大嫌いな幼馴染みは嫌がらせが好き

ヘタノヨコヅキ@商業名:夢臣都芽照

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6話・大事にするのが好き

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 美鶴のベッドに押し倒されるのは、何回目だろう。


「んっ、んん……ふ、っ」


 荒々しいキスをされるのだって、何回目なのか。


「ん、っ! ……は、っ」


 もう、覚えていない。
 顔が離れると、美鶴が満足そうに笑っていた。


「……夢、みたいなんだよ」


 目を細めて。
 幸せを、噛み締めるように。

 そんな……美鶴らしくない、笑顔。


「毎週、イヤなクセにちゃァんと俺様に抱かれてよォ。なのに最近じゃ、物欲しそうな目をしてるときもあって……早く、俺様のモノになればいいのにって……ずっと、そう思ってたんだぜ?」
「も、物欲しそうな目なんてしてないだろ……っ!」
「無自覚かよ」


 美鶴の顔が、すぐに近付く。


「んむ、っ! んんっ、ふ、ぅ……っ」


 触れる程度じゃない。

 歯列をなぞって、舌を掬って。
 俺の全部を味わうような……そんな、キス。


「――っ、は」


 キスをされている間は、苦しいのに。

 離れると、寂しい。


「ホラな。……物欲しそうな目、してるだろ?」
「……っ」


 美鶴にキスをされるのが、好きだ。

 ぴったりとくっついていると、幸せだなって思う。

 離れられると寂しくなるから、早くそばにきてほしい。


「美鶴……っ」


 両手を伸ばして、美鶴を抱き締める。

 そうすると、美鶴はすぐに応じてくれた。


「真冬、好きだ。……お前も、言えよ」
「……っ。お、俺も……ちょっとだけ……お前が、好き……っ」
「『ちょっと』だと? 足りねェ。……もっとだ」


 ネクタイが、ゆっくりと解かれて。

 ワイシャツのボタンが、一つずつ外されていく。


「あ……っ」


 じれったい速度に、俺は美鶴にしがみつく手の力を強くする。


「そ、そこそこ……好き。たぶん、好き、だから……っ」


 口にすると、胸の中にジワジワと広がっていく……多幸感。

 『嫌い』って言うより、断然いい。


「釈然としねェんだけど……まァ、いいか」
「うる、さい……っ。……美鶴も、言って……ほしい」
「ン? 好きだぜ?」
「名前も、呼んでほしい……っ」


 二人きりのとき、美鶴が俺の名前を呼ぶと。


「真冬、好きだ。お前が思ってるより、ずっとな」


 優しい響きになる。

 俺はきっと、こんなに優しく美鶴の名前を呼べない。
 こんなにストレートな気持ちを、言葉に乗せたりできないと思う。


「ん、あ……っ」


 ワイシャツを開かれ、上半身が露わになる。
 美鶴に見つめられると、どうしていいのか分からない。


「お前が俺様のことを好きなんだって思うと……たまんねェな」
「ま、まだ、不確定……っ」
「うるせェなァ」


 もう一度、キスをされる。


「それでも、いいんだよ。……お前が俺を『好きかもしれない』ってだけで、メチャクチャ興奮する……ッ」


 ベルトを外して、美鶴が笑う。

 少しずつ、裸にされていく。
 美鶴に全部、見られてしまう。

 それがすごく、恥ずかしいのに。


「……好きに、して……いい、から……っ」


 脅されてじゃなく。
 仕方なくとかでも、ない。

 俺は今から、美鶴と。


「……優しくする努力はするが、激しくもする」


 愛のある行為を、するんだ。




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