246 / 251
オマケ 3【先ずは好きだと聴いてくれ】
1
しおりを挟む※続 最終章【先ずは好きだと言ってくれないかな(牛丸視点)】の後日談です。
時は流れ、クリスマスという浮かれまくったイベントを終えて、数日後。
「──と言うわけで! 大忘年会の開催だ~っ!」
とある居酒屋にて、俺たちは【列席者、四人】という、なんとも小規模な大忘年会を始めていた。
座っているのは俺と、その隣に先輩と。俺の正面には兎田主任が居て、先輩の正面には今しがた号令を発した幸三という、四人の図。……『それ以外ありえないだろう』だって? やめろ、俺たちを仲良し集団みたいな扱いしないでくれ。……ぼっちの集まり、みたいな扱いはもっとやめてくれよ。
そもそも、なぜこのメンバーが社内ではなく居酒屋で集まっているのか。事の経緯と言う名の回想を挟もう。
それは、数十分前の事務所で起こったことだ。
『──ユキミツを飲みに誘ったら、いきなり二人は緊張するとかなんとかほざきやがった。だから、今から俺様たちと飲みに行くぞ』
『『──えっ』』
回想、終了。……横暴だ。
しかし当の引き金──もとい、幸三はとってもご機嫌だった。なんだかんだ幸三は、こういう会が好きだからな。
痴話喧嘩に巻き込まれるのは御免だが、まぁこのメンバーなら気を遣わなくてもいいだろう。兎田主任の容赦ない先輩虐めにさえ注意しておけば、問題はないはずだ。
「それにしても、意外だったなぁ。兎田君が誰かを飲みに誘うなんてさ」
「【誰か】じゃなくて【ユキミツ】だ。正直、テメェはお呼びじゃねぇんだよ。黙ってろ」
「えぇっ! 強制連行しておいてそんなこと言うのっ?」
「なにか勘違いしてねぇか? 俺様が声をかけたのはネズミ野郎だけだぞ」
「うわんっ!」
おうっふ。兎田主任が『ウシの顔を見ながらメシなんて食えるかよ。俺様の正面にはネズミ野郎が座れ』とか言ったからこの席順になったのだが、あんまりである。兎田主任、本気で先輩のことが嫌いなんだな。
シクシクと泣き出す先輩の背を撫でると、すぐに先輩は俺の両手をガッシリと握った。
「いいよっ、意地悪を言う兎田君なんて放っておくからねっ! 僕たちは二人で楽しもう、子日君っ!」
「なるほどな。つまりこれは【ダブルデート】ってやつか」
「「──違います!」」
「竹虎君だけならまだしも、どうして子日君まで全力で否定するのっ!」
どこか愉快気に笑う兎田主任に対し、俺と幸三は全力の拒否。前にも心の中で言ったが、そんな恥ずかしいことを俺はしたくないのだ。
兎田主任への気持ちを強引に保留状態としている幸三も、さすがに【デート】という単語は恥ずかしいようだ。
「そっ、それよりもっ! 食べるものとかちゃちゃっと決めちゃいましょうよ! オレら、まだ飲み物しか頼んでないですし! ほら、ブン! なにがいいんだっ?」
「いや、俺よりも先に先輩たちから──」
「は? オイ、ユキミツ。なんで真っ先にボクじゃなくネズミ野郎を選ぶんだよ。アイツらが二人で乳繰り合うなら、残ったユキミツはボクを選べよ」
「そうだよ竹虎君っ! 君には兎田君がいるんだから、僕の子日君に色目を使わないでよねっ! まったく、油断も隙もないなぁ」
「「──めっ、めんどくせぇ……っ!」」
なんだこの、地獄みたいな状況は。隣の先輩は未だに俺の手を離さないし、兎田主任は幸三にベッタリとくっついているではないか。キツイ、この絵面はキツイぞ。なぜなら俺たちは全員、成人男性だからだ。むさくるしいことこの上ないぞ、本気で。
前途多難な小希望大忘年会、開催。後輩コンビである俺と幸三は、初めからライフゼロスタートとなった。
20
お気に入りに追加
117
あなたにおすすめの小説

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。

僕の部下がかわいくて仕方ない
まつも☆きらら
BL
ある日悠太は上司のPCに自分の画像が大量に保存されているのを見つける。上司の田代は悪びれることなく悠太のことが好きだと告白。突然のことに戸惑う悠太だったが、田代以外にも悠太に想いを寄せる男たちが現れ始め、さらに悠太を戸惑わせることに。悠太が選ぶのは果たして誰なのか?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

婚約者に会いに行ったらば
龍の御寮さん
BL
王都で暮らす婚約者レオンのもとへと会いに行ったミシェル。
そこで見たのは、レオンをお父さんと呼ぶ子供と仲良さそうに並ぶ女性の姿。
ショックでその場を逃げ出したミシェルは――
何とか弁解しようするレオンとなぜか記憶を失ったミシェル。
そこには何やら事件も絡んできて?
傷つけられたミシェルが幸せになるまでのお話です。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる