大嫌いな幼馴染みは嫌がらせが好き

ヘタノヨコヅキ@商業名:夢臣都芽照

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1話・追い詰めるのが好き

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 タオルを渡された意味は、分からない。
 だけど、決まっていることはひとつだけ。


「……必要、ない」


 そう言って、俺は高遠原にタオルを突き返す。


「俺を無理矢理連れてきた理由は、これ? ふざけんなよ、マジで……っ!」


 ここでタオルを借りれば、コイツはその話をネタに俺を脅すだろう。
 この男はそういう奴だと、俺は知っている。

 だからこそ俺は立ち上がり、高遠原に背を向けようとした。

 けど、高遠原は俺を呼び止める。


「待てよ、諸星。……話がしたい」
「いやだ。俺は高遠原と話すことはなにもない」
「そっちはなくてもこっちはあるんだよ。とにかく、逃げんな」
「うるさいっ! 俺は逃げてるワケじゃないし、お前にかまわれたくないんだよっ!」


 このままここにいても、埒があかない。
 コイツは俺と、話がしたいらしい。だけど、俺はこんなところ……一秒でも早く出て行きたい。

 口論したって、意味はない。だったら、強行突破しかないだろう。
 高遠原に背を向け、俺は玄関から出て行こうとした。

 ――瞬間。


「――待てよ、真冬……ッ!」


 ――ギュッ、と。

 ――抱き締められた、感覚。


「な、っ!」


 いきなり、背後から何者かに抱き締められた。それは、分かる。
 そしてその【何者か】など、一人しか考えられない。


「なに、して……っ! こんなの、家族に――」
「忘れたのか? 今日は誰も帰って来ないっつの」


 今日は、金曜日。

 余談だが、仕事の都合上……高遠原の両親は金曜日。家に帰ってこない。それは、小学生の頃から知っている。

 だからと言って、だ。
 高遠原の両親が不在だとしても、こんな風に腕を回される理由にはならない。


「だと、しても……っ、は、離れろよ……っ!」
「ここで離れたら、お前は帰るんだろ。……だったら、離すワケねェ」
「俺は、早くこんなところから帰りたいし、話すこともないんだよ……っ!」


 突然のことに動揺してか、口がうまく動かないのが、悔しい。
 こっちはかなりテンパっているのに、高遠原は動じていない。

 むしろ……やけに、落ち着いていた。


「――真冬」


 耳元で囁かれた声に、背筋がゾクリと震える。
 高遠原のこんな声……聞いたこと、ない。


(――何で、そんなに……優しい声、で………っ?)


 ゾッとするほど、優しい声。
 その声色は……いつもの高圧的で腹立たしい物言いとは、全く違う声で。

 ――まるで、恋人を呼ぶかのような……甘い声だ。

 尚更、思考回路がグチャグチャに乱される。
 だが、更におかしなことが起こった。


「……ひ、っ!」


 ――背筋が、ゾクッと粟立つ。

 ――前触れもなしに、いきなり耳朶を甘噛みされたからだ。




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