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2話・無理矢理が好き
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しおりを挟む俺たちは、雨に濡れた。
そんな中、俺は……成り行きで家に連れ込まれて、恥ずかしいところも見られて。
そんな俺が、コイツを拒否できる立場なのか?
「……く、そ……っ!」
きっと今の俺は、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべているだろう。
それほどまでに不本意な頷きを、俺は高遠原に返した。
まるで警鐘のように……雨音は、強くなっているのに。
コイツの部屋に入るのなんて、何年振りだろう。
……相変わらず、シンプルな部屋だ。
小さい頃と変わらず、必要最低限の物しか置いていない。
「部屋の中ジロジロ見てないで、サッサと座れよ」
さっきまでの変に優しい声はどこへやら。
相変わらずの上から目線な物言いだ。
座ることを躊躇ってみたものの……高遠原は当然、座っている。
なのに俺だけが立っているのはなんだか遠慮をしているみたいなので、俺は床に座り込んだ。
ちなみに、高遠原はベッドに座っている。
「床かよ。こっち、座ればいいだろ」
「誰がお前の隣になんか座るか」
本心では、コイツの部屋に入るなんていやだった。当然……今も、いやだって思ってる。
部屋に入った瞬間、高遠原は俺に服を渡してきた。
濡れた制服でいるのも気持ち悪かった俺は今、大嫌いな男から服を借りて、着ている。
俺にとっては、少しだけ大きめの服だ。……少しだけだぞ!
勿論、コイツから服を借りているという事実だっていやだ。
「…………」
露骨にブスッとしていると、高遠原が可笑しそうに笑う。
「ハハッ!」
「……っ」
視線で『何だよ』と訊く。
高遠原はそんな視線、何とも思っていないように、あっさりと答えた。
「――さっきはあんなに可愛かったのに、今更冷たくしてもよォ……?」
「っ!」
頬が熱くなる。
先ほどの光景が頭の中で、悶々と再生されてしまった。
「さっきのはお前が……っ!」
言いかけて、口をつぐむ。
――言い訳しても、意味なんてない。
――実際問題、俺はコイツの手で感じて……イってしまったのだから。
(屈辱……っ! 屈辱、屈辱すぎるだろっ、俺っ!)
あんなことさえされなければ、俺は今……こんな奴と一緒に居る必要もなかったのに。
「俺様の手は、そんなに良かったのか?」
「は……っ?」
ニヤニヤと笑っている様子を見ると、さっきまでの優しい声が嘘のようだ。
むしろ、さっきのは夢だったのではないかとさえ思ってしまう。
それくらい、いつもの高遠原だ。
急いで口を噤み、無視を決め込む。
すると、ひとしきり笑った高遠原も黙りこむ。
と思ったら、すぐに口を開いた。
「……ガキの頃の話、だけどよ。……お前には、悪いことをしたと……思ってる」
突然、高遠原が核心に踏み込んでくる。
――それは、俺を孤立させたあのときの話。
「俺様がしたことは、お前に嫌われても……まァ、仕方がないことだろうなと、思ってる」
俺から友達を奪った、あの日々。
――カッ、と。
――頭に血がのぼったと、すぐに分かった。
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