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続 3章【先ずは一番だと言ってくれないかな(牛丸視点)】
17 *
しおりを挟むとは言っても、あまり長く持たせられる自信はないぞ。
だって僕、事務所で文一郎にキスをしてからずっと我慢していたんだよ? さすがに理性だって終業時間だ。残業なんてしてくれないさ。
「んっ、ふ、んッ!」
ナカを擦ると、文一郎は何度も何度も体を跳ねさせた。口が離れてしまいそうになるけれど、文一郎の頭を掴んでなんとか固定させる。声が漏れてしまうのは、文一郎の本意ではないからだ。
「んぅ、は、っ。……ん、ぅ」
酸素を与えるために、一瞬だけ唇を離す。しかしそれだけで文一郎は不安そうな顔をするのだから、すぐに僕はキスを贈った。
……マズいな、文一郎が可愛すぎる。決して僕を掴んだりもたれかかったりはしないその優しさに胸が詰まるし、だけど挿入した僕の逸物だけは強く締め付けているのだからますます、ときめく。
可愛くて、優しくて、大好き。言葉にすると小学生の恋愛かってくらい単純で分かり易い言葉の羅列だけど、実際のところ人を好きになるなんてそれくらいシンプルで純粋なものだ。
文一郎の口腔に、舌を差し込む。すると文一郎は驚いた様子で、まるで反射のように素早く、舌を引っ込めた。
だけど僕が舌で歯列をなぞり、舌先で上顎をつつくと。……おっかなびっくりと言いたげな様子で、舌をおずおずと差し出してくれた。
たぶん、こういうところも文一郎の優しさだ。僕が怯える可能性があると思うと、文一郎は舌であろうと僕に絡められない。先に差し込んだのが僕だとしても、だ。
「んっ、んんっ、ふ、ぁ……ッ」
文一郎は、そのままでいていい。……そのままが、いいんだ。
絶え間なくナカを突かれて、文一郎の膝は力を失いかけている。そんな状態でも僕にはもたれかからず、必死に立ち続けようとしていた。
本当に、優しい。その優しさを不安に感じてしまうのに、胸は甘く詰まって仕方ない。本当に、僕は駄目な奴だ。
「好きだよ」
「あ、っ。やだ、キス……ッ」
「ふふっ、了解」
「んっ」
まさか『好き』と言って『やだ』と言われるとは。タイミングが悪かったとしても、思わず笑ってしまう。
お望みどおりにキスを贈ると、ナカがさらに締まった。文一郎にとって嬉しかった、ということなのかな。
……駄目だな、もう出ちゃいそう。だけど、さすがに文一郎のスーツは汚せないし、かと言って勝手に中出しするのも……。僕は内心、逡巡していた。
──だけど、その時。文一郎の舌が、遠慮がちに僕の舌をつついたのだ。
一度だけ、文一郎が瞳を開く。濡れた瞳は僕を捉えて、それからまたすぐに閉じられた。
……これを、ナカに出してもいいと。そういう意味合いの行動だったと思い込むのは、さすがに図々しいかもしれない。
だけど僕は、後で『文一郎から怒られる』となんとなく分かっていても……。
「……ッ」
「ふ、ぁ、んん……ッ!」
僕の腕の中で達する文一郎のナカに、熱を注いでしまった。
ビクビクと、文一郎が震えている。それがまた可愛くて、堪らない。
「ぅ、あ……は、っ。はぁ、は……っ」
さすがに、酸素不足。キスから解放すると、文一郎は苦しそうに何度も呼吸を繰り返した。
「……ごめん、文一郎。ナカに、出しちゃった」
「分かって、ます……っ」
「あと、もうひとつ。君の精子、手で受け止めてあげる余裕がなかった。結局、君の服とか床とかを汚しちゃった」
「親切心で辱めるのは、やめてください……っ」
体の力が抜けたのか、文一郎が座り込みそうになる。
そんな文一郎を抱き留めつつ、僕は謝罪の言葉を伝えたのだった。
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