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最終話・嫌がらせが好き
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しおりを挟むそれから、俺たちの生活がどうなったのか。
まず、徹との関係。
「なぁ、真冬~。……もしかしなくても、俺って邪魔?」
つるまないと言っていたはずの美鶴が、俺たちの登校に当然の顔をして合流し。
しかも、俺と徹の距離が近いと舌打ちをして。
徹は困ったような声を出していたけど、笑顔だった。
今日の昼休みくらいに、徹には全部話そうと思う。
子供の頃のことと、今の関係を。
……美鶴に脅されてセックスをしたとかは、言わないぞ。さすがにな。
そして、詩織との関係。
「真冬くん。美鶴がウザい」
なにがあったのかは教えてもらえなかったけど、詩織はそう言いながらスマホを睨んでいた。
美鶴とメッセージのやり取りでもしているのだろうか。メッセージが届いたことを知らせる通知の音が鳴る度に、詩織は怖い顔をしていた。
「お邪魔虫同士、仲良くしようぜ、詩織~っ」
「アンタもウザい!」
徹が詩織に抱きつこうとして、華麗にスルーされていたりもしたけれど。
……もしかして徹は、詩織が好きなのか? その辺りは今度、こっそり訊いてみようと思う。
あまり重要じゃないかもしれないけど、取り巻きの女子たちとの関係。
「美鶴くん、今日もカッコいい~っ」
「ねぇ、ねぇっ。今日の放課後、私たち雑貨屋さんに行くんだけど……美鶴も一緒に来ない?」
実は、そこだけあまり変わっていなかったりする。
なぜなら……俺は変わらず、学校では美鶴と関わらない。
だけど美鶴も変わらず、女子に話しかけられたら返事をする。それで、囲まれても今までと同じ。
「相変わらず美鶴は女子にモテモテだな~?」
たまたま女子に囲まれている美鶴を見かけた徹は、俺にそう言ってきた。
徹としては、俺にヤキモチでも妬かせたいんだろうけど。
「そうだな。たぶん、雑貨屋……行くと思うし」
「恋人としてはそれでいいんですかーっ?」
「まだ恋人じゃない! ……別に、気にもしてないし」
美鶴たちの前を通り過ぎて、俺はポツリと続けた。
「たぶん……俺にお土産買ってくると思うし」
そのとき、徹がどれだけげんなりした顔をしていたか……他の人にも見せてやりたかったな。
そして、一番重要な。
先輩たちとの、関係。
「高遠原ッ! 新しくできたカフェに興味はねェかッ?」
リーダー的先輩と。
「高遠原さん。今なら開店を記念するスペシャルクーポンがありますよ」
頭の良さそうな先輩に。
「しかも~……期間限定のメニューまであるらしいよ~?」
語尾が伸びている先輩が。
やたらと、美鶴に話しかけるようになった。
俺はてっきり……今度は本格的に美鶴を傷つけるのかと、思っていたんだけど。
(真正面からこないのは『ごめんなさい』って言ってたの……真正面からいけばオッケーしてもらえるって解釈したのか……?)
俺が思ってた以上に、この先輩たちは美鶴のことが好きだったらしい。
ちなみに、当の美鶴本人はと言うと。
「ンでテメェらに時間割かなくちゃならねェんだよ。勝手に行ってろ」
この塩対応である。
さすがに激怒するかとヒヤヒヤしたけど。
「「「……くっ!」」」
――三人とも、美鶴から返事をもらえるだけで喜ぶんだもんなぁ。
想像を絶する真っ直ぐさだった。美鶴にも言えるけど、恋は人を愚かにするらしい。
そして、美鶴との関係は……。
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