親友の弟を騙して抱いて、

ヘタノヨコヅキ@商業名:夢臣都芽照

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5章【親友の弟の目的を知った俺は、】

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 冬人は、俺から視線を逸らす。
 しかし黙ったままで、否定はおろか、決意を撤回するような言葉も紡がない。

 ……思っていたよりも、強情だな。もう少し露骨なアクションを起こさないと、冬樹の代わりなんてムリだって思えないか?

 距離を詰め、冬人の耳朶へ唇を寄せた。


「冬人」
「……っ」


 低く囁くと、冬人が小さく、身を震わせる。


「へぇ? そういう反応するんだな?」


 そう囁いてからおもむろに、冬人の腰を服の上からなぞってみた。


「な、っ」


 いきなり触られるとは、思っていなかったのだろう。思わず笑ってしまいそうなほど、冬人は過敏に反応した。
 ……過敏に反応した理由は驚きだけじゃなくて、おそらく警戒心もあるだろうがな。


「ムリなんだろ? 男の相手なんて。……だから、お前さんは冬樹になれない」
「なに、して……っ」


 服の中に手を入れて直接、冬人の腰を撫でる。
 俺の手に呼応するように、冬人の体が小さく震えた。


「諦めろ」


 そう言い残し、俺は冬人から離れて、テーブルに戻る。

 ……さて、と。これで少しは、身の危険を感じてもらえただろう。自分には冬樹の代わりなんてムリだと、諦めてくれたはずだ。
 となると……残された問題は【どのタイミングでウソだと教えるか】だな。

 このまま一生騙すのは、さすがに死んだ冬樹が浮かばれない。
 アイツは冬人も知っている通り、正真正銘のノンケだ。普通に、巨乳の女が好きだった。

 イスに座り直した俺は、残っていた缶ビールを一気に飲み干す。
 そして意味もなく、俺はバラエティ番組を眺めた。

 ……それにしても、明日からどうすっかなぁ。

 冬人の中で、俺は完全に【危険なホモ】だ。数分前までのように楽しく談笑なんて、きっともうできないだろう。

 ……まぁ、俺自身が避けられるのは仕方ない。
 それで冬人がバカな考えを改めてくれるなら、このくらい犠牲のうちにも入らないさ。

 テレビの画面が、コマーシャルに切り替わった。

 ──その時だ。


「──平兵衛さん」


 いつの間にか。
 冬人が、俺に近付いていた。


「うぉッ! な、なんだよ……?」


 そのまま、自分の部屋に逃げるだろうと。そう、思っていたのだが。あろうことか冬人は、近付いてきたのだ。

 ──諦める気になった、のか?

 冬人は小さく震えたまま、俯いている。
 俺は冬人が今、どんな顔をしているのか、下から覗き込もうとした。

 ──すると。

 ──冬人は、その場に座り込んだ。

 ……これはいったい、どういうことだろうか。
 バカなことを言っていると自覚したから、俺に謝ろうとしている?
 まさか、そのためにわざわざ座った、のか?

 だが、コイツならそのくらい大袈裟なことをしない……とも、限らない。

 意図が分からず、俺はただただ動揺する。
 座り込んだ冬人は、黙ったまま。

 ──黙ったまま、突然。


「──なッ! オイ、冬人!」


 ──冬人は力任せに、俺のズボンを引っ張り始めた。

 モチロン、俺はイスに座っている状態だ。つまり、思うようにズボンは下がらない。
 それでも、冬人は半ば強引にズボンを下げようとしてくる。

 ──いったいなにがしたいんだ、コイツは?

 妙な攻防戦が、幕を開いた瞬間だった。 




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