をした後に、冬人が俯く。


「遅くなったが、その。……庇ってくれて、ありがとう。できればなにか、お詫びをしたいのだが……」
「はぁ? お詫び?」


 そもそも、俺がもっと早く冬人が嫌がらせを受けていると気付いていたなら。そうすれば、こんなことにはならなかったかもしれない。
 だから、むしろ俺がお詫びをしなくちゃいけないんだが……。


「なにか、させてほしい。……頼む」


 さっきまで泣いていたせいで、冬人は必然的に潤んだ瞳で俺を見つめている。

 ……あぁ、クソ。可愛い……っ。

 この状況でもそんなことを考える俺は、ヤッパリ最低なのかもしれない。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

僕の部下がかわいくて仕方ない

まつも☆きらら
BL
ある日悠太は上司のPCに自分の画像が大量に保存されているのを見つける。上司の田代は悪びれることなく悠太のことが好きだと告白。突然のことに戸惑う悠太だったが、田代以外にも悠太に想いを寄せる男たちが現れ始め、さらに悠太を戸惑わせることに。悠太が選ぶのは果たして誰なのか?

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

消えない思い

樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。 高校3年生 矢野浩二 α 高校3年生 佐々木裕也 α 高校1年生 赤城要 Ω 赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。 自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。 そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。 でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。 彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。 そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

後輩に嫌われたと思った先輩と その先輩から突然ブロックされた後輩との、その後の話し…

まゆゆ
BL
澄 真広 (スミ マヒロ) は、高校三年の卒業式の日から。 5年に渡って拗らせた恋を抱えていた。 相手は、後輩の久元 朱 (クモト シュウ) 5年前の卒業式の日、想いを告げるか迷いながら待って居たが、シュウは現れず。振られたと思い込む。 一方で、シュウは、澄が急に自分をブロックしてきた事にショックを受ける。 唯一自分を、励ましてくれた先輩からのブロックを時折思い出しては、辛くなっていた。 それは、澄も同じであの日、来てくれたら今とは違っていたはずで仮に振られたとしても、ここまで拗らせることもなかったと考えていた。 そんな5年後の今、シュウは住み込み先で失敗して追い出された途方に暮れていた。 そこへ社会人となっていた澄と再会する。 果たして5年越しの恋は、動き出すのか? 表紙のイラストは、Daysさんで作らせていただきました。

キンモクセイは夏の記憶とともに

広崎之斗
BL
弟みたいで好きだった年下αに、外堀を埋められてしまい意を決して番になるまでの物語。 小山悠人は大学入学を機に上京し、それから実家には帰っていなかった。 田舎故にΩであることに対する風当たりに我慢できなかったからだ。 そして10年の月日が流れたある日、年下で幼なじみの六條純一が突然悠人の前に現われる。 純一はずっと好きだったと告白し、10年越しの想いを伝える。 しかし純一はαであり、立派に仕事もしていて、なにより見た目だって良い。 「俺になんてもったいない!」 素直になれない年下Ωと、執着系年下αを取り巻く人達との、ハッピーエンドまでの物語。 性描写のある話は【※】をつけていきます。

いとしの生徒会長さま

もりひろ
BL
大好きな親友と楽しい高校生活を送るため、急きょアメリカから帰国した俺だけど、編入した学園は、とんでもなく変わっていた……! しかも、生徒会長になれとか言われるし。冗談じゃねえっつの!

隣人、イケメン俳優につき

タタミ
BL
イラストレーターの清永一太はある日、隣部屋の怒鳴り合いに気付く。清永が隣部屋を訪ねると、そこでは人気俳優の杉崎久遠が男に暴行されていて──?

処理中です...