親友の弟を騙して抱いて、

ヘタノヨコヅキ@商業名:夢臣都芽照

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3章【親友の弟と同居を始めて、】

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 冬人君の行動に、面食らう。
 だが、呆けている場合ではない。


「……あっ、オイッ!」


 すぐに冬人君を追いかけて、俺も冬樹の使っていた部屋に入る。
 中で冬人君は、扉を開けたまま、固まったように止まっていた。


「オイ、冬人君? どうしたんだよ、いきなり」
「ここが、兄の部屋?」


 冬人君は部屋の中をグルリと見渡してから、呟く。


「──兄が、部屋を……綺麗にして、いる」


 本心からの、呟き。
 ……瞬間。

 ──俺は思わず、吹き出してしまった。


「ブハッ! そ、そんな、しみじみと……ふっ、ハハッ!」
「っ! い、いきなりなにっ。……です、か」
「あ、あぁ、悪い。俺が勝手に片付けちまったんだ。だから、本当はすっげぇ汚い部屋で……ハハハッ!」


 突然笑い出した俺に驚いているのか、冬人君は俺のことを目を丸くしながら見てきたのだ。……眉間にシワは、寄せたままだがな。

 イヤ、これは仕方ないだろう? だって、マジな声のトーンでなにを言い出したかと思ったら、部屋がキレイなことに驚くって……。
 笑うだろ! 不意打ちすぎて!

 
「イヤ~、悪い悪い! 冬樹は実家でも部屋散らかしてたんだなぁって思ったら、笑っちまって!」
「あっ。えっ、えぇ、まぁ……っ」


 冬人君は一度頷いた後、また部屋を見る。


「家具の統一感はなかったし、服が畳んであるところは見たことがない。……なかった、です」


 ほぼ独り言のように、冬人君は呟く。
 だが、俺が聞いていることを失念していたと、気付いたのだろう。慌てて、敬語を付け足している。……そんな姿を見ると、会ったばかりの冬樹を思い出した。

 冬樹と、初めて会った時。あっちは高校生で、俺は二十歳を超えていた。
 テレビや雑誌で何回も俺を見たことがあったからか、実際に会ったのは初めてなのに、冬樹はうっかりタメ口を使ったのだ。


『あ、火乃宮平兵衛だ! ……さん、だ! じゃなくて、ですね!』


 最初は一応、注意したりしていたさ。
 だが、部屋に来たりするようになった頃には、注意しようという気も起きなくなっていた。


『平兵衛はいい奴だよな!』


 気付けば、呼び捨てにもなっていたっけ。

 それでもアイツは、仕事とプライベートで敬語とタメ口を使い分けていた。だから俺は、二人きりのときに敬語を使われなくても、なにも言わなくなったのだ。

 ──って、なにやってるんだ、俺は。

 ──また、冬樹と冬人君を重ねている。

 不意に、冬人君が俺を振り返った。


「火乃宮さん」
「おう、なんだ?」


 冬人君の、どこか冷たい眼差し。

 ──冬樹とは、全然違う。

 そもそもアイツは、もっと図々しい奴だった。
 だけど、冬人君はそんなことない。まだ俺との距離感が掴めていないだけだろうけど、それを踏まえても、冬樹とは違う。

 ……けど、こういう真剣な顔をして黙っている冬人君は……。

 ──くだらないことを真剣に考えていた時の冬樹と、似ているな。

 ……あぁ、クソ。まただ。
 ヤッパリ、重ねてしまう。

 そんなこと、考えたくねぇのに……ッ。




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