大嫌いな幼馴染みは嫌がらせが好き

ヘタノヨコヅキ@商業名:夢臣都芽照

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4話・すれ違うのが好き

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 あらぬ、誤解。


「……は、い?」


 俺の目の前に立っている先輩が、ニヤリと笑う。

 おそらくは、この中のリーダー的存在だろう。残りの二人は、この先輩より前に出てこないから。


「あの、話が、よく……」


 これでも、冷静に対応しているつもりだ。
 だが、内心ではとても焦っている。


(何だ……? 見た感じ、ただ冗談を言いに来ただけ……には、見えない)


 初対面の先輩が、三人。
 そしてここは、人通りの少ない旧体育倉庫。

 ヤッパリどうしたって……いやな予感が、する。

 逃げることもできずにいる俺を見て、リーダーっぽい先輩が言葉を続けた。


「隠すなよ? お前、高遠原と付き合ってるんだろ?」
「は……っ?」


 曲解すぎる言葉に、我が耳を疑う。

 ――俺が高遠原と?

 ――そんなこと、絶対ない!


「何の冗談ですか? 俺、高遠原とは――」


 当然、俺は否定の言葉を伝えようとした。

 だけど……いやな予感はどこまでも的中する。


「俺たちさぁ、知ってるんだよねぇ。高遠原美鶴と諸星くんがさ……金曜日はお泊まり、してるってこと」


 毎週、金曜日。
 俺は確かに、高遠原の家に行っている。

 だけど……そんなこと、誰にも話してない。徹にも、胡桃沢さんにも。


(誰が、この人たちに言ったんだ……?)


 別に、隠しているわけではない。

 実際問題、二回目の金曜日は高遠原がわざわざ教室にまで出向いて、俺を呼んだくらいだ。
 仲良しだと勘違いされるのはムカつくけど、泊まってること自体はバレてもいい。

 だが、またしても……いやな予感が的中した。

 ――一番、最悪な予感が。


「――キスとか、それ以上のこともしてるんだって?」
「っ!」


 泊まっていることは、バレたっていい。
 仲良しだって思われるのは屈辱だが、仕方ないかもしれない。

 ――家でなにをしているのかバレるよりは、全然。


(どうして、先輩たちが……? 何でそんなこと、知ってるんだ……っ?)


 ――この人たちは、高遠原の知り合い?

 ――女子に嫌がらせを受ける方が理にかなってるし、まだマシだぞ?

 ――いったい、何なんだよ……っ?

 そんな疑問をぶつける時間は、与えられなかった。


「高遠原さんの大切な諸星さんが、大変なことになったら……高遠原さんは、どうするでしょうね?」


 後ろに立っていた男が一人、優しそうな笑みを浮かべて呟く。


「え――」


 先輩の呟きを聞いて、困惑する時間は。
 ヤッパリ、なかった。


「おい」


 リーダー的先輩がそう言うと。
 後ろに立っていた二人の先輩が、体育倉庫に入ってきた。


「な、何ですか……っ」


 片方の先輩は笑みを浮かべていて、もう一人の先輩は無表情。
 だけどどっちも……なにを考えているのか、分からない。


(怖い……っ)


 ただひたすらに、先輩たちが怖い。

 ジリジリと後退してみるが、ただでさえ狭い倉庫。そのうえ、荒れた状態だ。
 逃げられるところなんて、ない。


「ちょっと、静かにしててくださいね?」


 笑みを浮かべた先輩はそう言って、制服のポケットから。


「な……っ!」


 ロープを、取り出した。




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