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オマケSS②【[童話]三匹の子豚】

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 むかぁしむかし。
 建設した人は【セキュリティ】という概念が欠如していたのだろうというくらい、チープ且つ小さな安っぽい家に、四匹の豚が住んでおりました。
 そう。一匹の親豚と、三匹の子豚です。

 親豚の名前はマスエと言い、必要以上に高い身長と暑苦しいくらい立派な体格の持ち主でした。
 対する三匹の子豚は、上からイアイ、シュンタ、カチョウという名前で、国宝級の可愛さと溢れ出る無邪気な癒しオーラを備えた、才色兼備を形にしたような子たちです。

 そんな四匹は、まぁ、そこそこ仲良く? いい感じに? 暮らしていました。

 ──そんなある日、事件が起きます。


「──お前たち全員、この家から今すぐ出て行け」


 愛らしさと尊さとシコさを詰め込んだ、世界的にも表彰レベルな容姿をしたシコリティシンボルショタピッグたちを、あろうことかマスエは追い出そうとしているのです。
 当然、三兄弟は猛反対します。


「横暴だ!」
「理由を言え!」
「このエロ豚野郎!」


 戦争一歩手前です。温かな家庭は、唐突に冷え切った環境に変わってしまいました。これが俗に言う『ネグレクト』というものです。
 可哀想な子豚たち……っ! マスエは司法の下、裁かれるべきでしょう!

 三兄弟は勇敢に立ち向かいました。


「「「──訴訟案件だ!」」」
「──この国の法では、豚を裁けない」


 マスエ、横暴の極みです。不遜な態度で腕を組んでいます。

 愛くるしくもいじらしい三兄弟は、生まれたての小鹿と遜色ないほど、プルプルと震えるしかありません。
 可愛らしさを強調する様にピョンと立ったアホ毛も、前後左右に忙しなく揺れています。

 けれど、なにもせず『はいそうですか』と引くほど、子豚たちは脆弱ではありません。


「いったい俺様たちのなにが気に食わないんだ!」
「可愛すぎたからか? 白雪姫方式の嫉妬なのか!」
「このエロ豚野郎!」


 三兄弟の猛攻を、マスエは一蹴するように、答えました。


「──お前たちがいると、右手と仲良くできないだろう」


 なんて傲慢で自分勝手で恥知らずな親豚なのでしょう! 三大欲求を満たすためなら、自らの子すら追い出してしまうのです!

 しかし、三兄弟がどれだけ必死に抵抗しても、所詮は大人と子供。
 悲しきかな、三兄弟は追い出されてしまったのでした。


 * * *


 途方に暮れた子豚たちは、小さな歩幅でトコトコと歩きます。


「最近は狼が出て物騒だというのに、マスエはなにを考えているんだ……」
「きっと俺様たちが可愛すぎて、マスエ自身が狼になりかけていたのだろう……」
「あのエロ豚野郎……」


 マスエと共にあの家で暮らし続けていたら、貞操の危機。
 けれど、外に出たら出たで生命の危機に瀕してしまった三兄弟は、ため息を吐きます。

 ──しかし、彼等は容姿以外にも恵まれたものがありました。

 三匹ともが前を向き、力強く頷きます。


「「「──生き抜くぞッ!」」」


 そう。……彼等は、聡明で利発な子豚なのでした。


 * * *


 小さな体で、力強く歩き出した三匹の子豚たちを、遠くから眺める者がおりました。


「──可愛い……っ」


 黒髪短髪、長身痩躯で眼鏡をかけた、どこからどう見ても童貞臭のする──一匹の、狼です。




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