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4章【親友の弟の目的は、】
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しおりを挟む近くのスーパーで酒を買い漁り、俺は上機嫌で帰路についていた。
買い物袋の中身に視線を落とし、思わず笑みを浮かべかける。……ふふっ。我ながら、大人げなく豪快な買い物をしたもんだ。
……この約一ヶ月。俺は仕事の打ち上げや、接待じみた飲み会でしか酒を飲んでいなかった。
酒を飲んではいいけれど、どことなく遠慮しなくてはいけないという複雑な心境。……つまり、有り体に言ってしまえば【若干のストレス】だったわけで。
溜まりに溜まった【酒を飲みたい】という、正直すぎる欲求。それをやっと、今晩解放できる。
スーパーで手に入れた、戦利品。……つまり、酒。動く度に『ガサガサ』だの『ガチャガチャ』だの音は鳴るが、一先ず聞こえないフリ。
高い酒とかはロケとか打ち上げとかで飲めたりするが、スーパーで売っている安い酒の味も、俺は割と好きだ。
別に、貧乏というわけではない。名誉のために言わせてもらうと、買おうと思えばいい酒だって買える。
ただ、わざわざ一人でいい酒を飲もうと思わないだけだ。つまるところ、一人で飲むなら庶民的な酒だな、というわけで。
……そう考えると、俺はまだ【アル中】というものではないらしい。セーフだ、セーフ。
いつもはもう少し量を気にするが、今日は一切気にしていない。少しでも『いいな』と思った酒を、片っ端からカゴに突っ込んだ。
……さて、と。帰ったらサッサと風呂に入って、その後はバラエティ番組でも見ながらダラダラ酒を飲もう。
そんなことを考えている自分を客観的に見ると、まるで仕事終わりのサラリーマンのようだ。
逆に、そう言いたい奴がいるなら言わせてやるさ。そんなことより、酒だ酒!
……ン? ヤッパリ俺はアル中……いやいや、そんなことはねぇな!
そうこうしているうちに、目的地──自宅へ辿り着いた。俺はすぐに扉へカギを差し込み、玄関を開けようとする。
そこで、妙な違和感。
──カギが、開いていたのだ。
開いているかどうかを確認する前にカギを突っ込んだが、どうやら冬人が居るらしい。今しがたカギを回した感触が、その証拠。
開錠してから玄関に入り、きちんとカギを閉めた後、リビングへ向かう。……そしてまた、妙な違和感に気付く。
──妙に、部屋が小綺麗になっているのだ。
廊下や、扉のノブ。それに壁までもが、前よりもキレイになっている気がする。
リビングの扉を開け、一瞬。
──言葉を、失った。
「平兵衛さん。久し振り」
床や、壁。
窓に、イス。
テーブルや、キッチンまでもが……。
「──大掃除でもしたのか!」
──見たことがないほど、ピッカピカになっていたのだ。
思わず、酒の入った買い物袋を床に落とす。
上旬とはいえ、今は十二月。ギリギリ『年末だ』と言えば、理解される範囲。
……だが、ここまでするか?
冬人はキッチンに立ったまま、帰ってきた俺に声をかけた。どことなく、緊張したような声だ。
だが、俺はそれに対して返事をするよりも先に、気になったことを大声で言ってしまった。
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