先ずは好きだと言ってくれ

ヘタノヨコヅキ@商業名:夢臣都芽照

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続 2章【先ずは想いに上限を設けてくれ】

16 *

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 さすがに三回目でも、俺の体は男との性交には慣れたりしない。


「文一郎、大丈夫? 体、強張ってるよ?」


 妙に慣れた様子で俺のケツを慣らし、先輩は下半身にある【凶器】を俺に突っ込んだ。
 そんなケダモノじみたことをしているくせに、相手はやはり先輩で。俺のことを気遣って、動きを止めていた。


「残念、でしたね。俺が、ド淫乱なクソメスじゃなくて」
「あっ、あれは本当に違うんだよ! 惚気ただけで、兎田君にあんなものを作ってほしいなんて言ってないよ!」
「大前提に惚気ないでくださいよ」


 会うときに気まずいじゃないか。ただでさえ、先輩との【初めて】で気まずいのに。

 先輩は『てへっ』と言いたげに、それはそれはお茶目な笑みを浮かべている。……クソッ、顔がいい。だから、赦してしまいそうになる。


「ねぇ、文一郎。……鎖骨、触りたい」
「アンタ、まだそんなことに固執してるんですか」
「竹虎君ばかりズルいよ。……ねぇ、いいでしょ?」
「そう言いながら、もう触ろうとしてるじゃないですか」


 すり、と。先輩の指先が、俺の鎖骨を撫でる。


「ん、っ」


 ……あ、れ? おかしい、な。
 幸三に触られてもなんともなかったのに、今は、なんとなく変な気分だ。


「先輩、くすぐったい……っ」
「竹虎君に触られた時にも、確かそう言っていたね。……性感帯?」
「今、俺に突っ込まれてるアンタの大事なブツ。俺がケツに力を入れたら、食い千切れますかね?」
「ゾッとすること言わないでよ!」


 とか言いつつ、勃起したままじゃないか。……嬉しいじゃないか、馬鹿め。

 別に性感帯ではないが、先輩が触りたいのなら触らせよう。少しくすぐったいが、我慢できるし。

 指先で、左から右へ。そのままグッと一度だけ鎖骨を押すと、先輩はその指を鎖骨に立てた。
 爪が、鎖骨をカリッと優しく引っ掻く。まさかそんなことをされるとは思わず、俺は反射的に体を跳ねさせてしまった。


「んっ。……今の、くすぐったいです……っ」
「うわっ、エッチだ」
「大発見みたいな顔しないでください……ッ」
「あっ、ごめんねっ」


 謝罪を口にするくせに、先輩の指は俺の鎖骨をなぞったままだ。


「今まで、男の子の鎖骨になんの関心もなかったけど。……君のは、駄目みたい。凄く、興奮する」


 ……クソ、が。その発言にこっちだって興奮するだろうが、アホ馬鹿マヌケ。

 ゆっくりと、先輩が腰を引く。依然として鎖骨をなぞられたままではあるが、俺はケツに生じた感覚によって、思わず体を震わせてしまった。


「あ、っ」
「っ! ごめん! 痛かった?」
「ち、が……っ。……鈍感」
「あっ。……ご、ごめんっ」


 オイ、コラ。顔を赤らめるな、喜ぶな。
 だから、セックスは緊張するんだよ。醜態ばかり晒すし、だけどちゃんと言わないと先輩は勘違いして心配するし、散々だ。

 ……だけど、やめたくはない。


「鎖骨はもう、いいでしょ。……だから、ほら。早く、う、うご、い……っ」


 精一杯の、我が儘。俺から触れることもできなければ、可愛く甘えることだってできない。

 それでも先輩は笑って、頷いた。……心底、嬉しそうに。




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