親友の弟を騙して抱いて、

ヘタノヨコヅキ@商業名:夢臣都芽照

文字の大きさ
上 下
41 / 88
5章【親友の弟の目的を知った俺は、】

6

しおりを挟む



 ──どういうことだ?

 一先ず、冬人の肩を押して距離を取ろうとする。
 冬人にとっては残念だろうが、俺の方が腕は長い。冬人の手は、あっさりと俺のズボンから離れた。


「なにをする……っ」
「それはこっちのセリフだ! なにしようとしてんだよ、お前さんは!」


 ずっと俯いていた冬人が、ようやっと顔を上げる。
 冬人の顔を見て、俺は……。


「──兄は、平兵衛さんを悦ばせていたんだろう……っ」


 ──驚愕した。

 ──冬人が、真っ赤な顔で俺を見上げているのだから。

 冬人の行動と、セリフを推理しよう。
 強引に、冬人は俺のズボンを下げようとした。その理由を訊いたら、冬人は【恋人である冬樹】を引き合いに出したのだ。

 ──つまり?

 ──【そういう意味で】脱がそうとしたのか?


「なんだよ、冬人。お前さん、俺の相手をしてくれるのか?」
「……っ」


 冬人は顔を赤くしたまま、顔を逸らした。

 ──なるほど。

 ──つまり冬人はまだ、冬樹になろうとしているのか。

 さすがにここまでしてくるとは思わなかったが、仕方ない。


「意味、分かってるのか?」


 気は進まないが、冬人をさらに脅す必要があるらしい。
 冬人は俺とは目を合わせず、半ばヤケクソのように声を上げる。


「さ、触れば……いい、のだろう……っ」
「その口振りからするに……お前さん、経験はないのか?」
「あ、ある訳ないだろう……っ! 人付き合いなんて、必要最低限もしていない……っ! こんなこと、経験あるはず、ない……っ」


 ──なるほど。ウブな童貞か。

 そんな強い口調で言うことでもないと思うが、冬人は真剣だ。


「いやに思い切ったな。お前さんはホモなのか?」
「そんなの、試したこともない……っ!」
「初恋は?」
「五月蠅い! さっきからなんなんだ! 私が色恋沙汰に疎くても、男のやり方くらいは知っている!」


 ウブな反応だと思ったら、初恋もまだらしい。
 指摘されて恥ずかしいのか、シンプルに不愉快だったのか……冬人はさらに声を荒げた。

 ……『男のやり方』っていうのは、つまり? さすがの冬人も【男の自慰行為は知っている】ってことだろうな。

 要約すると『ただ男のモノを触ればそれでいい』って考えか。
 少し我慢すれば、できなくはない行為。……そのくらいの考えだろう。

 だが、それは俺の本意じゃない。冬人にそんなことを、させたいワケではないのだ。
 つまりもう少し、脅す必要がある。

 心は痛いが、俺のためだけじゃない。冬人と冬樹のためだ。


「──冬樹は口でシてくれたんだけどな?」


 ──冬樹よ、許せ。

 ──弟の中で、お前さんは立派な俺のカノジョになっちまった。


「……っ! く、口……っ?」


 冬樹のためと思っているくせに、内容がどんどん現実的なものになっている。若干、巨乳好きな冬樹に汚名をかぶせている気もするぞ。


「だから、お前さんにはムリなんだよ」


 動揺している今こそ、攻め入ろう。
 冬人の肩を押し、顔を背ける。

 今度こそ、冬人の考えを改めさせることができたはず。

 ……そう、俺は本気で思っていた。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

僕の部下がかわいくて仕方ない

まつも☆きらら
BL
ある日悠太は上司のPCに自分の画像が大量に保存されているのを見つける。上司の田代は悪びれることなく悠太のことが好きだと告白。突然のことに戸惑う悠太だったが、田代以外にも悠太に想いを寄せる男たちが現れ始め、さらに悠太を戸惑わせることに。悠太が選ぶのは果たして誰なのか?

思い出して欲しい二人

春色悠
BL
 喫茶店でアルバイトをしている鷹木翠(たかぎ みどり)。ある日、喫茶店に初恋の人、白河朱鳥(しらかわ あすか)が女性を伴って入ってきた。しかも朱鳥は翠の事を覚えていない様で、幼い頃の約束をずっと覚えていた翠はショックを受ける。  そして恋心を忘れようと努力するが、昔と変わったのに変わっていない朱鳥に寧ろ、どんどん惚れてしまう。  一方朱鳥は、バッチリと翠の事を覚えていた。まさか取引先との昼食を食べに行った先で、再会すると思わず、緩む頬を引き締めて翠にかっこいい所を見せようと頑張ったが、翠は朱鳥の事を覚えていない様。それでも全く愛が冷めず、今度は本当に結婚するために翠を落としにかかる。  そんな二人の、もだもだ、じれったい、さっさとくっつけ!と、言いたくなるようなラブロマンス。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

消えない思い

樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。 高校3年生 矢野浩二 α 高校3年生 佐々木裕也 α 高校1年生 赤城要 Ω 赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。 自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。 そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。 でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。 彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。 そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

キンモクセイは夏の記憶とともに

広崎之斗
BL
弟みたいで好きだった年下αに、外堀を埋められてしまい意を決して番になるまでの物語。 小山悠人は大学入学を機に上京し、それから実家には帰っていなかった。 田舎故にΩであることに対する風当たりに我慢できなかったからだ。 そして10年の月日が流れたある日、年下で幼なじみの六條純一が突然悠人の前に現われる。 純一はずっと好きだったと告白し、10年越しの想いを伝える。 しかし純一はαであり、立派に仕事もしていて、なにより見た目だって良い。 「俺になんてもったいない!」 素直になれない年下Ωと、執着系年下αを取り巻く人達との、ハッピーエンドまでの物語。 性描写のある話は【※】をつけていきます。

後輩に嫌われたと思った先輩と その先輩から突然ブロックされた後輩との、その後の話し…

まゆゆ
BL
澄 真広 (スミ マヒロ) は、高校三年の卒業式の日から。 5年に渡って拗らせた恋を抱えていた。 相手は、後輩の久元 朱 (クモト シュウ) 5年前の卒業式の日、想いを告げるか迷いながら待って居たが、シュウは現れず。振られたと思い込む。 一方で、シュウは、澄が急に自分をブロックしてきた事にショックを受ける。 唯一自分を、励ましてくれた先輩からのブロックを時折思い出しては、辛くなっていた。 それは、澄も同じであの日、来てくれたら今とは違っていたはずで仮に振られたとしても、ここまで拗らせることもなかったと考えていた。 そんな5年後の今、シュウは住み込み先で失敗して追い出された途方に暮れていた。 そこへ社会人となっていた澄と再会する。 果たして5年越しの恋は、動き出すのか? 表紙のイラストは、Daysさんで作らせていただきました。

いとしの生徒会長さま

もりひろ
BL
大好きな親友と楽しい高校生活を送るため、急きょアメリカから帰国した俺だけど、編入した学園は、とんでもなく変わっていた……! しかも、生徒会長になれとか言われるし。冗談じゃねえっつの!

処理中です...