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オマケSS②【[童話]三匹の子豚】
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しおりを挟む三匹の子豚は、途方に暮れていました。
「まさか、木の家も解体されるとは……」
「想定の範囲内ではあるが、悩ましい……」
「しかもまた、妙に小綺麗だったな……」
そうです。必死の建築空しく、木の家は壊されてしまいました。
なぜかそこそこ綺麗に木材は並べられていて、雰囲気だけ見ると荒らされているけれど、やはりどこか丁寧な……そんな壊され方です。
壊されてはいるけれど、微妙に優しい犯人相手で、三匹は呆れるべきなのか怒るべきなのか……正しい感情が分かりません。
「だが、やられっぱなしの俺様たちではないぞ!」
「ここら一帯の土は既に調査済みだ!」
「これらを加工するなんて造作もない!」
三匹は前を向きます。なんと彼等は、二度の建築経験を自らの糧にし、一級建築士並の応用力と知識を手に入れたのです。
そして、根本的に賢い三匹が力を合わせれば、丈夫な家を建てるなんて芸当、朝飯前なのでした。
足元にある解析済みの土を眺め、三匹は声高らかに宣言します。
「「「──次はレンガの家だ!」」」
あえて王道を突き進む。
……それはある意味、器量でしょう。
* * *
その日の夜、狼は絶句しておりました。
たった一言『なんだこれは』と。そんな声すら出ないくらい、驚愕していたのです。
それはきっと、一目子豚たちの顔を見ようと探し回っていたら、予想外の物を見つけたからでしょう。
──目の前にそびえ立つ、立派なレンガの家を見て……驚かない生命はいないはずです。
窓ガラスからは薄く光が漏れています。大自然の中だというのに、なぜか電気がついているのです。
理系っぽい見た目の狼は、ひたすらに驚きます。
しかも、必要なのか分からない煙突までついていました。太くて長くて立派です。
上から下まで舐め回す様に眺め……今度は、下から上を眺めます。
──そこで狼は、あることに気付きました。
「──なんで、煙突に上れる設計になっているんだ……っ?」
狼の呟きは、虚空へ溶けていきます。
そう。レンガの家の壁や屋根、そして煙突には……まるでボルダリングのように、足をかけられる凹凸があったのです。
──まるで、上ってこいと言いたげに。
チェリーボーイ系狼は、子豚たちを守りたい。だからこそ、安全な家を建てるようわざと挑発してきました。
けれど、この設計はなんでしょう? 頑丈さでは引けを取らない素材なのに、根底を覆してしまうような……誰かを煙突まで導く【凹凸】という装飾。
狼は、逡巡しました。
「注意、すべきか……っ?」
電気がついているということは、中に子豚が居るということ。煙突から煙は排出されていないので、火は使っていないのでしょう。
子豚への庇護欲からか、それとも一目会いたいという下心からか……。
──童貞狼は、煙突を上り始めました。
「いったい、なにを考えているんだ……っ?」
身を以て知りましたが、煙突の真上まで続く凹凸は……特に運動が得意というわけでもない狼でも、難なく上れる設計です。セキュリティ面では絶望的でしょう。だからこそ、狼の疑問は至極当然のものでした。
煙突のてっぺんに辿り着いた狼は、息を切らしながらも臭いを嗅ぎます。
無論、焦げ臭さは感じません。煙突の中に顔を突っ込み、狼はまたもや驚きます。
──なぜかおあつらえ向きに、ロープが垂れ下がっていたのです。
気味の悪さを感じつつも、子豚の魅力に絶賛骨抜かれ中な狼は、罠の可能性を視野に入れつつ……。
──ロープを利用して、屋内への侵入を試みました。
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