先ずは好きだと言ってくれ

ヘタノヨコヅキ@商業名:夢臣都芽照

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続 1章【先ずはセックスさせてくれないかな(牛丸視点)】

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 ──なわけないだろう、僕の馬鹿がッ!


「──この度はッ! 子日君に対して多大なご迷惑をおかけしてしまいッ! なんて、なんてお詫び申し上げたらよろしいかッ!」


 セックスを終えて、数分後。
 子日君の上半身にかけてしまった僕のザーメンを懇切丁寧にふき取った後、僕は鮮やかな土下座を恋人の部屋で決めていた。

 ワイシャツを一枚羽織った状態の子日君は、体育座りをしてジッと、僕を見ている。……もとい、睨んでいる様子だ。


「僕は、ほとんど無理矢理みたいな状況で君を襲った。こんなのは、最低な行いだよ。本当、本気で……煮てほしいし、焼いてほしい」
「さすが先輩ですね。俺が極刑しかしないとよくご存知で」
「うぅぅ、肯定されたぁ……っ!」


 いや、赦してほしいとは言わないけど。言わないけど、ある意味で僕も被害者じゃないかなぁ~、なんて。……言えない、けど。


「でも、別にいいですよ。そもそも俺は──」
「ごめんね、子日君。君が乗り気じゃないのに、僕が強引に……っ」
「いやあの、先輩──」
「いいんだよ、分かってる。僕は子日君の気持ちを無視して、君を傷つけた最低なケダモノだ」
「先輩、話を聴いてください。俺は──」
「君は優しいから、僕を慰めようとするかもしれない。だけど、僕は君にそんな気を遣わせたくは──」

「──いいから聴けって言ってるだろッ!」


 ガガーンッ! ねっ、子日君にっ、結構本気なトーンで叱られてしまった……っ! ショックもひとしおだ!

 シュンと落ち込み、一先ず閉口。……しようと思ったけど、ヤッパリ弁明をしなくては。僕はもう一度頭を下げて、子日君に謝罪する。


「僕の話も聴いてほしい! 決して受け入れてくれなくてもいいから、せめて僕の謝罪を受け止めてほしいんだ!」
「しつこい! だから俺は──」
「ごめんねっ、子日君っ! 本当に──」

「──あぁあもうッ! だからッ! 俺はアンタが相手だったら枕はいつだって【イエス】になってるって言いたいんだよッ!」


 ガチッ、と。僕の体は、頭を下げたまま硬直してしまう。

 ……えっ? えっ、今、なんて……っ? ガチガチに固まってしまった体をなんとか動かし、僕はようやく顔を上げる。
 その先で、僕は……。


「こんな馬鹿げたこと、言わせないでくださいよ。この、鈍感ヘンタイ馬鹿アホ馬鹿マヌケ……っ」


 真っ赤になっている子日君の顔を、ようやく直視した。
 体育座りによって縮こまった体をさらに縮こまらせて、子日君は唇を尖らせる。


「だいたい、こんな面白味のない体をそんな何回も抱こうとして、なにが楽しいんですか。同じ男なんですから、なにも目新しいこともないでしょうに」

「──性別がお揃いだなんて、運命感じちゃうねっ」
「──っ! 先輩のそういうところが、俺はどうかと思うんですよッ!」


 ガーンッ! またしても子日君に叱られてしまった! 僕はさめざめと泣きそうになる。


「……嫌いじゃ、ない、ですけど」


 ……だが、泣きたくなるのをなんとか堪えられた。子日君が、僕を甘やかしてくれたからだ。

 子日君は、今日も今日とて、優しい。ならば僕も、子日君に応えるべきだろう。そう思うと同時に、僕は子日君に近寄った。


「えっ、な、なんですかっ。さ、さすがに二回目は駄目ですよ」
「それは、うん。後で。だけどその前に、さっきの約束を果たそうと思って」
「やく、そく? そんなもの、しましたっけ?」


 キョトンと丸くなった子日君の顔は、とぼけているようには見えない。どうやら、本気で分かっていないらしい。
 僕はニコリと笑い、そして……。


「──僕の裸、見たいんだよね? だから、一緒にお風呂に入ろうっ!」
「──ギャアーッ! 嬉々として脱ぐなッ、バカまるアホつぐゥーッ!」


 恋人が求めるままに服を脱ぎ捨てたというのに、なぜか妙なあだ名を命名されてしまった。

 ……なっ、なぜッ!





続 1章【先ずはセックスさせてくれないかな】 了




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