先ずは好きだと言ってくれ

ヘタノヨコヅキ@商業名:夢臣都芽照

文字の大きさ
上 下
182 / 251
続 4.5章【先ずは好きだと言わないでくれよな(竹虎視点)】

4

しおりを挟む



 と言うか、大前提に! なんでこの人はオレとブンをくっつけようとしているんだ!

 おかしいだろ、なんでだよ! オレは全然、ブンのことなんか好きじゃないんだからねっ! 勘違いしないでくれよなっ!


「違うッス、全然違うッスよ! オレが失恋したのは事実ですけど、それは仕方のないバッドエンドであって! そこにはブンの影も形もないわけでして!」
「へぇ? じゃあなんで、ネズミ野郎の名前を出すだけで俺様に唾を吐きかけるほど動揺したんだよ」
「それはブンが──……ッ」


 すぐに、ハッとする。ハッとすると同時に、オレは閉口した。


「……っ」


 しかし、このまま黙っているわけにはいかないのだ。閉口は肯定になると、説明されなくたって分かるのだから。


「……とにかく、オレはブンのことが好きなワケじゃないんですよ。それに、酷い顔もしてないんです。三股の末に迎えた破局ではありましたが、その失恋も全然気にしてねーんですよ」
「なんだそのアホみてぇな失恋」
「あぁもうっ! とにかく、いいから離してくださいッ!」


 兎田サンの指摘が勘違いであり間違いでもあると説得したのに、なぜか兎田サンはオレを解放しそうにない。掴まれた首根っこは、そのままだ。


「なんなんですかっ、さっきからっ!」
「唾を吐いた仕返しだ。テメェの顔が辛気臭い理由を吐け」
「ツバだけじゃなく心情も吐けと! 誰ウマですかっ、座布団一枚ですっ!」
「いいからサッサと吐けっつの」


 手足をジタバタと動かすも、ヤッパリ兎田サンは解放してくれない。体格差とかもあるのかもしれないが、オレはオレで兎田サンに勝てそうになかった。

 まさに、デッドエンド。オレは兎田サンに捕獲されてしまったのだ。……くそぅ、解せない。オレはトラで兎田サンはウサギなのに、なぜ。


「いいだろ、別に。テメェは俺様専属の配達人なんだろ?」
「えぇまぁ不本意極まりないですけどねぇッ!」
「だろ? つまり、俺様とテメェは言わば【パートナー】ってやつだ。他人に興味なんざサラサラないが、悩みくらいは聞いてやるよ」
「悪人みたいなニヤニヤ顔でパートナー扱いされても嬉しくない! うわぁあんっ、ブンッ、ブゥーンッ!」


 泣けど、叫べど。助けは来ず、解放もナシ。オレたちの攻防戦は圧倒的な実力差を知らしめながら、兎田サンの圧勝だ。

 ゼェハァと息を切らしながら、オレはゆるりと力を抜き、脱力と断念を併せ持った。


「……ってか、ホントに兎田サンは知ってるんですね。……ブンの、こと」

「──ウシとの初夜に使われたからな」
「──えっ。ナニソレ、どーゆーことッスか」


 深く訊ねようとすると、なぜかすぐにギロリと睨まれてしまったぞ。どうやら三人には、複雑な事情や理由があるらしい。

 ……だが、それはそれだ。


「でも、ホントに。ホントに違うんですよ、マジで。オレはブンが好きとか、ましてや牛丸サンが好きとか。ホントに、そうじゃなくて……」


 そうじゃ、なくて。好きとか嫌いとか、そういう話ではまったくないけど。オレは、オレは……。
 ……オレはその先を、誰にも言いたくなかった。

 ──誰にも知られたく、ないのだから。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あなたの隣で初めての恋を知る

ななもりあや
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。 その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。 そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。 一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。 初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。 表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

告白ゲームの攻略対象にされたので面倒くさい奴になって嫌われることにした

雨宮里玖
BL
《あらすじ》 昼休みに乃木は、イケメン三人の話に聞き耳を立てていた。そこで「それぞれが最初にぶつかった奴を口説いて告白する。それで一番早く告白オッケーもらえた奴が勝ち」という告白ゲームをする話を聞いた。 その直後、乃木は三人のうちで一番のモテ男・早坂とぶつかってしまった。 その日の放課後から早坂は乃木にぐいぐい近づいてきて——。 早坂(18)モッテモテのイケメン帰国子女。勉強運動なんでもできる。物静か。 乃木(18)普通の高校三年生。 波田野(17)早坂の友人。 蓑島(17)早坂の友人。 石井(18)乃木の友人。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

仕事ができる子は騎乗位も上手い

冲令子
BL
うっかりマッチングしてしまった会社の先輩後輩が、付き合うまでの話です。 後輩×先輩。

愛などもう求めない

白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。 「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」 「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」 目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。 本当に自分を愛してくれる人と生きたい。 ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。  ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。 最後まで読んでいただけると嬉しいです。

処理中です...