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3話・振り回すのが好き
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しおりを挟むそれからまた、翌週の金曜日。
それは突然起こった。
「……え? おい、おいっ! 真冬!」
昼休み。
一つの机で一緒に昼飯を食べていた徹が、いきなり慌て始めた。
慌てた様子のまま、徹が俺の頭に手を乗せる。
そしてなぜか、廊下の方を指で指したのだ。
「んも?」
購買で買ったパンをモフモフと食べながら、徹の指が指し示す方向を見る。
「んぐっ。……女子が、集まってるな?」
パンを飲み込み、廊下に集まっている女子を眺めた。
集まっている女子を見させて、徹はなにがしたいんだろう。好きな女子でもいるのか?
そんなことを考えていると、徹はすぐさま否定した。
「いやいや、いやいやッ! もっとちゃんとよく見ろって! ほら、女子が集まってる中心だよ!」
「中心? ……げっ!」
徹の言う通り、女子が集まっている箇所をジッと見つめる。
そこでようやく……どうして徹が廊下を指で指し示したのか。その理由が分かった。
(何でアイツがここに……っ!)
教室の、入り口付近。
女子たちを集めている、中心人物。
そう……高遠原美鶴が、そこにいた。
(な、なにしに来たんだ……? アイツ、わざわざこのクラスに来たことなんてなかっただろ?)
校内でカッコいいともてはやされている高遠原が来たら、女子は盛り上がる。
だから、気付くつもりはなくても、高遠原が来たらすぐにわかってしまうのだ。
突然の、来訪。それに関して……いやな予感しか、しない。
そしてすぐに、それは的中した。
「諸星~! お前、高遠原に呼ばれてるぞ~!」
同じクラスの男子一人に、そう言われてしまう。
これだけ大きな声で名前を呼ばれたら、誰だって気付く。聞こえなかったフリなんて、できっこない。
高遠原に呼ばれた俺という現状に、徹がソワソワと落ち着きなく揺れ始めた。
「えっ、あ、おぉっ! ま、真冬、まさか……っ!」
「違う!」
おそらく、俺と高遠原が仲直りでもしたと思っているのだろう。
喜んでいる徹には悪いが、仲直りなんてしていない。
(『むしろ先週の金曜日にやらかして、更に仲は悪化した』……なんて、徹には言えないけど)
喜ぶ徹とは対照的に、俺の気分は最低最悪だ。
しかし、廊下では高遠原が待っている。居留守を使おうかとも思ったが、一瞬だけ廊下に向けた視線で。
「……っ」
高遠原と、目が合ってしまった。
万事休すである。
「ほら、真冬! せっかくのチャンスだ! 仲直りしろよ!」
「絶対しない」
「いつまでもツンツンしてないで、早くデレろって! ガキの頃はべったりだったじゃんか! な?」
「……最悪だ」
思っていることを素直に吐き出しつつ、立ち上がる。
そのまま俺は、高遠原が待つ廊下へと歩き出した。
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